第322話
と言っても俺があーだこーだ言いすぎると、今、警備しているSCSF隊員からいい顔されないだろうし。部屋で大人しく待機なんだけどね。
部屋にいたまま出来る事をしよう。
どんな小さな悪意でもずっと感じつずけるってのはきついけど。悪意感知は常時発動しておこう。
だったら俺が来るのはギリギリでも良くない?と思わなくも無いんだけど。
万が一の備えにもなるし、一応主催者の1人だから居ないわけにはいかない。
やる事無いし、出品リストをもう一度確認したり。
オークション会場となっている場所の場内MAPを確認しつつ時間を潰す。
「何をそんな機嫌の悪そうな顔をしてるにゃ?」
「残念猫も来てたのか」
いつの間にかリアル忍者の風魔さんの飼い猫になった。
キマイラの残念猫が部屋に入って来ていた。
見た目は猫だけど。
人間に作られた何百年も生きているキマイラだからな。
戦闘能力は勿論高いし、手札も多いい。
「どんなに小さなものでも悪意を感じ続けているせいで気分が悪い」
「なるほどにゃ。警備の為に悪意を感知できるスキルを使ってるのにゃ?」
「そう言う事」
「そう言うのは何度も使って慣れるしか無いにゃ。感知系のスキルは情報量が一気に増えるから、それだけでも辛いにゃ。出来れば、悪意じゃなくて別の物を感知する事で慣らした方がいいにゃ」
この気持ち悪さは悪意を感じているからだけじゃなくて、頭の中に入ってくる情報が一気に増えたからってのもあるのか。
感知系スキルは悪意感知しか持ってないので、悪意感知で頑張って慣れるしか無いだろう。
本来は短距離で感知精度を落とした状態で使ってなれるんだろうけど。
今回はそんな事している暇無いしな。
気分が悪くなるからって嫌がって使ってこなかった俺が悪いので、今日は我慢して使うしかない。
「とにかく今は悪意を感知する事をやめるにゃ」
「何で?」
「新藤が機嫌が悪いって周りがピリピリしてるにゃ。これじゃ警備に影響が出るにゃ。まぁ、私がいれば警備は十分だけど。今日のお客さんの前で警備員がミスをしたら世界中からSCSFは大した事ない組織って言われるにゃ」
残念猫の言う通りだな。悪意感知を使うのはもっと使い慣れてからだな。
オークションが始まるまで、まだ時間があるので、糖分でも摂取して疲れた脳を回復させよう。
「ずるいにゃ私も欲しいにゃ」
マジックバッグから果物を出して食べ始めると残念猫ももしいと言ってくる。
まぁ、少しぐらい良いだろう。
良いよと言うと人の手の形をした霧が果物を掴んで残念猫の口まで運んでいく。
能力の無駄使いな気もするけど。あれなら辺りを汚さずに綺麗に食べれるだろうし。
追加の果物を俺が取って分けてあげる必要も無さそうだ。
「そう言えば残念猫は普段は何してるの?」
「仕事に疲れたSCSFに所属の人達を癒すお仕事をしているにゃ」
成程。アニマルセラピー要員ね。
「だから少し太ったんだね」
いや、見ただけで分かるレベルだし少しじゃないかも。
きっと可愛がって貰っている時に食べ物をいっぱい貰っているんだろう。
「にゃにゃにゃ!そ、そんな事無いにゃ」
「その反応、自分でも分かってるじゃん……」
「でっでも、ご飯を貰うのを断ると皆凄い悲しそうな顔をするにゃん……断り辛いにゃん……」
成程。そう言う理由も有るのか。
「それならご飯を上げれる日ってのを事前に決定しておいて、その日以外はご飯を上げるのは禁止ってして見たら?」
ご飯を上げたい人がその日に皆集中しちゃったら今までと何も変わらないかもしれないけど。
そうする理由もしっかり説明すれば、分かってくれるだろう。
もしダメだったら、1人あたり上げれる量を制限するとか追加で何か対策を考える必要は有るけど。
「と言ってもなー」
さっき残念猫が言った理由も嘘ではないと思うけど。残念猫が自分から何か持ってくるように催促してる感じもするんだよな。
現に果物ちょうだいって言われているし、今話している間も果物を食べるのをやめていない。
俺より果物食べてるでしょ?
だされたご飯を食べなかったら持ってきてくれた人が悲しむからって、もっともそうな言い訳をして好きなだけ食べているってのが正しい気がする。
猫じゃなくてキマイラだし。太った程度体に問題ないのかも知れないけど。
風魔さんにダイエットさせた方がいいんじゃ無いですか?って言っておこう。
結局出した果物の7割を残念猫に食べられてしまった。
食べたりないけど、追加を出すと残念猫も食べると言い出しそうなので、ここは我慢。
思ったより時間が経っていたようで、そろそろ移動を始める時間だし。
オークションが始まる前に、俺が一言喋る事になっているので、舞台裏に移動する必要があるのだ。
正直、俺が喋る必要なんて無くない?って思うんだけど。
引き受けちゃったからね。適当に喋って早く終わらせてしまおう。
残念猫と別れて舞台裏に向かった。
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