第312話

「そう言えば、正規の方法で日本に入国してくださいね?ベアトリーチェさんパスポートとか持ってます?」


魔女の力を使って不正入国されるとバレた時に問題になるから、正規の方法で入国してもらわないと行けないので、今のうちに注意しておく。


「幻影で姿を変えた状態のパスポートなら持ってる」


それならギリギリおっけーかな……

姿を変えている時点で黒よりのグレーだけど。

ベアトリーチェさんは見た目が少女だからむしろ幻影で姿を変えていた方が問題にならなそうだし。


「ならいいですけど、バレないようにお願いしますね。後、事前に招待枠のチケットを使う人物の情報を運営に伝えておかないと行けないから、その幻影を使っている状態の名前とか教えてください」


「わかった」


流石にパスポートを持ち歩いている訳じゃないので、名前とか登録してある住所などを教えてもらいメモする。


少女に名前とか住所を教えて貰う……はたから見たら俺完全に犯罪者じゃん……

ドロテアのお店だし、人が頻繁に来る訳じゃないし、お店に来る数少ないお客さんも魔女とか魔法使いとかそう言った人たちだから、この状況を見ても俺を犯罪者扱いする様な事はないだろう。


「それじゃ今度は私の番。取り敢えずこれ」


招待枠チケットのお礼と言うことだろう。

ベアトリーチェさんは可愛い肩がけ鞄から人の形をしている、ヌイグルミを取り出して手渡してきた。


「それが身代わり人形。血を1滴垂らしたら、血を垂らした人が死ぬような攻撃を受けた時に身代わりになって助けてくれる」


結構、貴重な物だと思うんだけど。

招待枠チケットを用意しただけで貰っていいのかな……

まぁ、渡された以上貰うけど。


「私からしたら、素材さえ有れば作れるものだから心配いらない。素材もこれからなら手に入れる事も出来るだろうし」


ダンジョンが存在する今なら素材も確保できる可能性が高いって事か。


こういった保険アイテムが手に入るのはすごい助かるし。

素材集めに協力するのもありだな。


「ありがとうございます。有難く使わせて貰います」


「それ以外にも、私のアトリエには色んな素材を糸に加工できる自作の魔導具がある。龍王さんならタダで使ってくれて構わない」


ベアトリーチェさんがそう言った瞬間ドロテアが凄く驚いた顔をする。

俺に身代わり人形を渡した時でも表情を変えなかったのに……

ドロテアからしたら、身代わり人形を渡すより。ベアトリーチェさんのアトリエにある、色んな素材を糸に加工できる自作の魔導具をタダで使わせる事の方が有り得ない事だったって訳だ。


「ベアトリーチェの言っている魔導具はそれこそ何でも糸に加工できるのよ?それこそ空気とか水とかも」


空気や水も糸に加工する?ホントに何でも糸に加工できるのか……


絶炎を糸に加工出来たらと一瞬考えたけど。

何となく大惨事になりそうな予感がしたので、試すとしても俺が作り出した普通の炎から段階的に実験して作ることにしよう。


空気や水も糸に加工できるなら炎も糸に加工できるだろう。


「凄い魔導具だからこそ、他人に使わせるなんて絶対してこなかったはずなのに。どうしたのさ?」


「龍王さんが作った糸の切れ端でも貰えたら、それだけで十分元が取れる。魔導具の点検に使う薬品を作るための素材がダンジョンで取れるようになったからと言うのも理由」


ほかの人に使わせなかったのは、その魔導具は定期的に点検が必要で、その時に必要な薬品が有限だったからだそうだ。


使う回数が多いほど。点検のスパンが短くなるので、他人に使わせる余裕がなかったという訳だ。


しかし、ダンジョンが現れたお陰で、その有限だった薬品を追加で生産できるようになったので、他人に使わせる余裕ができし。

俺が糸に加工するような素材は貴重な物が多いいだろうし、偶に分けてくれる可能性を考えれば、タダで使わせても問題ないと。

むしろタダで使わせてるんだから少しぐらいくれるよね?って事だろう。

タダより安いものはないってやつだな。

そもそも、その魔導具はベアトリーチェさんしか持ってないんだから、使わせて貰えるだけで凄い事で、少し糸を分けるぐらいなんてこと無いけどね。


「さっき教えた住所まで来てくれれば、アトリエに招待する。私は日本行きに飛行機の席を予約しに行かないとだから今日はこれで」


「待ちなさいベアトリーチェ。E国ではダンジョンの一般開放はまだなのに、なんでダンジョンで取れる素材を持っているの?」


俺もアレ?ってちょっと思っていたけど。

それ聞いちゃうんだ。


「そんなの。幻影を使ってバレないようにダンジョンに入っているだけ」


デスヨネー。そう言った方法で侵入しているに決まっている。


「言っておくけど。それバレてると思うからからやめておいた方が良いわよ?E国王室には、幻術のスペシャリストがついてるから」


「あ〜確かに。マーリンがいるから幻影とか幻術とか相手を惑わせる類の術は効かないよね」


「マーリンって、あのアーサー王伝説に出てくる?」


「特に悪い事企んでいる訳じゃ無いし。ダンジョン内で手に入れたものを自分で消費する分には、こっちから手を出すことはないよ。あ〜でもエリックたちは王族である以上。命を狙われる事が多いい。当然護衛はいる訳だけど。万が一の時に命を助けるような道具があったらな〜」


店内に、姿は見えないけど声だけ聞こえてきた。身代わり人形を寄越せば見逃してあげるって事ね。


まぁ、マーリンを出し抜くなんてチート使っても無理ゲーだろうし、身代わり人形だけで許して貰えてむしろラッキーってやつか。



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読んでいただきありがとうございます。

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