第299話
「それじゃ、抱き枕の外側に使える素材が手に入ったらまた来るよ」
「えぇ、待ってるわ。その間にワイバーンの素材を使って色々作っておくわ」
抱き枕に関しては詰めが甘かったせいで直ぐに作ってもらう事が出来なかったけどワイバーンの素材を使ってポンチョ以外にも色々作ってくれるようなので、まぁ結果オーライって事で良いだろう。
ドロテアのお店から家に転移して帰る。
「ただいま。まだお酒飲んでるの?呑みすぎるのは体に悪いんじゃない?」
俺がドロテアのお店に行く前に、オベロン王から貰ったワインの木になるワインの実で作った赤ワインをちょっと試飲と言って飲み始めていたけど。
帰って来ても飲んでいるとは……
長時間ドロテアのお店にいた訳ではないけど。
ワイバーンの素材で作れるアイテムについて色々聞いてたから一時間半ぐらいは経っている筈だけど……
ゆっくり飲んでいるならまだしも、まぁまぁなペースで飲んでいるし結構な量飲んでいそう。
「ちゃんと自分が呑んでも大丈夫な量をわかって呑んでるから大丈夫よ」
「なら良いけど。で、売れそうな味なの?」
「そうね。悪くは無いけど。これ以上に美味しい赤ワインもいっぱいあるかなって感じね。けど、ワインなんて作った事ない私たちが作ったのに失敗した樽は無かったし、樽ごとの味のばらつきも無かった。その点ワインの実は凄いと思ったわ」
成程。ド初心者が作っても失敗しないし、味のバラツキも無かったか。
確かにそれは凄いことだと思う。
ワインの実の皮に付いている天然の酵母菌を使って作ったら、何樽かは失敗するだろうし、味のバラツキは出て当たり前って思っていたけど。
流石オベロン王がワインに加工するのは簡単と言っていただけはある。
「味については分かったけど、結局売れそうなの?」
「馬鹿みたいな値段を付けなければ売れると思うわよ」
「適正価格をつければ売れるって事ね。それじゃ研究所に送って成分調査が終われば販売できるわけだ」
「そうね。野菜に関しては問題ないって結果が帰って来ているし、会社の設立も問題なく終わった。このワインの販売許可が降りたら本格的に、販売を開始する感じで動くと思うわ」
「そっか。それじゃその前に母のパワーレベリングをしといた方が良さそうだね」
ソフィアの設立した会社の代表は母になっているからな。
今までも十分に俺の母として色んなところからマークされてただろうけど。
今後は更にマークされる事になる可能性もある。
俺がA国に行く前に母をパワーレベリングしようって話はあったんだけど。
結局できなくて、まだレベルが1の状態だからな。
家妖精のジゼルがいるから家にいる分には安心なんだけど。
会社の代表として外に出ている時に襲われたら危ないからな。
「そうね。レベルは上げておいて損は無いし。また大きな予定が入ってしまう前にお義母様をダンジョンに連れて行った方が良いかもね。そう言えば、映司もこれを食べて見て」
ソフィアが食べていた肉を1切れアーンで食べさせて貰う。
これはワイバーンの肉か。唐揚げとかステーキで食べた時より断然柔らかい。
「ワイバーン肉の赤ワイン煮よ。美味しいでしょ?まぁ、私が作った訳じゃ無いんだけど」
赤ワイン煮なんてオシャレなもの初めて食べたかも。
E国にいた時に開かれた晩餐会で食べたっけかな?
まぁ、何度も食べた事のある料理ではないな。
「それにしても、ワインで煮込むとこんなに柔らかくなるんだね」
まだまだ食べれそうだけど。夜ご飯は既に食べているし。
今日はやめておこう。
「因みに、ワイバーン肉の赤ワイン煮に使った赤ワインは、今私が飲んでいるものじゃなくて、映司の作った炎の結晶を漬けて龍酒に変化させたものを使っているのよ」
「龍酒の方が味が上ってだけじゃ無くて料理に使っても美味しくなるってこと?」
「お義母様が想像の3倍ぐらい短い煮込み時間で肉が柔らかくなったって言ってたから、料理に使うと味以外にも効果が有るみたいよ」
へぇ〜そんな効果まで。
龍酒を料理に使うなんて勿体ない!って言う人もいそうだけど。
自家生産だしな。好きに使わせて貰おう。
「料理に使うって話で思いついたけど。龍酒を酢にしたら更に料理が美味しくなったりするのかな?」
ワインビネガーってワインをさらに酢酸発酵させたものだよね。
それなら家でもワインビネガーを作ることだって可能なはず。
「そうね。和食を作る時には合わないだろうけど。洋食を作る時には龍酒で作ったワインビネガーを使うと更に美味しくなるかもしれないわね。と言っても、最初から龍酒を使って失敗したら勿体ないから、最初は別ので試しましょう」
俺が作った炎の結晶を漬けておくだけだし。
家で実験する分にはどちらも変わらない気もするけど。
それを言ったら怒られそうなので、黙ってしたがっておく。
この後、ソフィアが酔い潰れるまで試飲という名の晩酌に付き合う事になった。
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