第258話

「おかえり。全員無事だと聞いてはいたけど。ホントに大丈夫そうで安心した」


ケツァルコアトルが帰った後、ソフィアからどこの差し金か知らないけど。襲撃を受けたから事情聴取とかで帰るのが遅くなるって連絡が来てちょっと心配してたんだけど。

みんな怪我ひとつしていないようで安心した。


一番弱い母だって家妖精を召喚して戦うことが出来るんだから、並の襲撃者なら返り討ちだ。

そうわかっていても心配なのは変わらない。

3人より強い襲撃者が襲ってくる可能性だってある訳だし。


特に母の家妖精は本来家から離れられないのを母の持つ宝石の中に宿る事で無理やり家の外について行っている状態なので、本来の状態よりかなり弱体化している。


やっぱり一度、母をパワーレベリングしてある程度レベルを上げておいた方が良いだろう。勿論、家妖精のレベルもだ。


俺の冒険者ライセンスを発行してもらう時に母の冒険者ライセンスも発行して貰っているので、その気になれば明日からでもダンジョンに入れる。


明日の放課後は桜島ダンジョンに行こう。

経験値ダンジョンは魔物を倒して手に入る経験値が上がっているけど。

桜島ダンジョンでBP5,000ぐらいの魔物を倒した方が経験値貰えるからな。

浅い階層で出てくるのはBP100前後の魔物なのでいくら手に入る経験値量が増えても桜島ダンジョンに出てくる魔物を倒した方が経験値が美味しいって事だな。


経験値ダンジョンの深い階層まで行けば話は変わってくるんだろうけど。

それはそれで時間がかかるし、それなら直ぐに行ける桜島ダンジョンの方が良いだろう。


何時までも玄関で話しているのもアレなので、全員でリビングに移動する。

母はこれ以上、夜ご飯を用意するために1人でキッチンに行ってしまった。


「映司にぃは電話がかかって来てからずっと家中をフラフラ歩き回って、すっごい邪魔だった。そんなに心配なら迎えに行ったら?って言ったら『襲撃者は全員無力化したし、コッチは問題ないって言われてるのに迎えに行って邪魔がられたら嫌だし…』とか言い出すし」


「こっちもソフィア様が電話の声が元気がなかった。神を復活させた事でかなり弱ってるんじゃないか。今、家の方にも襲撃が来たら危ないんじゃないかって車の中でずっとソワソワして。気が散って大変でした」



向こうでは彩夏とクラリスさんが何か話しているけど、聞こえないフリをする。


今思えばちょっと冷静じゃなかったねあの時の俺。

ソフィアも俺と同じく聞こえないふりをする事にしたようだ。


エルフの特徴である細長い耳が赤くなっているから、ソフィアもちょっと冷静じゃなかったなと少し前の自分を思い出して恥ずかしくて悶絶しているんだろう。


「そう言えば映司。復活させた神様は日本の神様なの?」


「それが、そうじゃ無いんだよね。復活させたのは南米の神ケツァルコアトルだよ」


ソフィアは神を復活させるだけでも意味がわからないのに、なんで南米の神様を復活させる事になったの?と言う顔をしている。


「と言うわけで、分割された体の一部が今回行った土御門家の本邸で保存されてたんだ。それで復活のお手伝いする事になった」


「それにしてもケツァルコアトルかぁ。神様に詳しくない人だって名前ぐらいなら聞いた事が有るってぐらいのビックネーム。そんな神様を復活させたとなると世界中が騒がしくなるんじゃない?」


「そうだね。だからケツァルコアトルの存在は当分極秘。外で話しちゃダメだよ?

あ〜それと、ソフィアにはE国を含めヨーロッパでケツァルコアトルの分割された体の情報を探す時に手伝って貰うことになると思う」


ソフィアならヨーロッパ各国に人脈を持っているだろうし、手伝って貰えばケツァルコアトルの体が見つけられるかもしれない。


ケツァルコアトルは人類の味方になってくれるだろうし、ただ復活させるだけじゃなくて出来ることなら完全復活させたい。


神の中にはケツァルコアトルの様に力を失っている神もいるだろうけど。

復活させるのは慎重に行かないと……

全ての神が人類の味方になってくれるとは限らない。

そんな相手の力を態々復活させる訳には行かないからな。


神々は地球から色々縛られていて、常に全力で能力を使うことは出来ないようだけど。

それでも神だからな。

ケツァルコアトルだって1パーセントの実力しか出せない状態でも当然のように転移を使ってるし。


人間からしたら能力が制限されていようと手も足も出ない存在それが神だ。

なので、ヤバそうな神は復活させないに限る。

最終的には、どれだけ注意しても、そう言う厄介な神に限って復活しちゃうんだろうけどね。


だからこそ厄介な神なんだろうし。

例えばだけど北欧神話のロキとか。

ロキは完全な敵と言う訳じゃ無いだろう。

寧ろ最初は人類に協力してくれると思う。

なんだったらケツァルコアトル以上に。

だけど、ここぞと言う場面で人類の敵側に回る。ロキはそう言った神様だと俺は思っている。

正直、ケツァルコアトルを完全復活させたいのはそう言った神に対抗する力になって貰うためと言うのもある。

神に対抗するなら神の力を借りるしかないだろうからな。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


読んでいただきありがとうございます。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る