第245話

普通の家庭ではされないような会話をしながらの朝食を終えて、今日もSCSF本部にある河村さんの部屋に向かった。


今日も今日とて何も起きなければずっとこの部屋にいることになるんだけど。

昨日と違って暇つぶし用に推理小説を持ってきているので昨日みたいに暇と感じる事は無いだろう。

推理小説ならゲームをするよりはマシだろう。


そう思ってたんだけど……


総理大臣やら迷宮省の大臣やら政府の関係者が、俺と話すためにぞろぞろ来たことによって読書する暇はなかった。


態々笑顔を握手する写真とか撮らされて無駄に疲れた。


まぁ、総理大臣が代々陰陽師の家系で実際に陰陽術を使えると分かったので、文句は言わないけど。

今度実家を案内するって約束してくれたし。


スキルシステムがない時代のファンタジー技術は凄い気になるからね。

俺も利用出来る技術が有るかも知れない。

陰陽術の技術を最初から全て教えてくれる訳じゃないのは分かっているけど。

ここで関わりをもてた訳だし、これから少しづつ仲良くしてちょっとづつ陰陽術について教えて貰えればいい。


こう言うのは焦ってもいい事無いからな。


それにしても土御門って名前の時点で陰陽師の可能性に気づくべきだったよな。


まぁ、気づけなかったものは仕方がない。


「今回は不意打ちのような事してしまって本当に済まない」


「気にしないでください河村さん。総理大臣なんて忙しいのが普通でしょうし。現状そこから更に忙しい感じでしょう?不意打ちのような感じになってしまったのも仕方ないですよ。こちらにも利益はありましたし」


陰陽師のくだりがなかったら文句のひとつやふたつ言ってたと思うけど。

逆に今回はそれがあったので驚いたし疲れたけど怒ってはいない。


それにしても、ダンジョンが一般開放されてから2日経つけど、そこまで大きな事件は起きなかったな。


何かしら大きな事件が起きると思ってたけど……


あぁ、もしかしなくても今は大人しくレベル上げアンドアイテム集めの時期ってことか。


危険思想を上手く隠して冒険者ライセンスを取得出来れば、合法的にダンジョンに入る事ができる。

それなら、今すぐ事件を起こすんじゃなくてある程度レベルを上げてから行動を開始した方が被害を大きくできるし、生存率だってあげられる。


マジモンのサイコパスならこれぐらいは考えてそうだな。


取り敢えず。俺がこうやってSCSFの本部で待機していなきゃ行けないのは土日祝日だけで、平日の放課後までここに来る必要は無い。

明日からは思う存分ダンジョンで暴れさせてもらおう。

部屋で大人しくしていたので、なんだかんだ言っていい休息になったかな?

と思わなくもないけど。

2日間一切戦闘をしてないと体が鈍っている気もするんだよな。


とりあえず。闘技場で瞬殺しないで体の動きを確認しようかな……


そんなことを考えながらSCSFの本部を後にして家に帰った。


ーーー


「って思ったんだけどね〜」


夕食を食べてお風呂に入って良し寝るぞと思ったんだけど。

全然眠くならず、むしろ体を思いっきり動かしたい気分だったので、寝ないでそのまま交差点ダンジョンに来てしまった。


当然、攻略するために来たんじゃなくて闘技場が目当てだ。


いつまでも攻略しないってのもなんか悔しいので、いつか攻略しないとなと思っているんだけど。

結局、また今度ねって闘技場の方に行っちゃうんだよね。

ダンジョンに入ってすぐに雷太が降伏してきたのでダンジョンの判定的には攻略完了していると言うのも、なんだかんだ言って再奥まで行くのは今度で良いかってなっちゃう理由だね。


兎に角、今回は闘技場。


魔法陣の上に乗って闘技場に移動して炎の結晶をリソースに捧げる。


「ブリザードウルフ。氷魔法を使う狼か……」


なんと言うか相性が良すぎるな。

ブリザードウルフが可哀想になってきた。

なんか凄いしっぽが下がっちゃってるし。

お得意の氷魔法が俺に効かないと理解しているんだろう。


相手に戦意が全くないから攻撃しづらいし。


あっ、仰向けになって降伏のポーズをとった。

なんと言うかこのダンジョンの生み出した魔物はこう言うやつが多いのかな?

雷太もそうだったし。


もしかして、俺を油断させて一発逆転を狙ってる?と思って無防備を装って近づきお腹を撫でで見るとクーンと嬉しそうに鳴き始めた。


すっごい殺りづらい……


〈猟師〉って言う弓術、短剣術、犬や狼系の

魔物をテイムできるスキルが統合された有能スキルのスキルの書を持っているから従魔にすることは出来るだろうけど……

闘技場の魔物ってテイムできるのか?


雷太に直接聞くのが早いか。


「ってわけで雷太どうにかならない?」


雷太はダンジョンマスターなので、いちいち説明しなくてもこの状況は分かっているはずだ。


「本来闘技場の魔物はテイムできるように設定されてないので、現状では無理っす」


しかもその設定はダンジョンマスターでは変更することができず、ダンジョン本体にしか出来ないらしい。


話している間もずっとお腹を撫でられていたブリザードウルフが自分は死ぬしかないのかと落ち込んでしまった。


かなり賢いみたいだし、出来れば従魔にしたいんだけどな……




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読んでいただきありがとうございます。

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