第238話

「おまたせ、今日も私の方が遅かったね……」


今日の放課後も勝彦と青木さんをダンジョンに連れていく約束なのでホームルームが終った後も教室で勝彦と2人でダベっているとそう言いながら青木さんが教室に入って来た。


「まぁ、青木さんのクラスの担任、学校で一番ホームルームが長いって言われている人だし仕方無いんじゃない?

今日は夕飯が勝彦の奢りって約束になっているし、早速ご飯を食べに行こうか」


ほんとに最低限だけど俺にもリターンが無いとねと言うことで、俺が2人をダンジョンに連れていく時は勝彦が俺の夕飯を奢ると言うことになっている。

夕飯食べてからダンジョン行かないと夕飯食べる時間がすごい遅くなると言うのもある。


教室に残っているのは俺たちだけじゃないので、ダンジョンって単語は一言も声に出すことはないけど。


「約束はしたけど、手加減してくれよ?」


「そんな高いところ行こうぜなんて行ったりしないから安心してよ」


一昨日の焼肉屋見たいな金額払わせるつもりは無い。

正直、家で魔物の肉を食べた方が美味しいし。


いいなー自分にも奢ってよとか言い出すやつがいないとも限らないので、話しかけられる前に教室を後にする。


学校最寄りの駅の近くにあるファミレスで少し早い夕食をとった後、人気のない裏路地に入ってダンジョンに転移する。


今回は速度重視と言うことで、青木さんに最初から鉄製の投げナイフを貸し出すことにしている。


と言うのも次の階層が現時点の最終階層だと聞いているからだ。

現状のリソースではそれが限界だったからであって、リソースが溜まりしだい徐々に階層を追加していく予定だそうだ。


なので、早いところこのダンジョンを青木さんの力で攻略して貰って残りの時間は交差点ダンジョンでパワーレベリングしちゃおうかなと思っている。

アトランティスに連れて行っちゃおうかとか少し考えたけど。

流石にそれはやり過ぎだろうと思ったので交差点ダンジョンにしておいた。

一先ずの目標、ガーゴイルがどれぐらいの強さなのか実際に経験しておくのも良いと思うし。


最終階層は今までと違って仕掛けられている罠がしっかり挑戦者にダメージを与えられるものに変化していて、出現する魔物も、防具は1つ前の階層で出てきた時と同じく腰蓑オンリーだけど。

武器は木の棍棒では無く、剣を持っていたり槍を持っていたりハンマーや斧。

遠距離武器や魔法を使って来るゴブリンはいなかったものの様々な武器を装備して一度に複数襲いかかってくるようになった。

武器だけじゃなくてゴブリン自身の身体能力も前の階層に出現した個体より高くなっている。


今まではチュートリアルでここからが本来のダンジョンですよって感じがするな。


「えっ!そんなのありなの!!」


青木さんが投擲した鉄製の投げナイフを回避するのではなく、装備している武器で地面に叩き落とされた事に驚いて大声をあげる。


アレされると、まだ軌道を一度しか変更する事が出来ない青木さんは当てられ無いからな。

叩き落されないように武器を避けるとゴブリンに当たる軌道からも外れてしまう。


投擲の腕がさらに上がれば、それでも当てる事は出来るかも知れないけど。

青木さんは初心者だからな〈投擲〉スキルのおかげでかなり当たるようになってはいるけど。


「後で回収するのが面倒臭いけど……」


そう言って何本か渡しあった鉄製の投げナイフでは無く、青木さんが自分で用意していたパチンコ玉を連続で投擲し始めた。

しかも今までは一度に1発しか投げてなかったのを今回は一度に何発も手に握って同時に投げている。


1発ずつだと対応されるなら数で攻めれば良いじゃないって事だな。


予想通りゴブリンたちは捌ききれずに被弾してダメージを受けているね。


所詮ゴブリンだし、このまま倒せそうだな。

問題は本人も言っていたけどパチンコ玉の回収がすげぇ面倒臭いってことかな。


その後ゴブリンを倒すことは出来たけど。

戦闘時間よりパチンコ玉を回収する時間の方がかかってしまった。


「さてと。次は勝彦が戦う訳だけどホントに大丈夫?」


青木さんのお母さんに俺が居なくてもダンジョンに入る事を許して貰うための交渉材料として、戦闘しているシーンを動画に撮って見ようかという話をしてみたら、取り敢えずやってみようと言う話になったので、次は勝彦が戦う。


勝彦自身は戦闘スキルを持っていないし、レベルを上げても身体能力があんまり上昇してないので、勝彦オンリーの戦闘シーンの動画を見せたって逆に不安を煽るだけじゃないか?って思うんだけど。

勝彦は自信がありそうな顔をしているし。

勝彦を信じて見るか。


「ジャジャーン!ファイアロッド〜」


勝彦が自分で作った人工マジックバッグから野草のゼンマイの様に先端がクルクルしてその中心に宝石が埋め込まれていると言った見た目をしている杖を取り出した。


アレも人工魔導具か。


「ファイアボール!ファイアボール!」


勝彦がファイアロッドと言った杖の宝石部分から火球が発射されてゴブリンに向かって飛んで行く。


これが宝石と〈火魔法〉スキルを所持していてファイアボールを使える人がいれば量産できると考えると勝彦の〈魔法陣〉スキル恐ろしいな。


ゴブリン達はあっさり魔石を残して消えてしまった。



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読んでいただき有難う御座います。

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