第232話

青木さんと克彦は、青木さんのお母さんから何とか許可をもぎ取ったと言うので、放課後2人を家に招待する。


学校再開初日は転移で通学するのは流石にアレかな……と思って電車で通学したけど。

芸能人みたいに話しかけられたり、するのがめんどくさかったので、今日からは転移を使って登下校する事に決めさせて貰った。


飛んで登下校するよりは目立たないだろう。


授業も終わったし、転移を使って直ぐにE国へ、とならず家に移動したのは実際にダンジョンに潜って魔物と戦闘する前に青木さんがどんな事が出来るのか最低限確認しておく必要が有るからだ。


あと、勝彦に従魔のサティを連れて来て貰うためでもある。

勝彦の家はご近所さんだし、わざわざ転移を使って送らなくても直ぐに戻って来るだろう。


と言っても田舎でのご近所さんなので、それなりに距離は離れている。

帰りはサティの背中に乗って来るだろうし遅くても30分もあれば帰って来るだろう。


「と言う訳で、ロスが構える盾目掛けて攻撃してみて」


何か的になるものを用意するのが面倒だったのと。

ダンジョンに行く前に魔物っぽい魔物の姿を見せておくべきかなと思ってロスに的役をやってもらうことにした。


サティを見た事あったかも知れないけど。見た目は普通の羊だからな。

賢い羊ぐらいの感覚で魔物と言う感覚は持ってないだろう。


だからと言って最初から竜や龍の姿を見せるのは段階を飛ばしすぎかなと思ったので、竜牙兵のロスがちょうど良いかなと判断した。


青木さんは恐る恐ると言った感じでポケットからパチンコ玉を取り出してロスの盾に向かって投げた。


恐る恐る投げたにしては速度が出てるな。


「青木さんのスキルは投擲か……」


投擲スキル自体は悪くないと思う。

クラリスさんも使っているし。

但し、武器を投げる為、武器の消耗が激しい。

投げた武器を回収出来ない可能性が有るから。


借金を返す為にお金を稼ぎたい青木さんとはちょっと相性が悪いかなと言った感じだな。


魔物を倒すための攻撃スキルを所持しているだけラッキーなんだろうけどね。


攻撃スキルを持ってなくても武器は扱えるし魔物を倒す事は出来るけど。

その分リスクは上がるからな。


「恐る恐る投げてあれなら、しっかり投げれば魔物にもダメージを与えられそうだね。もう何回か動かないロスに向かってパチンコ玉を投げて問題なさそうだったら動くロスに向かって投げる練習をしよう」


ダンジョン内の魔物が動きを止めてゆっくり狙いを定めさせてくれる訳ないからね。


動く的に当てる練習もしないと、ダンジョンに行ってもパチンコ玉を無駄にするだけだ。


そういう訳で、投擲の練習をして貰っていると、蹄が地面を蹴る音が聞こえてくる。

勝彦がサティを連れて帰って来たようだ。

久しぶりに見たサティは少し大きくなって、立派な巻き角が黄色い宝石のような材質に変わっていた。


どうやらソードシープからサンダーソードシープに進化した結果らしい。

羊毛に雷を纏わせたり、角から電撃を放てる様だ。

順調に強くなっているようだな。


それにしても相変わらず、俺には絶対近づこうとしないな。


そんなに怖がる事無いと思うんだけどな。

こうなるのはサティだけじゃないしもう諦めているけど。


「メンバーも揃った事だし、早速行こうか」


練習を見ている感じ、動いてる魔物にもちゃんと当てられそうだし。

後は実践で慣れて貰おう。


今回は俺たちがE国のダンジョンに行くことは一部を除き秘密という感じになったので今回ダンジョンに行く3人と1頭に透明な炎を纏わせて姿を隠して行動する。

最上位龍に進化したおかげで、そこそこ魔力消費の高いこの炎を他人に使って数時間維持できるぐらいの余裕が出来たので、他人にバレないように行動するぐらい楽勝だ。

魔力感知とか熱感知にも引っかからないように対策もしてあるので、もしこれで見つかったら見つけた人が凄いって事で。


流石にエリックさんには姿を見せて挨拶する必要がある。


大丈夫だとは思うけど、挨拶している場面を人に見られる訳には行かないので手短に挨拶を終わらせて、ダンジョンに向かった。


「何か凄い悪いことをしている気分」


「それは俺も思った」



「そうは言ってもバレると色々面倒なんだよ」


別に俺が1人で来るなら問題ないけど。

勝彦と青木さんがいるとあの二人は誰だ?って話になるし、事情を正直に説明したらじゃあ俺も私もってなって面倒な事になる。


今回は丁度ど素人に挑戦して貰いたいダンジョンがあって勝彦からのお願いだったから、ここまでやっているんだから、他の人の為にこんな事をするつもりはない。


まぁ、隠れてコソコソ移動して悪者っぽいってのは否定しないけどね。


ダンジョンの入口で警備している兵士の横を数通りしてダンジョンの中に侵入する。


「よし。ここまで来ればバレることは絶対にない。俺たちだけ専用のサーバーを用意してくれるって話だし」


ダンジョンはオンラインゲームのようなサーバーを複数用意する事ができる。


ダンジョンに一度にたくさん人が入ってきても対応出来るようにつけられてる機能だそうだ。

今回、警察や軍人がこのダンジョンに入って来ても俺たちと同じサーバーには入って来ないように設定してくれているので、ダンジョン内でバッタリ遭遇してしまうという心配をする必要がないのは有難い。


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読んでいただきありがとうございます。

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