第230話
「なんと言うか夢を見るのは自由だけど……」
学校中でお小遣い稼ぎのためにダンジョンに潜るとかそんな感じの内容の話ばかりされている。
文字通り命懸けで魔物と戦うことになるのにそんな軽い気持ちで潜って死ななきゃ良いけど……
一々指摘してやるのも面倒なので、会話に混ざったりするつもりは無い。
幾ら魔法が使えるからって当てることが出来なければ魔物を倒すことは出来ないし。
そもそも魔物がこちらに向けてくる純粋な殺意を受けた状態でいつも通り魔法を使えると思わない方が良い。
慣れるまでは絶対に動きが悪くなる。
冒険者ライセンスに関しては16歳から取得出来てしまうからな。
スタンピードの発生が確定している現状。
戦力は少しでも多い方が良い。
と言っても20歳以下は保護者の同意も必要だから誰でも取得できる訳ではない。
「なんで態々E国語で喋ってるんだ?」
「そりゃ、外国語で喋っておけば何言ってるか完璧に理解できないでしょ?」
突っかかって来るやつもいるし何言ってるか分からないようにあえてE国語で喋っているだけだ。
スキルのおかげで喋ろうと思うだけで喋れるからな。
「俺はてっきりE国に言ってた時にずっとE国語で喋ってたからその癖が抜けてなかったのかと」
「まぁ、それも全く無いとは言わない」
昨日徹夜で臨時休校中の課題を頑張って終わらせてそのまま学校に来ているからな、できるだけ面倒事には巻き込まれたくない。
「で、映司はさっきなんて言ってたんだよ」
「言う訳無いじゃんって言いたいところだけど。まぁ良いか。ゲーム感覚の奴ばっかりだな的な事を言ったんだよ」
「あ〜それに関しては一回ダンジョンに入らないと治らないだろ」
だろうね。そして今の会話を聞いた陽キャ集団が絡んで来るまでが一連の流れだろう。
勝彦に責任を持って陽キャ集団の対処をしてもらおう。
「それにしても夏休みの日数削減か。当然と言えば当然だけど。やっぱりテンション下がるな」
予想通りギャーギャー喚きながら絡んできた陽キャ集団の対処を勝彦に押し付けてさっきの全校集会で発表された夏休みが少なくなると言う話を思い出して1人で落ち込む。
そうでもしなきゃ授業内容が全て終わらないって事なんだろうし、仕方がないと思うけどね。
「お前らさっきから煩い。こんなところで騒いでるんなら、ダンジョンに入った時に少しでも楽に魔物を倒せるようにどこかで特訓でもしたら?」
陽キャ集団がいつまでたってもギャーギャー煩いので、殺気を放ったりとか威圧感を出したりとかは一切せず、ただ若干不機嫌そうな声色でそう言っただけで陽キャ集団はそそくさと何処かに言ってしまった。
こんなんじゃ魔物と初遭遇した時にビビりすぎて漏らしちゃうんじゃないの?
「最初っからそうしてくれれば良かったのに」
「そりゃ、勝彦がわざわざ内容を聞いてこなければああならなかったんだから、責任もって対処して貰わないと」
「それはそうだけどさ……」
そもそも今日はホームルームだけで終わりだからもう家に帰れるのにまだ学校に残っているのだって勝彦に頼まれたからなんだから。
「おまたせ勝彦。あれ新藤くんも一緒だったんだ?」
「富美加の悩みを解決するのには映司の力を借りるのが一番早いからな。お願いして残って貰ってた」
彼女は青木富美加。
世にも珍しいオタクに優しいギャルだ。
正しくは勝彦に優しいか……
今の俺にはソフィアがいるからなんとも思わないけど。それ以前はオタクに優しいギャルなんて実在するのかよと少し嫉妬したものだ。
青木さんは別のクラスだからホームルームが長引いてようやく合流できたという訳だ。
何となく相談内容は予想がついたけど、一回話を聞いてみるか。
勝彦がご飯奢ってくれるって言うし。
「なぁ、映司。百歩譲って焼肉奢るのは良いとしよう。でもさ、せめて食べ放題の焼肉屋さんにしない?」
食べ放題じゃない焼肉屋さんに入ろうとしたら勝彦にそう言われてしまった。
食べ放題プランはなくてもそこまで高いお店じゃないし。
勝彦だって従魔のサティとダンジョンに入っているんだから、普通に払えるぐらいのお金を持っている筈だ。
「これぐらい簡単に払えるぐらいお金稼いでるでしょ?それにこのお店は個室が有るからこれからのする話をするのにちょうど良いと思うけど?」
何も考え無しでこのお店を選んだ訳じゃない。
完全な個室と言う訳では無いけど。
遮音結界を発動させれば、内容が外に漏れる事はない。
結局、俺がここにしようと言った焼肉屋に決まった。
一通り肉を注文して、肉が運ばれて来てから遮音結界を発動させる。
何も注文しないと、店員さんがご注文は?って来ちゃうからな。
「それで、青木さん、勝彦、俺の3人でパーティー組みたいって話であってる?」
借金に関しては青木さん本人は一切悪くない。
パチカスになった父親が多額の借金を作ったあと、何処かに雲隠れしてしまったせいで借金を背負う羽目になってしまったと聞いている。
青木さんのお母さんは借金を返す為に頑張って働いているみたいだけど。
自分がダンジョンに潜ってお金を稼ぐことが出来ればもっと早く借金を完済できると考えたのかな。
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読んでいただき有難う御座います。
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