第229話
「これで良いですか?」
「あぁうん。確かに怪我は一切してないし。アレだけイキっていたのが嘘みたいに従順になっているのは嬉しいんだけど……いったいどんな教育を?」
日本に帰ってきたら河村さんから新しくSCSFに入隊予定の隊員の教育をして欲しいとお願いされた。
なんでわざわざ俺に?人材教育なら100%河村さんの達の方が上手いだろうって思ったけど。
俺が教育をお願いされたのは20代ギリ前半といった年齢の人達で、強力なスキルを手に入れたことで、かなり調子になっている人達だった。
スキルが強力な分不採用にしてテロリストになられるのも困るので、何とかならないかと頑張ったらしいけどダメだったらしい。
確かにテロリストになってしまうのは問題だなと思って引き受けたけど。
まぁ〜酷かった。そもそも、河村さんが俺にこんな事をお願いする時点で一筋縄ではいかないなんて分かりきっていた事だけど、本当に想像以上だった。
最初の方はこいつらのスキルを本気で使わせてそれを正面から無効化してやれば少しはマシになるかなと思って模擬戦をしたんだけど。
あーだこーだと理由をつけて文句を言ってくるしで。全く改善する兆しが感じられなかった。
その後も色々試したけど全部ダメ。
なんだったらレベルを上げれば俺でも倒せる早くダンジョンに連れてってレベルを上げさせろとか言い出す始末。
俺が出来るだけ怪我をしないように優しくぶっ飛ばしていたのがどうも行けなかったらしい。
既にかなり頭にきていた俺は要望通りダンジョンに連れて行ってあげた。
鍛えるとなると本当に遠慮がないリーリンさんのいる桃源郷にだけど。
あの人、後でちゃんと生やしてやるから喚くなって言って普通に四肢をもいだり斬ったり爆散させたりしてくるからな。
エリックさんを含めロイヤルナイツのメンバーはリーリンさんの特訓のせいで桃源郷にいる時は感情が失われかけてたからな。
俺だってドラゴニアンと言う常人よりかなり頑丈な体を持った種族になっていなかったらエリックさんたちのようになっていただろう。
後はオマケに俺の本気の殺気も浴びせておいた。
殺気を狙った存在にだけ向けるのってやっぱり難しいいんだよね。
方向ぐらいなら絞れるようになってきたけど。
関係ない人にまで影響が出ちゃうからSCSFの訓練場にいる時は出来なかったけど。
ここなら問題ないからな。
「俺が殺気を浴びせてリーリンさんの特訓を受けさせただけです」
人道的にどうなの?と思わなくも無いけど強力で珍しいスキルを所持している以上。
こいつらがこのまま調子に乗って暴れだして被害を出してからじゃ遅いからな。
「と言う訳で、新人教育はこれで完了と言うことで良いですよね?」
「もちろん完了だよ。……そこまでやらないと近い将来なにかやらかしても可笑しくなかったと思うし」
「それじゃ約束のお酒を作るのと販売する許可お願いしますね?」
今回の報酬はお金でなくお酒の製造販売の許可でとお願いしておいた。
ダンジョンや魔導具を利用するから従来の酒造と少し違う感じになるけど、ヤバいものを製造する訳じゃない。
実際に作られたお酒と材料の確認はさせて欲しいと言われているけど。逆に言えばそれで問題が無ければ許可が降りる。
オベロン王から貰ったワインの木の穂木は俺が新人教育に時間をかけている間にワインの実を実らせているので、順調にワインを作れる環境が整っている。
ダンジョンで手に入れた中に入れたものの熟成、発酵速度を倍にしてくれる樽を使えば、そんなに時間をかけずにワインができるだろう。
更に熟成させた方が美味しくなるとかはあるだろうけど。
カイゼルもワインを楽しみにしているので、帰ったら取り敢えず1樽分仕込んで見よう。
カイゼルには鍛治で大活躍してもらう予定だからな。
今は家の近くの買った空き家をリフォームしている所だからまだ鍛治仕事を頼む事はできないんだけど。
まぁ、母が料理に使う包丁を研いだりとかそう言った方面で活躍はしてくれている。
「何時でも用意できるように、根回しはしておくよ」
「助かります。それにしてもダンジョンの一般開放まで10日を切りましたが。準備は順調に行っていますか?」
「全く。と言うかどれだけ準備をしようと絶対に問題は起こるだろうし……」
毎日夜遅くまで残業しているのだろう。
だいぶ疲れている感じがする。
これ頑張りすぎて逆にやらかすパターンな気がする。
本来は1日一切仕事をせずに休んだ方が良いのでは?と言いたいところだけど。
言ったとこで休めないだろうな。
となると別の方法で少しでも疲れを癒してもらう必要があるな……
「仕方ない。このマッサージチェアを置いて帰りますので、これを使って少しでも体の疲れを癒してください」
このマッサージチェアの効果は凄まじいからな。
ワンセットマッサージされるだけで体の疲れが吹き飛ぶ。
さっきまで重りをつけて活動してたっけ?ってレベルで体が軽くなるからな。
上げるつもりは無いけど。一時的に貸し出して上げよう。
「すいません。重要な用事があって今日はこれで帰りますね」
すっかり忘れてたけど明日から学校が再開するんだよね。
課題がまだ残っているので、今から急いでやらないといけないからな。
急いで家に帰った。
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