第226話

「早く着替えたい」


こっちが無茶ぶりしたからだけど、あっという間に勲章授与式の当日。

流石に私服で出席する訳には行かないので礼服を来ているんだけど。

絶望的に似合わない。

硬っ苦しいし早く着替えたい。

魔力で作ったものだから、着心地がいつもと変わらないのがせめてもの救いだ。


「16歳で礼服が似合う人の方が少ないと思うから、そこまで気にする必要ないと思うわよ」


まぁ、ソフィアの言う通りなのかも知れないけど、やっぱり気になる。


そんな事より今日のソフィアは式典に王族として参加するからドレスに豪華な装飾品を身につけている。


バッチリ着こなしているしとても綺麗だ。


「私はこう言う服装をする機会もそれなりにあったし。こう言う服装って何度も着ているうちに違和感が無くなって行ったりするものなんだけど……映司はリーリンと今から模擬戦をすると思いながら出席すれば服に着られてる感は無くなると思うわよ」


成程?ソフィアがいるなら、そう意識しながら式典に出席するか。


態々リーリンさんとの模擬戦だと思ってと言うことは、殺す気はゼロでも本気で戦う時の精神でと言うことだろう。

その状態を長時間維持するのはそこそこ疲れるけど。

まぁ、やれない事はないし頑張ろう。


「それじゃあ。私は先に行くからまた後でね」


今日の式典は勲章授与だけでなく、他にも複数プログラムが予定されていて、王族枠で出席するソフィアは最初から全て出席する必要があるので、ソフィアだけ先に出席する感じだな。


「警備は厳重だし、大丈夫だとは思うけど襲撃には気をつけてね」


大々的にやるからこそテロリストがなにか仕掛けてくる可能性は十分ある。

そんなこと誰だって分かっているし警備はかなり厳重にされてるから心配するだけ無駄な気もするけど。


厄介な魔導具やスキルを所持しているテロリスト集団もいるからな。

用心するに越したことはない。


特にアルカディアの残党の報復とかも考えられるわけだし。


本拠地を襲撃してトップと幹部連中は排除出来たけど。

構成員を全て排除出来たわけではない。

アルカディアの連中が秘匿して利用していたダンジョンもこっちが没収したし。

トップや幹部連中を尋問して得た情報を元に頑張ってはいるみたいだけど、やっぱり国通しの連携が上手くいかず難航しているようだ。


アルカディアの活動拠点はE国だけではなくヨーロッパ各国にあるので、E国だけがどれだけ頑張ってもどうにもならない。


「ウィーも居るし、魔力体で出席するから、もし万が一のことがあっても大丈夫よ」


それもそうか。心配しすぎるのもあれだしね。


「さてと、本当は時間まで部屋でゆっくりしていないと行けないんだろうけど」


短刀形態の理外を使ってワープホールを作り出してフィロに会いにいく。


警備のために竜牙兵を使うのはどう?って言ったら流石に……ってエリックさんに断られてしまったからな。


まぁ、見た目の威圧感がってのもあるだろうけど。俺は日本人だからな。幾ら俺が出席するからって式典の主催はE国。

なのに警備を日本人の俺に頼るってのは色々問題が有るのだろう。


なので、ロスに竜牙兵の指揮を任せて大々的に警備を手伝うのではなく。

フィロの力を借りてこっそり警備のお手伝いをさせて貰う。


そのためにダンジョンまでフィロに会いに来た。


「って訳なんだけど。フィロの力を貸してくれない?」


「当然ご協力させていただきます。と言うより、私は新藤様の眷族です。お願いではなく命令していただければと」


眷族と言う完全な上下関係が有るとは言っても、今やって貰ってる果物を育てる作業だって俺のお願いでやって貰っている訳だし。

仕事中に別の仕事をねじ込んでいるって事でしょ?しかも唐突に……

なのに偉そうに命令とか俺には出来ない。


「兎に角、植物を自身の目や耳として活用出来るフィロがいてくれるとかなり心強いからね。協力してくれて助かる」


これで会場周辺の情報をこっそり手に入れる事ができる。

もし、怪しい行動をしている様な連中がいたらマーリン経由で教えればいい感じに捕まえてくれるだろう。


と言っても、俺が式典に出席している最中に横にいてもらう訳には行かないから。

彩夏と一緒に会場の近くに待機してもらう予定だ。


彩夏ならこういった式典でたがるかなと思ってたんだけど。

出る必要のない式典に出席するつもりは無いと出席を断っている。


彩夏もアルカディアの連中を捕縛して重要な情報を吐かせたりしているので、出席する権利は有るらしいんだけど。


ヴァンパイアの能力で魅了して情報を吐かせたなんてバカ正直に説明したらやっぱヴァンパイアやべぇってなっちゃうし。

出席しなくて正解だとは思う。


もし何か会った時に自由に動ける戦力も重要だし。


と言うわけで〈デフォルメ〉を発動させたフィロと部屋に戻り彩夏にフィロを預ける。


フィロの植物を使った警戒網は超優秀で、怪しい動きをしている連中の情報がどんどん集まっていく。

確実にクロと断定できる連中はマーリンの配下によって証拠品とともに捕縛。


グレーな連中も悪魔たちがワンマークで監視することになった。


式典の様子は生中継で放送されているのでそちらもチェックしているけど、問題なく進行している。


若干過剰すぎたかな?って今更思って来たけど。

何事もなく式典が終われるならそれが1番だし。

やり過ぎぐらいが丁度良いってことで納得しておこう。



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読んで頂き有難うございます。





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