第211話

「本当、果物が沢山取れるなこのダンジョンは」


魔物の襲撃はかなりハイペースだけど、マンゴー、バナナ、パパイヤ、ドリアン、コーヒーの実etc.....


1階層目と同じく沢山の果物を採集する事ができる。


一度収穫すると少し時間をおかないと収穫するのに丁度いい所まで成長しない様なので。

ここまで取り放題なのは、今ダンジョンに入っているのが俺しかいないからだろうけど。


まぁ、地上での成長速度に比べたら脅威的な速度で成長はしてるから、どの果物も10日ぐらい待てば収穫出来るまで成長するみたいだけど。


俺に地図の作成を依頼する前に探索していたE国の兵士さんがそう言っていた。


「それにしても、地形や次の階層に進むための魔法陣の場所が違うだけで、出現する魔物や採集出来るものは同じなのかなー」


果物や薬草色々な物を採集することが出来るのだけど、今の所1階層目で採集出来たものと全く同じ同じものしか採集出来てない。


階層も変わったんだし、新しい採集物がひとつぐらいあってもいいと思うんだけど。


今は鑑定モノクルの常時鑑定モードを使ってないし、俺が見落としているだけかも知れないけど。


「ん?これって……やっぱり胡椒か!」


ふと見た方向につる性の植物が絡まっている木があった。

つる性の植物が絡まっている木なんてこのダンジョン内に沢山有るけど。

このつる性の植物は他のものと違って実を実らせていた。


前にテレビで見た胡椒ってこんな感じの植物だったよなと思って鑑定すると予想通り胡椒だった。


香辛料として使うには加工が必要だろうけど。

胡椒は1階層では見なかったな。

見落としてた可能性もあるけど。

地図の八割は飛んで埋めたし。


このダンジョンで取れる果物は地上で育てて採集したものに比べて劇的に美味しいという訳では無かったけど。

最高級フルーツと同程度か少し下(ソフィア評)程度の美味しさだったので、この胡椒もそんな感じだと思われる。

自宅で使っている胡椒は普通にスーパーで売っているものなので、この胡椒を持って帰れば、料理が更に美味しくなるかも知れない。


マギアイアンワイバーンの肉も有るし、家に帰って母に料理して貰うのがかなり楽しみだ。


……胡椒って食べれる状態に加工するのにどれぐらいかかるんだろう?


今手に入れた胡椒を使ってマギアイアンワイバーンの肉を食べるのは無理かもと一瞬思ったけど。

例え、胡椒を香辛料として使えるように加工するのに数ヶ月かかろうと、無くならないだろうってぐらいマギアイアンワイバーンの肉は有るし問題ないかと思い直した。



「で、初めて見る魔物も現れた訳だけど……」


目の前に現れたのは背中の毛が金色のゴリラ

まんまゴールドバックと言う名前らしい。

背中の毛が金色な事以外、見た目は完全にゴリラなので何か違和感がある。


俺とゴールドバックの目が合うとゴールドバックが後ろ足で立ち上がりドラミングをして威嚇をしてくる。


初めてゴリラのドラミングを見たけど、かなり音がデカいし結構迫力あるな。


特に萎縮したりすることはないけど。


いくら相手が魔物だろうと威嚇中に攻撃するほど鬼畜じゃない。ドラミングいつ辞めるかなと思いながらスマホを取り出して動画を撮っている。

こんな魔物がいましたよって動画や写真があった方が良いだろうし。

動画を撮ってる理由の9割はこんな近くでドラミングされてる動画って結構迫力有りそうじゃない?って思ったからだけど。


俺が全くビビってないと分かっているようで、ドラミングを止め四足歩行に戻りこちらに突進してくる。


遠距離攻撃できるようなスキルは持ってないのかな?


ゴリゴリの近接系に見えて遠距離攻撃主体のスキル構成の可能性もあるかな?と思っていたけど、そんな事は無さそう。


折角だし動画の撮影はそのまましておこうか。


河村さんが用意してくれたスマホだけど。

カメラの性能も良いものを選んでくれたようで、結構綺麗な写真や動画を撮れるんだよね。


と言っても、俺が持ったまま戦うとゴールドバックが綺麗に映らないと思うので、久しぶりに竜牙兵のロスを召喚して撮影係をして貰う。


久しぶりに召喚されてやる気満々だったのに、撮影係お願いって言われて落ち込んでたけど。『この後、ロスが戦っているところの動画も撮って上げる』って言ったら一瞬で元気になった。


「待たせて悪かったねゴールドバック」


こちらに向かって来ているはずのゴールドバックがいたのに、呑気に撮影係を用意してなんで邪魔されないかと言うと。

ドラミングしている場面だけじゃ無くて戦っているところも録画しようと思った瞬間に炎で作られた鎖で拘束していたからだ。


こちらの準備が終わったのでゴールドバックを拘束している炎の鎖を解除する。


相当頭にきているらしく、炎の鎖が解除された瞬間全速力でダッシュ。その勢いを利用して殴りかかってくる。


「もうちょっと力強いのかなって思ってたけど。この程度か」


ゴールドバックの拳を右手の人差し指だけで止める。


ゴールドバックは有り得ないものを見るような目でこちらを見て固まっている。

隙だらけだけど、今倒しちゃったら動画を撮った意味が無い気がするので、少し待って見ようか。



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読んでいただき有難うございます。

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