第209話
「特別ボーナスを用意するのは賛成だけど。どんなのが喜ぶのかな?」
ソフィアとクラリスさんは長い付き合いだし、何が喜ばれるかとか詳しいだろうし。
「今回に関しては魔女の作る美容品って言う。女性なら誰でも喜ぶ物を用意出来るから何を贈るかで悩む事はないわ。素材を用意する必要は有るけど」
どうやらローブを作るために採寸した時に既に相談してあったようだ。
素材には虫型魔物の体液も使うみたいだけど。
美容の為なら目を瞑ると言う事だろうか。
取り敢えず。もう夜なので話をするのはここまでにしてベットに入った。
ーーー
「今日はダラダラ漫画の新作単行本を読む予定だったんだけどな……」
「このダンジョンのマップを作成して欲しいって言われて二つ返事でOKしたのは映司でしょ?」
「そうだよ。ノックもせずに『ダンジョンに行くぞ!』って入ってくるからびっくりしたんだよ?幾ら兄妹でもアレはダメだよ」
「その件につきましては大変申し訳御座いませんでした。種族進化して暴れたい気分がちょっと暴走しちゃって……」
よくよく考えてみれば、BPが上昇したと言っても進化前でも〈憤怒の王〉でBPを上昇させれば余裕で超える数値だから。
身体能力が上がった事により自分の想像と実際の動きにズレが生じる事も無い。
今の状態で〈憤怒の王〉を使ってBPを上昇させれば今まで以上の数値を出すことは出来るけど。そこまでの数値を今ここでだす意味が無い。
出てくる魔物は素の状態で放つ熱線で1発で倒せるから。
と言うわけで、ここで戦うなら進化した意味が全くない事にダンジョンに入ってから気づいてちょっとテンションが下がっている。
自分がやると決めたことだし、最低限仕事はするけどね。
わざわざ俺に報酬を用意してまで、地図を作成して欲しいと頼まれるぐらいには、旨みの大きいダンジョン出しな。
今来ているダンジョンはフィールド全体がジャングルとなっていて様々な南国の植物やポーションの材料に使用する薬草の類が生えている。
道と言う道はないし、数が多い虫系の魔物が何種類も出現するし。
猿型、鳥型、ワニ型etc.....かなり多くの種類の魔物が出現する。
ダンジョン全体でと考えればこのぐらい豊富な種類の魔物が出てきても不思議じゃないけど。
ひとつの階層で、こんなに多くの種類の魔物が出てくるダンジョンは珍しい。
ひとつの階層で様々な魔物のドロップを手に入れられる事は良いことでは有るけど。
その分ダンジョンの難易度が高いと言うこと。
リターンも大きいので、難易度を少しでも下げるために俺に地図の作成を依頼してきた訳だ。
「うわぁ。大きくなった虫より私はあっちの方が苦手かも……」
こちらに近づいて来る黒いモヤを見ながら凄い嫌そうな顔を彩夏がしている。
どうやら、蚊の魔物が何百何千と集合した結果。黒いモヤに見えているらしい。
サイズは普通の蚊と変わらないけど、吸血能力はかなり強化されているらしく。
20匹程度に同時に吸血されたら10秒程度で貧血になって1分も有れば血を一滴残らず吸い尽くされてしまうだろう。
下手したら千匹単位で群れているのに数十匹に接近されるだけで命の危険が有るとか、割と凶悪だよね。
因みにサイズは普通の蚊と変わらないのに数速度はともかく、吸える量まで増えているのは、吸血した血を瞬時に魔力に変換する事が出来るからだ。
魔力の場合、自分の限界以上に生産しても勝手に体外に排出されるだけだからな。
そしてその排出された魔力はダンジョンのリソースになると……
ここのダンジョンマスター結構えげつない事考えるよね。
まぁ、俺からしたら纏めて燃やせば良いだけだし他の魔物と変わらないけど。
「ドロップの回収がめっちゃ面倒臭いな」
蚊の大群がドロップしたのは米粒サイズの魔石だった。
いくら米粒サイズだろうと数百数千集めれば量で補えるだろうけど。
集めるのが面倒臭い。
地面に散らばった米粒サイズのものを大量に拾う作業なんて誰が好き好んでやるのだろうか?
その間にほかの魔物を数体倒した方が確実にお得だ。
なので俺達も、サンプルとして数個持ち帰るだけで後はそのまま放置する事にした。
「マッピングをするだけだったら、空を飛べば早く終わるけど……」
マッピングは日本にいる時も使った手に持ってダンジョン内を移動するだけで自動で地図を作成してくれる水晶玉型の魔導具を使っているので、ただ地図を作成したいだけならダンジョン内の上空を飛び回った方が圧倒的に短時間で地図を完成させる事が出来る。
しかし、このダンジョンで採集できる果物は結構美味しいし。
例の美容品の材料をドロップする虫型の魔物も出現する様なので、それらを無視して地図だけ作るのは勿体ないと思いわざわざ歩いて地図を作成している。
それもあって今日一日じゃ地図を完成させる事は出来ないだろうけど。
明日以降は俺が1人で来て龍の姿で空を飛んでちゃっちゃと地図を完成させる予定なのでそこまで時間はかからない予定だ。
飛行速度が早くなっているかの確認も出来るし。
と言っても下位龍から中位龍に進化したときも飛行速度が上がったので、今回も上がっている筈。
地上でぶっつけ本番で全速力で飛行して制御出来なくて周りに被害を出すとか嫌だしね。
俺ら以外に入ってきている人はいないし、地形を破壊しちゃっても元通りになるダンジョンなら試す場所として丁度良いという訳だ。
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読んでいただき有難うございます。
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