第207話

「それじゃ、ダンジョンから出ますか。あっそう言えば、短刀の拵の件ってどうなってますか?」


理外をしっかり完成させる為に風魔さんの伝手を頼って拵を用意して貰っている。

今どうなっているのか気になったので聞いてみる。


「それなんですが。拵に限らず、木材を加工するのに補正がかかるスキルを手に入れたようで、木材以外の部品も含めて既に完成している様です」


まじかよ。理外を完成させる前に種族進化出来れば2段階進化する事が出来るなって思ってたんだけど。

もう完成しちゃったか。

と言っても種族進化するまで、理外を完成させないと言うのは無しだ。


「丁度良いですし風魔さんだけ先に帰国って事にしますか。その方が残念猫方面の面倒ごとを避けられるでしょう」


E国にいる間は、残念猫の事を見ただけで残念猫が何なのか看破してしまう人が多いだろうし。


「いっその事、〈錬金術〉で生み出されたって。ある程度、本当の事を言ってしまった方がいいんじゃない?『ダンジョンで滅茶苦茶賢いキマイラと遭遇したので仲間にしました。テイムはしていないけど。魔導具の首輪をしているので安心です』なんて言っても大きな話題になるのは変わらないでしょ。なら〈錬金術〉で作られた人工の魔物ですって言っても、かわらないと思うのだけど」


まぁ、確かに。

どちらにせよ騒ぎにはなるか。


鑑定スキルなんてものが存在するんだから、いつ残念猫の正体がバレるか分からないし。

だったら、人工の魔物ですよと言っておいた方が炎上しないか。


「もうどっちでも良いにゃ。どちらにせよ仕掛けて来るなら返り討ちにするだけにゃ」


「確かにそうだろうけど。やりすぎると風魔さんが悪者にされちゃうから注意しなよ?」


事後報告で風魔さんはやる事無いだろうし先に日本に返したとか報告したら、また怒られるので一旦泊まっていっる宮殿の部屋に繋がるワープホールを作り出す。


警備が混乱するので、せめて門の前に転移してくださいと怒られそうだけど。

そもそも、門を通過して出かけたんじゃないから問題ない……ということにしておく。


宮殿に帰ってからクラリスさんに風魔さんを先に帰国させると説明して、色々と調整して貰う。


俺はその間に河村さんに電話をかけて風魔さんだけ先に日本に帰ると、もう一度説明する。


「そう言えば映司様に勲章が授与される事が確定しました。授与式は丁度1週間後だそうです」


ほぼ確定って話だったけど。確定しちゃったか。

式典とかなしで、ハイってくれれば良いのに。


そんな事出来ないのは分かるけども。


「勲章を頂けるのは大変光栄な事ですが、トレントの異常種の被害の復興優先で、式典は最低限のものでいい的なこと言ったら何とか規模を小さくしたり出来ない?」


大規模で豪華な式典とか出席したら大変そうだし。


「難しいかと。映司様といい関係を築いてますよと周囲に見せる意味もありますし。式典のランクを下げるのはなく、別の方法で不満が少なくなるように調整するかと」


そう言うものか……


「取り敢えず覚悟だけしておきます」


刺客を差し向けて来たのに、断れないように周辺国を巻き込んで異常種が倒せない助けてとか言ってきて、異常種を倒したら感謝の一言すら言わずに、また殺そうとしてくるような国と違って、しっかりと感謝の気持ちを現してくれてるんだから、あんまり嫌がるのもダメだろう。


「それでは私は風魔様帰国の件を報告して来ます。風魔様、パスポートだけお借りしてもよろしいでしょうか?」


転移で移動しようと国をまたぐならパスポートが必要なのは当然だよね。

むしろ、本人がアレコレしなくていいのは凄く配慮してくれてる筈だ。



風魔さんの出国手続きが終わるまで、のんびりしていると、30分程度で出国手続きが終わってパスポートが帰ってきた。

向こうからしたら唐突な話だったのにだいぶ早かった。


出国手続きが終わったので、日本に帰って経験値ダンジョンの隣にあるSCSFの本部予定地に向かう。

この後直ぐに拵を作ってくれた職人の所に行く予定なので、クラリスさん用に買った車を風魔さんに運転してもらっている。


「先ずはスキルの書ですね。E国からの要請で俺を派遣した日本への報酬ですね」


俺の報酬は日本からしっかり貰えるので問題ない。

別に絶対欲しいと思うようなスキルも無かったし。


「しっかりと受け取ったよ。それにしても転移魔法のスキルの書は誰が使うのか荒れるだろうなー」


河村さんの目からハイライトが消える。


「そう言えば、冒険者ライセンスの発行はもう始まっているんでしたっけ?」


ダンジョンの一般開放と同じ日に冒険者登録を始めるとなると確実に混乱するだろうからな。


冒険者登録のみ既に開始されている。


冒険者ライセンスには運転免許証みたいに

個人情報の入っているICチップが組み込まれていて、ダンジョン入口に設置される機械に読み込ませて、誰がどのダンジョンに挑戦しているか分かるようになっている


ダンジョンから出てきた時も機械に読み込ませてダンジョンから出てきましたと記録を残すことになる。


どうなるか分からないけど。犯罪の抑止になったりするんじゃないかな?


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読んでいただき有難うございます。

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