第206話

「想像以上に鉱石が見つからないな」


ダンジョン内に存在する魔鋼鉱石が露出していると言う、洞窟の中に入ってそれなりの時間歩いているけど、未だに露出している魔鋼鉱石を発見することが出来ない。

魔鋼の含有率が低くて露出していても見分けがつかないのかもと思って鑑定モノクルLv2を常時鑑定モードで壁を見て歩いているんだけど、魔鋼と言う情報は一度も出てこない。


常時鑑定モードは、鑑定モノクル越しに目視した物をなんでも自動で鑑定して結果を知らせてくれるモードだ。


何でもかんでも鑑定しちゃうので鬱陶しいし、魔石の消費がマッハなので使う場面は少ないけど。

こう言う時には役に経つモードだ。


後は何処にあるか分からない罠とかを探す時にも使える。


気づかなくても罠が自然に目視されたら、罠の情報が手に入るから、そこに罠が有ると気づくことが出来る。


目視しないと情報が手に入ることは無いので完全に信用するのはやめた方が良いと思うけど。

わざわざレベルが存在することから、レベルの低い鑑定モノクルには反応しない罠とかも存在しそうだし。



「それなりレアな鉱石な訳ですし。仕方ないんじゃないですか?」


それもそうか。闘技場でそこそこ手に入るけど。それは俺が自分の牙とかをリソースとして使用しているからであって、そうザクザク手に入る物じゃないのか。


もしくはリソースの節約のために魔鋼鉱石の埋蔵量を低めに設定しているかだな。


リソースは何もしなくても溜まることは溜まるけど。


ダンジョンの中に入って来た侵入者が垂れ流す魔力を吸収したり。

物を吸収したりして、リソースに変換しないとそんなに量を確保する事は出来ないという話だった。


ここで言う垂れ流す魔力と言うのは、魔力を持つ生き物は自身が体内に保有できる魔力量に達しても、体内で魔力は作られ続ける。

そう言った余剰魔力は体内に留まらず体外へと排出される。


ダンジョンはその魔力を吸収していると言う事だ。


因みに、ダンジョン内以外に体外に排出された魔力は地球が吸収しているらしい。

そう考えると、地球も巨大なダンジョン的な存在と捉える事ができる。


超ピンポイントでそこしか揺れない地震とか、新たなダンジョンの作成。レベル、スキルシステムの管理。

それを生き物から排出される余剰魔力を吸収、リソースに変換。

そのリソースを消費して行っている様だからね。


「ねぇねぇ、映司にぃあそこの壁、所々うっすら紫色の部分があるよ」


考え事をしながら歩いていると、彩夏が普通の壁とは違う部分を見つけた様だ。


確かに所々薄い紫色の部分がある。

と言っても、米粒ぐらいのサイズで、パッと見た程度なら普通に見逃しちゃうような違いだ。


「魔鋼鉱脈で間違い無いみたい。その薄い紫色の部分が魔鋼だって」


製錬してからじゃないと持ち帰りが大変そうと言うか無駄な部分が多くなって非効率だな。


「取り敢えず、ここらの壁を砕いて外に運び出して簡単に製錬してから持って帰りますか」


取り敢えず、魔鋼から不純物を取り除く精錬はしっかりとした設備が有るところでやって貰うとして、ここで鉱石から金属を取り出す製錬はしていった方が多くの魔鋼を取り除く事が出来るだろう。


と言っても、俺が〈憤怒の王〉を使って魔鋼鉱石の温度を直接上昇させて岩と金属を分離させるだけの超適当製錬だけど。

この洞窟の壁は普通の岩みたいだから、それで分離できるはず。

基本は魔鋼はトレント系の魔物から作られた薪でおこした炎や炭で熱さないと、液体に状に出来ないし加工できるように柔らかくすることも出来ないらしいからな。

と言ってもあまりにトレントから作った炭や薪を使わなくても、高い温度で熱すると液体にならず。蒸発してしまう様なので、製錬する時に温度を上げすぎないように注意は必要だ。


そんな性質を持っているので、ここで製錬できると思った訳だ。


「それが出来るなら、そうするのがいいと思うけど。そもそも、どうやって採掘するつもりなの?ツルハシなんて持ってきてないでしょ?」


「そんなの殴れば良いでしょ?殴って崩れた部分をマジックバッグで洞窟の外に運んで、製錬。これで行けると思ったんだけど……」


全員にジト目で見られてしまったので、気づかない振りをして、肩をグルグル回しながら壁に向かうと俺以外が焦って壁から離れた。


力を入れすぎると、関係ないところまで破壊してしまうので、程々に力を抑えて壁を殴る。


「ちょっと力を入れすぎだったかな。若干関係ないところまで崩れてしまったけど。このぐらいだったら誤差の範囲だろう」


「脳筋すぎるにゃ……」


脳筋でも良いじゃない。早いんだから。


砕けた部分をマジックバッグに収納して、洞窟から引き上げて、邪魔が入らなそうな開けた場所に移動する。


「しっかり成功した。持ち帰る不要な部分が減ったね」


薄紫色の金属の粒を拾い集める。

俺以外がやると、火傷じゃすまないので他のみんなは引き続き見るだけだ。


手に入った魔鋼は5kg程だ。こっから不純物を取り除く必要も有るだろうと考えると、かなり少ないと思ってしまう。

50kgぐらいの魔鋼鉱石を製錬して5kgの魔鋼が手に入る。

悪くは無いのか?金鉱脈のドキュメンタリーとか見てると滅茶苦茶でかいダンプカー満杯でも数gの金しか取れないとかやってた気がするし。

金と比べるのは違うかもしれないけど。

そう考えると十分多い気がしてきた。


まぁ、俺は欲しかったら闘技場で手に入れるけど。



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読んでいただき有難う御座います。

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