第201話
「チッ」
舌打ちをして赤髪の男は店から出て行こうとするがドアが開かない。
「まぁまぁ、ホムンクルスってバレた程度で。そうかっかする事ないじゃない」
「ドロテアがこんな素性も分からない男に話をするからこんな事になっているんだろう」
当然っちゃ当然だけどドアを開けないようにしたのはこの店の魔女ドロテアの仕業だった。
「漫画みたいなホムンクルスも存在するって話しただけで、貴方の事まで話した訳じゃ無いわよ。新藤が自力で見抜いただけよ。新藤コイツはそこまで悪いやつじゃ無いわ。ホムンクルスを作るのに、一般人をさらったりしないし」
そう言うやばいやつもいるのかよ。
「分かった。他人の店を汚すのもアレだしな。そもそも、あっちが敵対してこないなら俺は戦うつもりは無いし」
冷静になって考えたら、残念猫の存在を知ったら何をするか分からないって理由で消そうとするのはヤバい思考だったな。
反省反省……
「と言うか。クロウも腕が鈍りすぎじゃない?特に隠蔽していない新藤のことを龍って看破出来ないなんて」
「龍と言うかドラゴニアンだけどな」
一応、龍になれる人種であって龍とはちょっと違うんだよな。
ほとんど変わらないし、龍って自分でも言っちゃってるけど。
「どっちも大して変わらないでしょ?」
「実際、俺も普通に龍だって言ってるし、まぁ、そうなんだけどね」
「まぁ、そういう訳で、龍の前にのこのこ現れた貴方の責任って事。龍の目を欺けるわけ無いでしょ?」
「ぐぬぬぅ」
「凡そ、ホムンクルスの細胞劣化を防ぐための薬液の材料を買いに来たんでしょ?
今回はちょっとサービスして上げるから早く下に行くわよ。あぁ、新藤からローブに使う抜け殻を預かって無かったわね」
そう言えば渡すのは注文する時って話だったから、まだ渡してなかったな。
「これぐらい有ればローブ1着分は余裕でしょ。後、ボタン用の牙」
「確かに受け取ったわ。完成は5日後になるから5日後に、またお店に来てくれる?」
そんなすぐに作れるものなのか?まぁ、作れるって言うんだから作れるんだろうけど。
「それじゃ、5日後にまた来ます」
ドロテアと赤髪の男が下の階に降りて行くと、奥の部屋からソフィアと彩夏が出てきた。
「やっぱり映司にぃって持ってるよね。あの話をして直ぐにホムンクルスを自分の体として使ってくる人物と遭遇するなんて」
確かに、その通りではあるんだよな……
俺が動く度になにか面倒事に巻き込まれるんだよな。
「まぁ、仕方ないんじゃない?世界中どこでも混乱しているさいちゅうだし」
確かにレベル、スキルシステムが導入されてから。
元からの悪人は勿論、自分の力に酔って犯罪行為に手を染める人が沢山いるからな。
何処に行っても面倒事が起きてるようなものだし。
俺の悪運が凄いんじゃなくて、何処でも騒ぎが起きていると言うことだろう。
「絶対それだけじゃないと思うけど……」
「トイレに行ってポーションを飲む余裕が出来たから魔力を回復させて風魔さんと残念猫を迎えに行こう。さっきの赤髪が地下から帰って来ちゃうかもしれないし。今顔を合わせたらちょっと気まずいでしょ?」
この話は続けると俺が不利になる気がするので途中でぶった斬る。
「まぁ、確かに」
また魔力回復ポーションをガブ飲みして、魔力を回復させてワープホールを作り出す。
「アレ?風魔さんと残念猫がいない。魔物を狩りに行ってるのかな?」
アトランティスに帰って来たけど。周辺に風魔さんと残念猫が見当たらない。
「飛んで探せば直ぐに見つかるでしょ」
彩夏は自分で飛べるし、俺がソフィアを抱えて飛べば良いだけだし、それが一番はやいか。
飛ぶのに態々龍の姿になる必要も無いので、人間状態でソフィアをお姫様抱っこして飛び上がる。
人間の姿で飛ぶと龍の姿の時より魔力を消費するけど。気になる程、消費が増える訳じゃ無いしな。
「良いな〜私も映司にぃにお姫様抱っこして欲しい」
「いやいや、お姫様抱っこは将来好きになった男にして貰いなよ」
兄妹でするものじゃ無いだろう。
「むぅ。お姫様抱っこぐらいなら良いじゃん。それに映司にぃよりいい男なんて会えると思わないし」
いや、俺より強い男には会えないかも知れないけど。俺よりいい男なんてそこら中にうじゃうじゃいるだろう。
俺はどちらかと言えば善人かクズかで言えば俺はクズ側だし。
「映司はもうちょっと自信を持っても良いと思うのだけど……。それより今は1人と1匹を探すのが先ね。空から見渡した限りここら辺には居ないようだけど」
そうだね。人と猫は見当たらないな。
残念猫がいるから魔物に殺られたって事は無いはずだし。
風魔さんたちと別れてから1時間とちょっとしかたって無いし、そこまで離れたところに行ってないと思うんだけど。
「ウィーがあっちの方から、あの猫魔力を感じるって」
あっちは確か湖がある方向だったかな。
取り敢えず、ウィーがそう言うんなら間違いないと思うし、そっちに向かうか。
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読んでいただき有難うございます。
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