第198話
「それにしても、残念猫はどうしてそんなに魔女を警戒しているの?理由を説明して欲しいんだけど」
知り合いの魔女にクローンアニマルについて話を聞きに行ってみようと言ったら、クローンアニマルである残念猫が物凄い取り乱し始めたので、その理由を説明して欲しいと落ち着かせながら話しかける。
「元々、クローンアニマルは魔女や魔法使いと言った連中を殲滅する為に狂った人間が生み出した存在にゃ。魔法に耐性を持った魔物を複数掛け合わせて創り出されたクローンアニマルは魔女や魔法使い達に大きな被害を出したにゃ。とは言え、クローンアニマルは寿命が滅茶苦茶短いと言う致命的な欠点があったにゃ。あの時代にはスキルもなければ魔物の素材が手に入るダンジョンなんて言う存在もなかったにゃ。結局、クローンアニマルを生み出した狂った連中は殺されてクローンアニマルの製造方法は闇に葬られたにゃ。そんな魔女にとって天敵とも言える存在のクローンアニマルが生きていたなんて事が魔女にバレたら、一生命を狙われる事になるにゃ」
成程。元々、魔女や魔法使いの敵として生み出された存在だったのか。
それなら、魔女に直接会うのは不味いと言うのも納得だ。
それにしても、クローンアニマルは寿命が凄く短いと説明する。数百年生きてるクローンアニマルって存在が矛盾しすぎてない?
この残念猫が特別製って事なのか?
残念猫が嘘ついて無ければ、ただのクローンアニマルじゃないってのは確かだな。
「そういう事なら、あの魔女と関係が悪くなるのも不味いし。風魔さんと残念猫は取り敢えず待機で」
あの魔女とは今後とも仲良くして、色々取引したいからな。
取り敢えず、クローンアニマルは連れていかずに俺たちだけで話を聞きに行こう。
次いでにローブの注文も出来るし。
「そうそう、残念猫の存在を現状多くの人に知られるのは面倒なので、ここで待っててくださいね」
人の侵入を拒んでいるこの霧だって残念猫が作り出したものだろうし、強さを正確に測る事が出来ない人からしても、戦力として優秀と言うことは分かるだろう。
残念猫の争奪戦とか始まっちゃたら面倒臭いし。
このまま人にバレないように大人しくしといて貰おう。
先に進めない不思議な霧が発生したと話題になってるかも知れないけど。
ここまで到達する事は出来ないだろうし、残念猫の存在がバレる事はない筈だ。
と言うかここまで派手にやったら、スキルが存在しなかった時代に魔法を使っていた、魔女とか魔法使いに補足されちゃうんじゃないの?
「電話越しに調子乗った相手が龍だって聞いて焦ってやらかしたにゃ。想像通り、異変に気づいた魔女やら魔法使いが霧の中に侵入してきてるにゃ」
現在進行形でピンチじゃん……
力でどうにかしていいならどうとでもなるけど。
今、迫ってきてる連中は犯罪を起こした訳じゃ無いし、武力で撃退する訳にはいかない。
下手したら俺が犯罪者になっちゃう可能性もある。
「しゃーないな。おい、残念猫。今からそれなりに危険なところに繋がるワープホールを作り出すから、何も考えずにワープホールの中に飛び込め」
そう言ってアトランティスに続くワープホールを作り出した。
実家と交差点ダンジョンとか桃源郷とかもっと安全な行先はあったけど。
そこに無条件で連れて行けるほど、俺はまだ残念猫の事を信用できてない。
もし、残念猫が暴れた場合迷惑をかける事になっちゃうからね。主にリーリンさんに。
その点、アルカディアなら誰かに迷惑をかける事も無いだろう。
三ツ目族の村が有る場所もそれなりに離れた場所だ。
移動を始めてすぐにたどり着ける場所では無い。
魔物に襲われたら風魔さんは即死しかねないけど。
残念猫が戦えば問題ない。
「何処かは言えませんけど。此処は海中に入口があるダンジョンの中です。出現する魔物はそれなりに強いので、残念猫にしっかり守って貰ってください。後、ヤバそうな天使が出てきたら。取り敢えずお土産にコレを渡しといてください」
そう言って、風魔さんに龍酒を渡す。
因みにこの龍酒は俺の魔力を込めて作った物じゃなくて、水神龍の須佐之男の魔力を込めて作ったものだ。
龍の格によって美味しさが全然違うらしいので、水神龍の作った龍酒となれば最高級の龍酒だ。
ここのダンジョンマスターであるルシファーも、コレが有れば少し騒がしくしてしまう事を許してくれるんじゃ無いだろうか?
リーリンさん、須佐之男レベルのダンジョンマスターの筈なので、何をしてくるか全く読めないのがちょっと怖いんだよね。
自分で入口の場所を決めた訳じゃ無いだろうけど。
分かりにくい海底に入口が有るダンジョンのダンジョンマスターだからな。
人が入ってくるのを嫌っている可能性もあるし。
そうだったら既に襲われてるだろうし、ダンジョンマスターが直接襲ってくるって事はないだろう。
此処に繋がるワープホールも壊したし、これで、残念猫の存在がバレる事は無いだろう。
「今更にゃけど。私は残念猫じゃないにゃ」
ほんと今更だな。反論してこないから、てっきり残念猫って名前で良いのかと……
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