第196話
「と言う訳で、アルカディアの本拠地は制圧完了したので、日本から派遣されている自分たちの仕事は終わりでいいようです」
風魔さんに電話をかけて現状の説明をする。
「成程。それなら私も直ぐにそちらへ帰らせて頂きますと行きたいところあのですが……少々厄介な事になっていまして」
厄介な事?そう言えば、さっきから電話越しににゃーにゃー煩い。これが厄介な事?
「捨て猫に懐かれたとかですか?」
確かにこの宮殿はペット禁止だろうし、ここに帰ってくる為に捨て猫を見捨てるのも……って事かな。
「誰が捨て猫にゃ!」
「はぁ?ネコガシャベッタ?」
普通なら、誰かが語尾ににゃってつけて喋っているだけって思うんだろうけど。
風魔さんが態々面倒臭い事になっていまして……と言う状況だって考えるとネコが喋っている可能性もあるんじゃと思ってしまう。
取り敢えず、実際に見て確認するのが1番早いな。
ダンジョンから出てきた猫型魔物の異常種、猫の姿をした悪魔とか色々可能性は考えられるし、取り敢えず人間に対して害のある存在なのか確認しておく必要がある。
「取り敢えず、風魔さんの現在地を教えてください。その猫がどんな存在なのか、直接見極める事にします」
「なに生意気な事言ってるにゃ、早くこっち来るにゃ。どちらが上かしっかり教えこんでやるにゃ」
随分、好戦的な猫だな。
「こんな感じで、不思議な猫に付きまとわれてしまいまして。振り切ろうにも『リアル忍者だにゃ!』とずっと付きまとって来るんです。現在地にピンを立てた地図アプリのスクショを送りますのですみませんが、助けに来てください」
その発言で一気に残念臭が凄くなったな。
とりあえず普通の生物じゃ無いことは確かだし。何されても対処出来るように、気は抜かないようにしよう。
「って訳で、今から喋る猫に会いに行くことになりました。一緒に来る人!」
「「はい!」」
部屋にいた、ソフィアと彩夏2人ともついて来る気満々の様だ。
その後、風魔さんから送られてきた地図アプリのスクショをソフィアに見せて、その場所まで案内して貰った。
「かなり人の多いハイキングコースだったのに、霧が出てきたと思ったらパッタリ人がいなくなっちゃった。この霧って何か変な効果があったりするのかな?どう思う、映司にぃ」
「さぁ?霧に魔力が込められてるから、普通の霧じゃ無いことは確かだけど、効果までは分からないな」
「霧の中に入って来た人を惑わせて来た道を戻らせる類の効果があるってウィーが言ってる。特に害がある訳じゃ無いって」
普通は霧に入る前に、この霧怪しくね?って警戒するべきだよな。
気を引き締めてとか言ってたのに無警戒すぎだな。
まぁ、ヤバい効果の霧だったら入る前にウィーが止めてくれるだろうから、大した害は無いんだろうなと判断して霧の中に無警戒で入ったんだけど。
「それじゃ、俺達も先に進んでいるつもりが来た道を戻っている途中だったり?」
龍の姿になって翼を羽ばたかせて霧をどこかに吹き飛ばしちゃえば問題解決、先に進めるようになるかな。
「龍の目を欺けるほどの効果は無いから、映司ならこのままでも進めるって」
それじゃ、しっかり先に進めてはいるのか。
考えようによってはこの霧が有れば人が来れなくなる訳だし、喋る猫と物理でオハナシしなくちゃいけなくなった場合騒ぎにならなくて済むし。
霧はそのままにしておこう。
オハナシにならなくてもしゃべる猫を見られただけで騒ぎになるのは確実だし。
ーーー
「フシャー!!」
霧の中を歩いて進んでいると霧が徐々に薄くなり霧が完全に無くなった場所に辿り着くと、風魔さんと尻尾をピンと立てて全身の毛を逆立ててこちらを威嚇している猫が待っていた。
「それで、こいつが例の残念猫って事で良いですか?」
「そうなんですけど……映司さんが霧に入ってきてからずっとこんな感じで」
「戦いたいなら、戦うけど。そうじゃないなら威嚇するのを直ぐに止めろ」
そう言って少し威嚇すると残念猫は風魔さんの後ろに全速力で逃げて行った。
「龍がいきなり現れたら誰だってこうなるにゃ。電話越しで調子に乗ったのは悪かったにゃ。命だけは助けて欲しいにゃ」
風魔さんの後ろから謝られても誠意が伝わって来ないけど。
ドラゴニアンになってから、動物からは全力で避けられるし。
あの残念猫はあれで頑張って誤っているのかも知れない。
それにしても、あの残念猫は何なんだろう。
正体を確認するために鑑定モノクルLv2を使って正体を確認してみる。
「クローンアニマルか」
「むぅ、レディの情報を勝手に見るのはどうかと思うのにゃ」
どうやら、この猫は魔物の遺伝子から人工的に創造された魔物のようだ。
見た目は猫だけど色々な魔物の遺伝子を掛け合わせて作られているようで、残念猫の正体はキメラと言うわけだ。
「そう考えると人間に恨みを持っていそうなものだけど……」
色々掛け合わされて人間に作られた存在な訳だし。
作った人間が残念猫をどう扱ったによっては人間に対してかなりの恨みを持っていても可笑しくない。
「これでも数百年は生きてるから人間に対しての恨みなんて消えてしまったにゃ。怒り続けるって結構疲れるものにゃ」
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