第192話

「なっ侵━━━━━」


潜水艦の中に転移すると目の前に人がいたので、とりあえず腹パンして炎で作り出した鎖でグルグル巻にしておく。


「これで取り敢えず。俺たちの侵入がバレるのを阻止できたかな」


「今は気を失っているけど。目を覚ましてスキルを使われたら厄介じゃない?何で今回は生かしたまま捕まえてるの?」


確かに殺っちゃった方が反撃もされないし安全を考えたらそっちの方が良いけど。

ここに居る連中を全員倒せばアルカディアは全滅するって訳じゃ無いからな。

情報源は1人でも多い方が良いだろう。

まぁ、日本政府へのお土産として空白の書を使ってコイツらから有用そうなスキルを根こそぎ貰って行こうと思ってるからってのも有るけど。


「確かに殴って気絶させただけだど、何時目を覚ますか分からないからコレを使う」


そう言ってマジックバッグから香水瓶を取り出す。


「何それ?」


「魔女から買った、テレビとか映画のクロロホルムばりの即効性のある睡眠薬」


実際のクロロホルムは染み込ませた布で口元を塞いで数秒で意識を落とせる、なんて品物じゃ無いけど。

魔女の作った睡眠薬は顔に向かって、ひと吹きするだけで一瞬で眠ってしまう。

しかも、最低でも5時間は目が覚めない品物だ。


やっぱり、魔女が作った薬はおっかない物ばっかりだ。


「と言う訳で、コイツの顔にコレをひと吹きしとけば、コイツがスキルを使って暴れ出す事を気にする必要は無い」


「そう、なら安心ね。その薬を自分たちに使われる可能性を考えると安心出来ないけど」


耐性が有れば効きづらくなる見たいだから、全く対策出来ない訳じゃない見たいだし何とかなるだろう。


「まぁ、今回はこれがあるおかげで楽が出来るんだから良いじゃん」


高速で近づいて顔に向かって吹き掛けてやるだけで無力化出来るんだから。


「映司なら一瞬で終わるのは何をしたって変わらないでしょう」


それはそう。と言っても、殺さず気絶させて無力化って結構難しい。

今回、腹パン一発で気絶してくれたのだってまぐれだし。

丁度、気絶するぐらいの力で攻撃するのは何気に技術が必要だ。

俺の場合、相当力を抜いて殴らないと内蔵と骨がグチャグチャになっちゃうし。

少しでも力を入れて殴ろうものなら人体程度余裕で貫通しちゃうしね。


なので、致命傷を与えず。相手を気絶させる程度の攻撃と相当手加減して殴っている。


この微妙な力加減が大変難しい。人と握手する時や日常生活の時の加減は完璧に出来るんだけど。


やっぱり、ある程度ダメージを与えるってところが難しい。


「兎に角、ワープホールを開いて俺たちは先に進むとするか」


多分、俺がワープホールを開けるのを待ってるだろうし。


理外を構えて空間を斬り裂き、ワープホールを開く。


予想通り、向こう側にはエリックさんを先頭に金属鎧を装備した騎士が集まっていた。


「やる気満々だな」


エリックさん達の仕事が残るか分からないけどね。


E国の面子を最低限保たせる為に、この作戦に参加してくれるだけで、充分な仕事をしてくれたと俺的には思ってるけど。

エリックさんたち的には複雑な気分になるだろうな。


潜水艦の制圧が終わった後の面倒ごとはE国に丸投げするつもりだし、花を持たせて上げた方が良いよな。


……ダンジョンの制圧を担当してもらうか。

現在進行形でダンジョンの中に入っているアルカディアの構成員もいるだろうし、そう言った連中の捕縛もしくは殺害はエリックさんたちに任せるとしよう。


「それにしても、呆気ないな。もうちょっと骨のある敵が出てきてくれても良いと思うんだけど」


考え事をしながらでも、簡単に制圧出来てしまう敵しか出てこない。


「映司と戦闘が出来るようなレベルの相手が出てきたら、それこそ大問題よ」


「それはそうなんだけどね。かと言って、今は敵を見つけたらダッシュで近づいて、顔に睡眠薬ぶっかけてるだけだよ?

この程度、一度ぐらい躱したり反撃してきたりする敵が1人ぐらい出てきても良いんじゃないって事」


自分たちで独占しているダンジョンでレベル上げもしているのに、呆気なさすぎる。


「骨のある相手と戦いたいなら、これが終わったらリーリンにボコボコにしてもらえば良いでしょ。もう操舵室何だから集中しないさい」


それもそうか。

気を引き締め直して、操舵室のドアを蹴破って中に侵入する。


「あぁ、成程。アルカディアのリーダーは悪魔だったのか。悪魔ならマーリンの存在を知っていて、悪魔対策をしていても可笑しくない」


操舵室内には20人程度の人がいたが、その内の1人が悪魔だった。

上手く人に擬態している様だが、龍の目は誤魔化せない。

擬態していると言うより、乗り移ってると言った方が正しいか?

取り敢えず、悪魔に取り憑かれてる人物を除き、睡眠薬で眠らせた後。

悪魔に取り憑かれた奴は聖炎で火炙りにする。人間はここでは殺すつもりは無いので、火炙りと言っても、悪魔にだけしかダメージは入ってない。


人間の声帯でそんな悲鳴って出せるの?ってレベルのおぞましい悲鳴が操舵室に響き渡る。


浄化されないで、悲鳴を上げてるって事は俺が思っていたより、力を持った悪魔だった様だ。

聖炎の火力を上げる事でも倒せるだろうけど。時間を与えると何をしでかすか分からないので、理外を使って手早く済ませよう。


理外を使って悪魔だけを斬り裂く。


悪魔に取り憑かれていた人間が糸を切られた操り人形みたいにその場に崩れ落ちた。


取り敢えずは制圧完了かな。



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読んでいただきありがとうございます。

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