第187話
「ちょっと話が変わるんだけどさ、ダンジョンで手に入れた魔力を貯めておくことが出来る指輪を受け取って欲しいなって……」
「指輪をくれるの!?」
ソフィアはそう言って嬉しそうに左手を差し出して来た。
コレで左手の薬指以外にはめたら俺消されるよね?
婚約指輪として渡すなら効果のついた魔導具じゃなくて、宝石を豪華に使ったものを作った方が良いのかも知れないけど、今更それを言える雰囲気じゃないし。
この指輪、魔力を貯める事ができる指輪だからマナリングと呼ぼうか。
マナリングはミスリルで出来たリングに、ブリリアントカットされた1ct程度の透明な宝石が1つ埋め込まれているだけのシンプルな指輪だからな。
王族に渡す婚約指輪としてはちょっと派手さにかける気がする。
と言うか、指輪に関しては魔力体生成装置を渡してるから2つ目か。
魔力体生成装置に関しては真っ黒なリングなので、流石に左手の薬指にはつけてない見たいだけど。
アレに比べればまだマシだな。
「コレの時は、左手の薬指につけて質問された時に効果を説明しないと、納得してくれないだろうし。効果を説明しちゃったらアドバンテージが無くなっちゃうから別の指につけてたけど。それなら問題ないでしょ。リングがミスリルで出来てるってだけで黙るでしょうし」
魔力体生成装置は自分そっくりの分身を魔力で作り出して、操縦できるアイテムだ。
魔力体を操縦している間、本体は上下左右真っ白で何も無い空間に移動させられて、魂だけ魔力体に乗り移って、本体と同じように動かすことが出来る。
魔力体生成装置のレベルが低いとBPが半分になるとかデメリットも有るけど。
魔力体の状態でなら致命傷を受けても本体は無傷なので、暗殺等の不意打ち対策にすごい役立つ。
魂を直接攻撃出来る相手とか、本体が退避している真っ白な空間に行くことが出来る相手には無力だけど。
そんな凄い指輪でも、見た目は黒いプラスチックで作られた超安物の指輪だからな。
効果を説明したら、そんな見た目でも黙るだろうけど。
効果を知られて対処法を用意されたら面倒だ。
と言っても、ソフィアが左手の薬指にはめなかった一番の理由は、俺にはめて欲しかったからじゃないかな?
自分で言うのはあれだけど。
魔力体生成装置の時は 、はめてあげるんじゃなくて、手渡しちゃったし。
あんまり待たせるのも悪いので、左手の薬指にマナリングをはめてあげる。
さっきから電話がなっているけど、今いい所なのでスマホの電源を落とす。
河村さんからの電話だったけど、一生で一度しかない重要なイベントの途中なので許して欲しい。
と言うか、その方が河村さんの為にもなる。
ソフィアはマナリングに夢中過ぎて電話に気づいてないみたいだけど。
ソフィアが着信に気づいてたら河村さんの命はなかったかも知れない。
確実に俺がお願いした件で、電話をして来てるだろうから、ホントに申し訳無いなって思うんだけど……
「魔力を流すと透明な宝石がどんどん青色になっていくのね。濃さによってどれぐらいの魔力が貯められてるのか視覚的に確認できるのは便利ね」
込める魔力に含まれる属性によって色は変わるらしい。
ソフィアは氷魔法が使えるし、水の精霊であるウィーと契約しているし。
魔力が無属性から水や氷属性寄りに変わってきてるんだろう。
リーリンさんが言うには、属性魔法を使っているとその属性に自分の魔力が寄っていくらしい。
すると、その属性魔法の威力が上がったり消費魔力が減ったりするようだ。
下手に複数の属性の魔法が使えるようになるより1つの属性を使い続けた方が魔法の威力は高くなると言うことみたい。
例えばだけど、水属性に寄った魔力で火属性の魔法を使うと通常より、威力が低くなっちゃうし、消費魔力が上がってしまう様だ。
だから、どの属性も均等に使って、どの属性もメリット、デメリットどちらも発生しないように調整するのも1つの手段だともリーリンさんは言っていた。
俺とかは、ドラゴニアンになって魔力が自分の体で生成されるようになった瞬間から、純度100%火属性の魔力なので、他の属性を使うスキルを俺が使うと通常より効果が低くなるし、魔力の消費が増えてしまう。
水属性に関しては効果半減、魔力の消費は倍になってしまう。
だからと言って困ることは無いけど。
寧ろこのまま、火属性に特化した先に有るのが炎神竜だろうし。
属性相性悪くとも戦いようはいくらでもある。
なんなら属性相性を無視する炎だって作り出せるし。脳死で理外を使うだけでも勝てる。
リーリンさんとか須佐之男レベルの存在と戦うってなったらそうはいかないけど、あのレベルとの戦闘は避けるのが正解だと思ってる。
「そう言えば、電話出なくて良いの?多分だけど、私がE国に行けるかどうかの件でしょ?それに今回に関しては先に機内モードにでもしてなかったこっちの落ち度でもあるし」
確かに……
いやほんと、無計画な男で申し訳ありません。
ソフィアからのお許しもでたので、スマホの電源を入れて河村さんに折り返しの電話をかけた。
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