第182話

「ただいま」


「お帰りなさい。それはそうと映司、ちゃんと玄関から帰ってこないとダメでしょ?」


「あぁうんそうだね。ごめんなさい。今度から気をつけます」


怒られるところそこ?と思わなくもないけど、取り敢えず謝る。


「それにしても、転移で帰ってくることは出来ないけど、E国に転移で移動する事は出来ないから転移を使って帰ってくるのは、やる事が終わってからって言ってなかった?映司以外帰ってきていないって事は全部終わって帰ってきたという訳では無いんだろう?もしかしてE国で新しい転移アイテムを手に入れたのかい?それならお父さんに鑑定させて欲しいんだけど」


父さんこんなにアイテムを鑑定したがる性格だったっけ?


SCSFから迷宮省に送られてくるアイテムを鑑定する仕事をしてるのは知ってるけど。

知らないアイテムがあれば取り敢えず鑑定したがる様な性格では無かったと思うんだけど。


仕事を続けてアイテムを鑑定するのが楽しくなったって可能性は充分考えられるけど、俺がE国に出国して、まだ数日しかたってない。


数日でそこまで性格変わる?


レアアイテムを鑑定できるかもってテンションが上がってるだけか。


「良いけど多分鑑定できないと思うよ」


一度鑑定させないと父が大人しくならなそうなので、理外を渡す。


「ホントに鑑定できない……結果が表示されないと言うより鑑定結果が理外って言う名前以外黒塗りで読むことが出来ない」


「満足した?大事な物だから満足したら返してね」


「ここまで何も表示されないアイテムは初めてだよ。映司はしっかり把握出来てるの?酷いデメリットを持ったアイテムも存在するから、能力の把握が出来てないアイテムを使うのは危険だよ?」


やっぱりそう言ったアイテムを有るんだね。

俺はそう言ったアイテム見た事なかったけど。


「それ、俺が作ったものだからデメリットとかは存在しないから大丈夫だよ。ちょっと想像以上の物が出来上がった事は認めるけど」


オベロン王いわく神器らしいからね理外は。


「これを自作?流石、龍王様だね。転移アイテムを自作出来るとか。知れ渡ったら絶対騒ぎになるから、あまり言いふらしちゃダメだよ?」


「言いふらすつもりなんて、これっぽっちもないよ。今だって、言わなきゃ理外を返してくれないと思ったから、説明しただけだし。それに同じものは作れないと思うし」


理外を作った時みたいに魔力回復ポーションをひたすらがぶ飲みして、理外と全く同じものを作ろうとしても上手くいって、ミョルニル・レプリカの様な下位互換が出来るだけと

何故か分かる。


神器をホイホイ量産されたら、こっちとしてもたまったもんじゃないし。むしろ好都合では有るけど。


そもそも、魔力の消費量的に普通の人間じゃ使えないけど。


「そっか。これが量産できるなら作ってもらえれば、通勤が楽になると思ったんだけど」


おい、さっき周りに俺が作った物だとバレないようにしろって忠告したのに。

自分の通勤を楽にするために理外を作らせようとするな。


「作れたとしても、そんな理由で作るのは嫌だ」


「ハイハイ。朝ごはんが冷めちゃうから話をするのは後。映司も食べるんでしょ?」


「うん」


「それなら、椅子に座って大人しく待ってなさい……いや、フリーズしているソフィアちゃんを正気に戻しておきなさい」


そう言って、母はキッチンに向かった。


そう言えば、ソフィアはずっと箸を持った姿勢で固まったまんまだった。


「ソフィア〜」


取り敢えず、ソフィアの顔の前で手を振ってみたら精霊のウィーに手をガシッと掴まれた。


「何?俺もクラリスもE国に行ってしまったのが想像以上に寂しくて落ち込んでたけど。いきなり帰ってきて脳のキャパを超えてしまった?」


ウィーからそんな感じのニュアンスの説明を念話で伝えられた。


「ウィー。後でしっかり話をしましょうね?」


再起動したソフィアが目が全く笑っていない笑顔で話しかける。


それを聞いてウィーは一目散に逃げていった。


契約している以上ソフィアから逃げる事は出来ないんだし、取り敢えず逃げるんじゃなくて、ごめんなさいすれば良いのに。


「はぁー。おかえり映司」


「ただいまソフィア。まぁ、その俺もソフィアに会えないのが寂しくて帰ってきたから。お互い様って事で」


「ホント?今さっきクラリスから、転移を使ってまで、自室に女を連れ込んでたって、ショートメッセージが届いてたんだけど?」


なんて事してくれるんだ……


「それは、E国の戦力を上昇させるのに役立ちそうだったから、エリックさんに紹介するために部屋に連れてっただけだよ。その女性が魔女で大勢に顔バレしたくないって言うから。正面から堂々じゃなくて、そう言う方法を使っただけであって……」


「別に。部屋に女を連れ込んでるのにクラリスを呼んでる時点で、別に映司の事を疑っているわけじゃないわよ。今回はそう言った事にはならなかったから良かったけど。その女が映司の泊まっている部屋に到着した瞬間。大声で叫び出したりしたらどうするつもりだったの?下手したら今頃E国は大騒ぎだったでしょうね?映司、女性には細心の注意を払わないとダメよ?有能なら特に」



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読んで頂きありがとうございました。


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