第180話
「映司様。この女性は?ことと次第によっては、どんな手を使ってでも映司様を殺します」
うん。自分の部屋に転移を使ってまで見知らぬ女性を連れ込んでる……どう考えても俺が悪いのは明らかですね。
「クラリスさん。この人は、そう言うんじゃなくて、観光中に見つけた魔女さんです。エリックさんに紹介出来ればなと。本当はいきなり連れてくる予定じゃ無かったんですけど。ちょっと試しに使った転移のせいで、連れて来ることになっちゃいまして……」
「魔女ですか?」
「そう、色んな薬とか。空飛ぶほうきとか作ったり出来る本物の魔女さん」
マジックバッグから空飛ぶほうきを取り出して、ほうきを床から1m程浮かばせて見せる。
「魔女かどうかはともかく。実際に空飛ぶほうきを作ることが出来る人物と言うのは納得しました。で、彼女をどうするおつもりで?」
「俺は特になにかするつもりは無いよ。俺の抜け殻を加工してローブに仕立てることが出来る見たいだから、それはお願いするつもりだけど。あえて言うなら、E国と魔女さんの仲を取り持つのが今回の俺の目的かな?」
転移で何時でもE国に来ることが出来るようになったけど。
事ある毎に頼られるのは避けたい。
E国の戦力が成長すれば、俺に頼る回数も減るだろう。
この魔女はE国の戦力強化欠かせない存在になるはずだ。
本人だって弱くはないし。
「確かに、映司様の抜け殻を加工できる人材はかなり貴重でしょう。ご自身で囲んでしまおうと考えなかったのですか?」
「E国とは仲良くしたいし、人材を根こそぎ奪っていくつもりは無いからね。囲まなくたって、仕事を依頼することは出来る。それに、魔女さんとは別に鍛冶師をゲットしてるからね。人材確保自体全くしていない訳じゃない」
「鍛冶師ですか?」
「誰にも言わないでね?ドワーフのおっちゃんなんだけど。魔女さんのお店で知り合うことができてね。龍酒を使ってスカウトした」
「魔女にドワーフですか。お二人ともスキルによって種族が変わったという訳ではない方ですよね?リーリン様のように数千年生きてるような存在ということですか?」
「カイゼルは2千歳ぐらいだって言ってたけど。私は300歳程度よ」
想像していたよりは若かったな。
「クラリスさんも気になっていると思うんですけど。俺から質問するね。今から大昔はスキル、レベルシステムが適応されていて、今の時代みたいに多くの人がスキルを使って生活していたけど。300年前と言うと、そのシステムは適応されてなくて、スキルを獲得する事は出来ないし、使うことは出来なかったはずです。魔女さんはどうやって、薬を作ったり、あの空間を作ったりしたんですか?」
この魔女の生きてる時代は、ごく一部の例外を除きスキルを使うことは出来なかった筈だ。
なのに魔女は魔法を使ったり。ポーションを作ったり魔導具を作る事が出来ていた。
その理由はしっかり聞いておきたい。
「スキルがなくても、魔法陣を一から構築して触媒を用意すれば魔法は使えるわよ。魔法に対する適性も必要だけど。逆に言うと、スキルは魔法陣の構築と触媒を用意する必要を無くす物とも言えるわね」
スキルを持っていれば、魔法名を詠唱するだけで魔法を発動させることが出来る。
スキルが無くても、魔法陣を自分で構築して触媒を用意すれば実は使えると……
この情報ってかなりの爆弾だよな。
冷静になって考えれば陰陽術の話が出た時点でその可能性にたどり着くことが出来たな。
陰陽術が栄えた時代だってスキルが存在しない時代だ。
「正直、かなり面倒よ?魔法陣とか魔法の難易度に比例して大きくなるし、複雑になる。空間拡張の魔法陣なんて、私が10年かけて完成させたのよ?触媒の用意も大変だったし。費用で言えば余裕で億単位のお金が溶けたわ」
魔法陣を完成させるのに10年か……
それに触媒を用意するのに億単位の費用が必要。
それが必要無くなるスキルって凄い存在だな。
「教えていただきありがとうございます。スキルを使わないで、魔法を使うのは現実的じゃないって思いました」
「そうでしょうね。じゃなければ、魔法という技術はもっと栄えていたでしょうし」
一部の存在がひっそり使っていたのは魔法を行使するのはコストと時間がかかって現実的じゃないからか。
と言っても、空間を拡張する魔法に関してはそれだけの時間とコストがかかっても有用と判断する人も多いだろうけど。
「彼女をエリック様に引き合せるのは協力させて頂きます。しかし、今日今すぐにと言うのは流石に不可能です」
そりゃそうか。俺がすぐ会えるのが異常な訳だし。
「メイドさんの言う通りね。そしたら今日は帰らせて貰おうかしら」
「それじゃ、お店までに繋がる空間の切れ目を作りますよ?」
「えぇ、お願いできるかしら。ここから誰にも見つからずに帰るにはそれが一番だから」
変な誤解を招かない為にも、魔女が誰かに見つかる訳には行かないからな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
読んでいただきありがとうございました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます