第178話

「そういう事なら、遠慮なく貰っておこう。牙や炎の結晶から溢れる力を見れば、普通の妖精なら邪なことを考えないはずだからね」


普通じゃないやつもいるって言ってるようなもんだけど……


オベロン王、そういう連中を駆逐するいい機会だと思ってそう。


まぁ、利用される分こっちも利用させてもらおう。

ティル・ナ・ノーグと関わりのある人類は現状俺しかいないはずだし。

それだけでもかなり儲ける事が出来るだろう。


そこまでがめつく金を集める気はないけど。

不自由なく暮らせる程度には稼ぎたいよね。

正直、その程度なら直ぐに達成出来る気もする。

基準を何処に設定するかで変わってくる気がする。

そう言えばお金の話で思い出したけど。何か、急激に円の価値が上がってドラゴンショックとか資産家たちは騒いでいるらしい。


と言うのも、スキルを手に入れた犯罪者が暴れたり、異常種がダンジョンから出てきて国が滅茶苦茶になって最悪国が滅びる可能性まである現状、俺がいる日本は滅びることは無いだろう。という考えで、日本円を世界中の資産家が買い漁っているから日本円の価値が急激に上がっているらしい。


国が滅びたら、その国のお金は価値が無くなりただの紙切れやコインになりさがる可能性も有るんだから。

滅びることがなさそうな国のお金に事前に換金しておくことは間違った事じゃない気もするけど。


1ドル50円で取引されてるって見た時はかなり驚いた。


数ヶ月前のニュースで円安が続いて1ドル150円で取引されてるって報道されてたのに……


スキル、レベルシステムで世界中が混乱してるからって円相場変動しすぎでしょ……


そのせいで、大損した一部の連中から無駄に恨まれることになってしまったし。


ほんとに世の中って上手くいかないよね……


「なんか凄い表情になってるけど大丈夫?」


「すいません。嫌なことを思い出して1人で精神的ダメージを受けていました」


「やっぱり新藤も苦労してるんだね。そろそろ妻や臣下達が心配し始める頃だから、ティル・ナ・ノーグに帰らせて貰うよ」


どうやって聞き出そうかなって考えてたけど。

オベロン王に妻がいる事が確定したな。

正面からオベロン王は結婚しているんですか?って聞きづらかったし。


聞かずに良かったらこちらを王妃にお渡し下さいって言って。


王妃なんていないよ?って言われても困るし。


王様なんだから結婚してるだろうって思うけど。住む世界が違うわけだから常識が違う可能性もあるからね。


「そうですか。さっきの牙や結晶に比べたら実用性は下がってしまいますが。不安にさせてしまったお詫びとして、こちらの宝石たちを王妃にお渡し下さい」


「正直、黙って来ちゃったから。どう許してもらおうか悩んでたから。すごい助かる」


今の一言で夫婦間のパワーバランスがはっきりしたな。


「それだけ。オベロン王のことを愛してるということでしょう」


「まぁ、そうなんだけどね。それじゃあ、また今度」


苦笑いを浮かべながらオベロン王はティル・ナ・ノーグに帰って行った。


「オベロン王とよく、あんなにフランクに話ができるわね。全ての妖精の王なのよ?あのお方は」


「神に比べたら全然。言い方悪いけど、オベロン王程度でビビってたら。神の目の前にたったらショック死しちゃうよ?」


確かに王としての威厳と言うか、そう言うのを感じはしたけど。

結局はそのレベル、初めて大江山ダンジョンに入った時に感じた、須佐之男から発せられるオーラに比べれば、可愛いものだ。

正直、攻撃された事によく激高して反撃出来たな。って今でも驚いてるぐらいだ。

相手が死ねと言うなら仕方ない。

そう考えてしまってもおかしくない程のオーラだった。


今考えれば、俺が〈憤怒〉を取得できるように激高させられた。って方が正しい気がする。

他人の感情を操ることなんて、あの場にいた2人なら朝飯前だと思うし。


やっぱり、神ってヤバい存在だな。

どれだけ実力の差があるのか全く分からないし。

……そんな存在が一同に集まる宴会に俺も出席しなくちゃ行けないんだよな。

俺、マジで生きて帰って来れるのかな。


「比べる尺度が可笑しすぎる。生物としての次元が違うでしょ」


魔女さんの言う通りだな。


「お客さん帰った?」


外で空飛ぶほうきで飛んで遊んでいた彩夏がそう言いながら戻ってきた。


遊ぶのに夢中で、気づいてないのかと思ったけど。

あえて戻って来てなかったのか。


「丁度さっき帰っていったよ。空飛ぶほうきで飛ぶのは楽しかった?」


「楽しかった。自分の羽で飛んだ方が早いし小回りも効くから、本当に玩具道具だけど」


「あっそう。まぁ、楽しめたなら良かった」


だいぶ高価な玩具ですね。


「今更、買わないってのは無しよ?」


「あんだけ乗り回した後に、やっぱ買わないとか言わないんで安心してください。飛ぶ手段を持っていない彼女にプレゼントするので」


空飛ぶほうきを含め地下?で買ったもの支払いを終わらせる。

かなり現金を使うことになってしまった。

金策頑張ろう。当然、彩夏にも付き合ってもらう。


「じゃあ、今日はこれで帰りますね」


理外を手に持って、縦に一振すると空間に切れ目が入って切れ目が丸型に広がる。

理外で空間を斬った結果、現れた切れ目の先には俺が泊まっている宮殿の一室が見える。


「流石に無理かな?って思ったけど。案外できるもんだね」


こう言う使い方も出来たら便利だなって思ってたけど、あっさり出来ちゃうものだね。


その気になれば、空間の切れ目を出現させずに転移する事も出来る筈だけど。


壁の中にいるとかやだし。こっちの方が転移先の安全を確認してから移動できるし、ワンアクション増えるとしてもこっちの方法を使う事にしよう。


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読んでいただきありがとうございます。

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