第176話

「それにしても、E国はファンタジー色が強いですね。イメージ通りではありますけど」


E国に来てから、レベルやスキルシステムが導入される前から存在するファンタジー存在と遭遇する機会が増えた。


やっぱり、E国はそういう存在が多いらしい。


「日本も負けてないと思うわよ?独自の魔法体系を作り出てるし。陰陽術だったかしら?」


陰陽師か……実際のところどうなんだろう?

陰陽術を使える末裔が残ってたりするのかな?

探したことがないから分からないな。

ニュースとかになってないし。少なくとも表に出て堂々と活動してたりはしてないだろう。ネットの拡散力すごいからな。

迷宮省は探したりしてるのかな?

陰陽師の末裔って線で調査すれば国家権力なら割と簡単に探せそうだし。


後で忘れてなかったら河村さん経由で確認してみよう。


……歴史があるからってイキリ出す陰陽師が現れる想像をしてしまった。

絶対にそうなるって決まったわけじゃないけど。割と有り得る話な気がする。


厄介事はできるだけ少ない方が良いので、出来れば現実になって欲しくないな。


「凄い嫌そうな顔をしているけど。陰陽術になにか嫌な思い出でも?」



「いや、今はなんにも。接点ゼロですし。

でも、大型新人って何処でも嫌われるものでしょ?」



「なるほどね。龍に喧嘩を売るなんて自殺行為。する奴なんているの?って言いたいところだけど……」


既に何度か返り討ちにしてるからな。

そういう輩は絶対に存在する。


「まぁ、なるようにしかならないんじゃない?」


そうだよね。


「いやいやお待たせ、鍛冶師を連れてきたよ」


「ドワーフのカイゼルだ。宜しく」


やっぱりドワーフだったか。

エルフもドワーフも神話によっては妖精として登場するし、オベロン王がエルフなら紹介してくれる鍛冶師はドワーフなんじゃないかって思ってたんだよね。


「カイゼルさんですね。私は新藤映司です、よろしくお願いします」


「挨拶はいい。それより、エルダートレントをぶった斬った、神器を見せてくれ!」


ヒゲモジャなおっさんに詰め寄られても全く嬉しくないので、炎で作った鎖で拘束して動きを止める。

ちゃんと燃えないようにしてあるので、火傷の心配はない。


それにしても神器か。状況からして理外のことを言ってるんだろうけど。

理外って神器なの?


「見せて上げるんで、一度落ち着いてください」


力で炎で出来た鎖を引きちぎろうとしていたカイゼルがピタッと止まった。


「神器と言って良いものなのか分からないですけど。トレントの異常種を両断した武器はこれです」


理外をマジックバッグから取り出して、カイゼルに渡す。



「お〜これが……それにしても、武器として完成していないのに実戦に使うとは、鍛冶師として感心せんな。儂に預けてくれれば2日で武器として完成させてやるぞ?」


確かに、武器として完成させてない状態で使うのは、ダメだったかなって思ったけど。

絶対自分が鞘作ったり柄作ったりしたかったから、そう言ったでしょ?


「既に、ほかの職人に頼んであるので大丈夫です」


「なっそれは誰だ!?絶対儂に任せた方がいい物ができるぞ?」


「確かにそうかも知れないですけど。鞘とか柄とかは木製ですよ?俺に短刀の拵って言われて作り方分かりますか?」


流石にティル・ナ・ノーグに短刀についての知識は無いだろう。


「ぐぬぬ……」


そこまで作りたかったの?


「まぁ、神器の作成に関われるなんて、普通有り得ない話だからね。鍛冶師なら皆んなカイゼルみたいになっちゃう訳だよ」


「そうなんですね。と言うか、理外って神器に分類されるんですか?」


確かに作るの大変だったけど。

魔力回復ポーションがぶ飲みして絶炎を短刀の刀身の形に結晶化させただけだよ?


「それはもう立派な神器だよ。まぁ、今はまだ未完成だから最低限の性能しか発揮できてないみたいだけど」


最低限?レベル、スキルシステムから切り離すみたいな事も出来ちゃうのに?


やっぱり、武器としてしっかり完成させるってことは、重要なんだな。


って考えると拵だけじゃなくて、しっかり刃をつけた方が良いのかな?

直接斬るわけじゃないから、刃をつける必要はないだろうって思ってたけど。

短刀として完成させると考えるなら刃をつける必要がありそうだ。


そもそも、素材から特殊で製法も全く違う。

形だけを短刀に似せてるだけのものなので、必要ない可能性もあると思うけど。

取り敢えず、拵が完成して理外の性能がどうなるか確認してから、結論をだそう。


「とにかく。今回は諦めてください。こんな時代ですし、割と直ぐにチャンスが来るかもしれませんよ。龍酒を上げますから元気だしてください」


床に手を付き orz状態だったカイゼルの顔がバッと上がる。


「因みに俺の所に来てくれれば、飲み放題とはいかないですけど。毎日、それなりの量飲めますよ」



「これからは新藤の専属鍛冶師として腕を振るおうじゃないか!!」


チョロすぎない?龍酒があれば、割とすんなり仲間に出来るだろうなって思ってたけど。

ここまですんなり行くと、裏切る時もすんなり裏切られそうで少し不安なんだけど……


その時はその時で何とかすれば良いか。


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読んでいただきありがとうございます。


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