第175話

「人によってどっちが便利かってのは変わるものだし。自分にあった方を使えば良いってことで」


自分の魔力で効果を発動させるタイプ。魔石を燃料にして効果を発動させるタイプ。

結局のところ、どちらの方が便利か使いタイミングによって変わる事だってあるし。

好きな方を使えば良い話だ。


「そんな事が言えるのも。龍だからだと思うわよ?」


確かに魔力が大量に有る事前提の意見かもね。


「そう言えば、鍛治とかも出来るんですか?」


「流石に出来ないわ。短剣とか弓とか物はほかの職人に発注して、仕上げを私がしてるの」


成程、短剣とかアクセサリーとか、そう言うのも自作できちゃうのかって思ったけど。

別の職人がいるのか。

その人とも出来れば、顔を合わせときたい。


今一番求めてる人材だし。


「その職人に会ったりは出来ないんですか?」


「彼らは裏の住人だから、あっちから会いに来てくれないと会えないのよね。だから運が良ければ会えると思うわよ」


裏の住人?マフィア的なご職業の人ってことか……


「それってマフィ━━━━」


マフィアだとしても、一回会ってみたいなと詳しく聞いてみようと思った瞬間。

空間が歪み、エルフの男性が現れた。


「初めまして超越者。私はティル・ナ・ノーグの王をさせて貰っているオベロン」


そう言う意味で、裏の住人って言ったのか。

それにしても妖精王か……


「新藤映司って言います。特に役職とかを持っていない一般人です」


「超越者の時点で一般人とは言えないと思うけどね。取り敢えず、よろしく新藤」


オベロン王が手を差し出して来る。

これって握手って事で良いんだよね?


若干警戒しながら、こちらからも手を前に出す。


「そんなに警戒しなくても、超越者と敵対するつもりはないよ」


特に何事もなく普通の握手だった。


さっきから俺の事を超越者とオベロン王は呼ぶけど、超越者ってどう言う意味なんだろう?


「オベロン王。いきなりなんですけど。質問しまくって良いですか?」


「気になる事だらけだろうし。何でも聞いてくれて構わないよ。答えられない質問もあると思うけど」


「それじゃ遠慮なく。先ず超越者ってどういう意味ですか?俺が龍になれるからって意味では無いですよね?」


「そうだね。龍になれるぐらいじゃ超越者とは呼ばれない。神の領域には到達していないけど、真の意味で理を超越した者を超越者と呼ぶんだよ」


「真の意味で?」


「一見、魔法も理を超越してそうでしょ?

科学が発達している現代からしたら特に。でも、魔法も理の中の技術だって事だよ」


成程。何となく理解は出来た。

現代人からしたら、魔法だって充分、あらゆる法則無視した技術だけど。

それは科学に当てはめるからであって。

地球の定めた理を無視した技術では無いって事だ。


「そう言うのって見ただけでわかるものなんですか?」


「何となくは。と言っても新藤の場合、エルダートレントに対して派手に使ってたでしょ?」


あ〜確かに。理外をバリバリ使ったな。

と言うかあの戦闘見られてたのか……

全く気づかなかった。


「有難うございます。次になんですけど。ティル・ナ・ノーグってダンジョンなんですか?」


アトランティスのようにダンジョンなのか、それとも、ダンジョンとは違う場所なのか。

聞いたところで、何か変わるわけでは無いけど、少し気になった。


「ダンジョンっぽい場所では有るけど。ダンジョンではないよ。ダンジョンコアとかダンジョンマスターとかいないし」


ダンジョンに似てるけど、ダンジョンではない場所か。

理解しようと思って理解出来る場所じゃないな。


「謎空間って事ですね」


「うんまぁ、そんな感じの認識でいいと思うよ」


「これで、最後の質問なんですけど。どうしてこのタイミングで接触してきたんですか?」


接触しようと思えばもっと早い段階で、接触することも出来たはずだ。


実際、ダンジョンから出てきたトレントの異常種との戦闘を何処かから見ていた訳だし。


「単純に、新藤が職人に会いたいって言ったからだよ。超越者と仲良くなれるなら、なっておくべきだしね」


ティル・ナ・ノーグで暮らす職人を紹介するために王自ら話に来てくれたのか。


「成程。それじゃ、職人を紹介してくれるんですね!」

これでダンジョンの宝箱から手に入れる以外の手段で装備を強化できるようになるな。


「そうだね。こちらとしても、魔物の素材は欲しいから。悪い話じゃないからね。因みになに職人が良い?」


流石に最初から色んな職人を紹介してもらうのは無理か。


「ローブなら、魔女さん1人で作れるんですよね?」


「そうね。ローブなら1人で問題なく作れるわ」


そうなると、最低限の防具を用意することは現状でも出来る訳だから。

鍛冶師にしておこうか。

オベロン王と仲良くやっていれば、そのうち別の職人も紹介してくれるだろうし。


後は、鍛冶師が俺の想像通りの種族なら上手く協力してもらう事が出来ると思うんだよね。


「それじゃ、鍛冶師を紹介して欲しいです」


「鍛冶師ね。それじゃ、連れてくるから少し待ってて」


オベロン王がそう言うと、空間が歪み。

歪みの中にオベロン王が消えて行った。



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読んでいただきありがとうございます。

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