第174話

「ここで育ててる薬草も売り物だけど、貴方たちは必要ないでしょうし、先に進みましょうか。2人とも飛べるでしょうし。飛んで行きましょうか」


そう言って魔女さんはサイドポーチから箒を取り出して跨った。


「もしかして、リアル空飛ぶほうき!ねぇねぇ魔女のお姉さん空飛ぶ箒も売ってるの?」


一瞬でテンションMAXになった彩夏が魔女さんに話しかける。


「貴方たち、自前の翼で飛べるでしょ?」


「そうだけど。空飛ぶホウキってロマンがあって最高じゃん」


「ドウドウ。魔女さん引いちゃってるから、一旦落ち着きなさない」


売ってないとは言わせないってレベルの気迫を出している彩夏を落ち着かせる。


「売ってるけど。材料が貴重だから、売れるのは1本だけよ?」


それでも、1本は買えるんだな。

ソフィアのお土産にちょうどいいな。


「じゃあ、それ俺が買います」


彩夏が裏切ったな?って顔してこっちを見ているけど。空飛ぶほうきを買うお金なんて持ってないでしょ?


「ちゃんと彩夏にも使わせて上げるから。

そもそも1階の商品を買うお金も俺が出してる時点で、空飛ぶほうきを買うお金なんて持ってないでしょ?」


「グヌヌ……映司にぃ!今すぐダンジョンに行ってお金稼ぎしよう」


「日本じゃないから無理」


「グハッ!」


いつまでもここで漫才をして時間を消費する訳には行かないので、ダウンした彩夏を抱えて、他の商品が置いてある場所に移動した。


「それにしても、相当広いけどなんで薬草畑が入ってすぐの場所なの?」


「一番使うのが薬草畑だから。こっちの商品を買いに来るお客さんなんて殆どいないし」


そいう事。と言うかホントに広いな。東京ドーム何個分みたいな表現のされ方をする広さだ。


「確かに、これを買いたいって人が大量に来ることはなさそうですね。と言うか、大量に現れたらそれはそれで問題だと思う」


空間拡張されてどんだけ広くなってるんだとか。

商品が置いてある場所より、薬草畑の方が入口に近い話とかは一旦おいといて、問題はその商品だ。

死体に振りかけるとゾンビになって復活するポーションとか。

振りかけられた土地を、植物が一切育たなくなる土地にしてしまうポーションだとか。

魔法的な方法でしか解毒出来ない毒とか。

降ってる雨を瞬時に強力な酸性雨にかける煙を発生させる煙玉とか。


これを舐めたら一切嘘がつけなくなる、自白剤的な飴とか。

1本でも悪い奴の手に回ったらろくなことにならないだろうなって言うアイテムばかりだ。


魔女が作る薬怖すぎるでしょ。


「私も見るからにヤバそうな相手には売らないわよ。アルカディアの連中っぽい奴とかね」


E国で暮らしてるんなら、アルカディアの連中について知っていて当然か。


「どうやってその判断をしてるんですか?」


「少しでも怪しいなって思ったら。そこにある自白剤使って確認をしているわ。それがいちばん早いし。そこで手に入れた情報をE国政府に匿名で流していたりもするのよ?」


その話は初めて聞いたな。帰ったらエリックさんにそれとなく聞いて見るか。


「そうだったんですね。そう言うのってイタズラとか、アルカディアの連中の自作自演で挑発とか思われそうですけど実際どうなんですか?」


「どうなのかしらね?中途半端なことをしているってのは分かっているけど。矢面にたって色々するのは嫌だったから。E国政府がどう思っているかとか全く調べてないのよね」


まぁ、現時点でこれだけの事が出来る魔女さんが表舞台にたったら色々面倒な事になるのは確実だからな。

命を狙われるのは確実として、自分の良いように利用しようとする連中がわらわら沸いて来るだろうからな。


そう考えると、俺って運がいいよね。

そう言うのに巻き込まれたの、まだ数回ぐらいだし。


「それにしても、薬関係は結構充実しているけど、それ以外は少ないんですね」


「薬草は自分で育てることは出来るけど。魔物をこの空間で繁殖させたりする事は出来ないから。薬草以外の素材は万年不足してるから」


作るための素材がないからって事か。


魔力を流すだけで、刃の表面に毒が生成される短剣とか。

弦を引くと魔力で作られた矢が生成、装填される弓とか中々面白そうな武器が売っているので、素材を用意してあげれば、もっと凄いものを作ってくれるかもしれない。


「取り敢えず。この、つけると気配が希薄になって気づかれにくくなるペンダントは買いたい」


透明になる炎とか、幻影を見せる炎とか一々作るのちょっと面倒臭いんだよね。

魔力の消費も大きいし。


「それと、自分の魔力でも効果を発動できるってのが良いよね」


ダンジョンで手に入る魔導具のほとんどが、魔石を燃料にしていて、自分の魔力で起動させるという事が出来ない。


「普通の人からしたら魔石で起動できるって方が喜ばれるのよ?自分の魔力を消費するのを抑えられるし」


確かに、魔力を消費して戦う人が。

明かりを持って入らないと先が見えないぐらい暗いダンジョンに挑戦する時に、自分の魔力で点灯するライトと魔石を燃料にして点灯するライトどちらが喜ばれるかと言えば後者な気がするな。


自分の魔力は攻撃するために必要なリソースな訳だし。

出来るだけ、攻撃以外に消費したくないと思うはずだ。


俺からしたら、その程度の消費気にもならないから。

前者の方が便利って思っちゃうけど。



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読んでいただき有難うございます。

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