第171話

「成程。やっぱり。グラハムさんとアイリーンさんとの俺、3人で夕食をとったことになってるんだね」


クラリスさんを呼んで確認したところ。やはり、俺がいない間はマーリンが幻覚で俺を作り出して。

宮殿内を歩かせることで、俺がE国を一時的に離れていると思わせないようにしている。


相手に転移魔法のスキル持ちがいる事が、三ツ目族の占いで判明しているので、やっぱり俺がE国から離れていることを隠したのは正解だったと思う。


転移魔法がどれぐらいの性能をしているか分からないけど。

俺がいない間に、この宮殿に直接戦力を転移させるとかできたかも知れないし。


もし、可能だったとしても。マーリンがいるからアルカディアの連中に勝ち目なんてないけど。


マーリンは〈怠惰の王〉の自分が直接なにかするより他人に任せた方が良い結果になりやすいって効果を活かすために存在を隠してるし。

アルカディアの連中からしたら想定外すぎる戦力な訳だけど。


「とにかく。それだったら、お詫び品なんて渡したら話がややこしくなっちゃうか」


理由が矛盾しちゃうからな。それに、このタイミングで食べ物を渡すってのも不自然だろう。


アトランティスに行ってたことを隠すなら、マギアイアンワイバーンの肉は前から持っていた事になる。

だとしたら、渡すのは一緒に夕食をとる前に渡す方が自然だと思うし。


「なら、お詫びではなく御礼と言うことにすれば大丈夫だと思いますよ」


成程。夕食に招待して貰った御礼ってことにすれば良いのか。


「なら、御礼ってことでコレを渡しておいて」


俺の牙と闘技場で手に入る宝石類を幾つか、迷ったけど、マギアイアンワイバーンの肉も渡すことにした。


直接渡せるのが良いけど。公務で忙しいそうだしな。

毎日のようにヨーロッパ各国の偉い人と会談したり、トレントの異常種の被害で避難している人たちの避難所に訪問したりで。


「魔物の肉だから美味しいけど。料理系のスキルを持った人が調理しないど毒物になっちゃうからって注意を忘れずにね」


クラリスさんはわかっている筈だけど、念の為ね。


「承知いたしました。それでは失礼します」


クラリスさんは俺が渡したものを持って部屋を出て行った。


「映司にぃ、2人で街をブラブラしに行こう!」


クラリスさんが部屋を出ていったのと交代で彩夏が部屋に入って来た。


「2人で街をブラブラって、流石に無理じゃない?」


直ぐにパパラッチとか報道関係者とか俺たちと繋がりが欲しい企業とかいろんな立場の人に囲まれてブラブラ歩き回るなんて無理だろう。


「そこはほら。映司にぃなら幻影で別人に化けたり出来るでしょ?」


まぁ、出来るけどさ。何かに巻き込まれた時に面倒な事にならなかな?

って思ったけど。気分転換にちょうどいいか。


「沢山働いたし。気分転換は必要か……

あんまりはしゃいで目立っちゃったら意味ないから、そこら辺は自重してよ?」


「もちろん!」


しっかり、出かけることを宮殿のスタッフに伝えてから彩夏と2人で街の散策に出掛けた。


「ここが有名な魔法学校行きの電車が来る特別なホームがある駅!」


俺が街を散策してたら絶対に面倒事に巻き込まれると思ってたけど。

感が外れて何も起こらずに普通に観光する事ができている。


こう言う事も有るんだな。


「なんなら、柱に突っ込んで見る?今だったら本当に秘密のホームにたどり着けるかもよ?」


「いや、今まさに失敗してる人達がいるからいいや」


「そうだね」


柱に走っていってそのまま柱に激突している人たちを見ながら返事をする。


「それじゃ。さっき歩いた時に気になるお店を見つけてね。そこに行ってもいい?」


「映司にぃが気になるってちょっと嫌な予感がするんだけど。それって純粋に商品が気になったの?」


彩夏は鋭いな。


「幻影を使って普通のお店に擬態している魔女のお店?を見つけてね。魔女っぽい人とも目が合ったし。行かない選択肢はないかなって」


魔女のお店ってのは、ただの俺のイメージだけど。


幻影をつかってお店本来の姿を隠しているのは確かだ。


特に何もしなくても幻影を見破れる龍の目ってホント便利だよね。

それ以外にも便利機能満載だし。


「全然。何もなくなかったじゃん。バッチリ騒ぎになりそうなもの見つけてるじゃん」


「行かなきゃ、問題ないからね。別に害意を持ってる感じじゃなかったし」


「行くに決まってるじゃん!魔女のお店なんて絶対面白いじゃん!」


彩夏ならそう言うよな。


俺もノータッチで帰る気にはなれないし。


2人で魔女のお店に向かって歩き出した。


「いらっしゃい。世界がこんな事になってお客さんは少し増えたけど。龍とヴァンパイアのお客さんは初めてよ」


「最初から隠したりしないんですね?貴方は魔女で良いんですか?」


「龍の目を欺ける実力なんて私にはないしね。隠すなんて無駄な行為でしかない。ここは、あなたの想像通り魔女のお店。普通のお店では買えないようなものしか取り扱ってない珍しいお店だよ」



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読んでいただきありがとうございます。

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