第170話

「それじゃ、潜水艦は鹵獲。その後、マーリンの配下である悪魔たちに操縦させてE国の領海内で浮上させてそこで、E国と俺が協力して潜水艦を無力化する。その後、タイミングを見て悪魔と本当のアルカディアの連中をもう一度入れ替えるってことで」


入れ替えられてる事に気づかれないように、元から潜水艦に乗っていたアルカディアの連中の記憶操作もマーリンがやってくれるから。

このトリックに気づく人はいないだろう。

人はだけど。


まぁ、なるようになるって事で。


とにかく力の使い方には注意しないとな。

今回、ここまでのことをするのは、相手が犯罪者だから。


だけど。いくつか法をガン無視している訳で褒められることでは無い。


人間一度そう言ったラインを超えてしまうと、次からは割と気軽にラインを飛び越えてしまう生き物だ。


まぁ、既に悪人だから。その悪人を逃すともっと大勢の人が被害にあうから。

銃火器よりやばいスキルを持っている相手に話し合いなんてする余裕は無い。

そんな理由を並べて人を殺している訳だけど。


悪人以外は殺してはいけないと言うラインは踏み越えていないつもりだ。


けど。こんな事を続けているうちに悪人と言うラインがどんどん緩くなって来たら?


極端な話。例え犯罪行為に手を染めて無くても、俺が気に食わないからこいつは悪人とか言い出して、人を殺し始めたら?


「思ったより。精神的にキてるみたいだね。本当にそう言う事やっちゃう化け物はヴァンパイアになっちゃった可哀想な女の子を助けたりしないし。そもそも、そんな思考になったりしないよ」


マーリンの言葉と共に花の匂いが強くなった気がする。

大きく深呼吸をしていると少し落ち着いた気がする。


「幾ら、精神が変化したと言っても、人を殺しても何も感じないと言う訳じゃない。少しづつ精神的にダメージを受ける。今までは家族やソフィアちゃんがいた事によってそのダメージを癒すことができたけど。E国に来ちゃったからね」



成程……確かにその通りだったかも。

彩夏も家族だけど。俺が面倒を見て上げないとって思ってるし。

なんと言うか、俺が甘えられる相手はいなかったかも知れない。


その結果。ちょっと精神的に不安定になってあんな事考えちゃたわけか。

あの考え自体、間違った考えでは無いけど。

そうなっちゃうかもって考えるんじゃなくて、絶対にそうはならないって気持ちでいないとな。


「有難うマーリン少し落ち着いたと思う」


「まぁ、伊達に長生きはしていないってことだね。それに悪魔は感情に敏感だからね。半魔である僕も感情に敏感なんだよ」


「もう大丈夫です。時差も有るし、電話をするのも迷惑かな?って控えてたけど。後で、ソフィアに電話しようと思います」


甘えるならソフィア一択。両親にって言うのは少し恥ずかしいし。


「それが良い。声を聞くだけでも、だいぶ違うと筈だし」


「取り敢えず。作戦決行まで2週間あるし。今日はこれで解散にしよう。エリックには、僕がIT国にバレないように潜水艦の搭乗員に幻覚をかけて、E国の領海内まで誘導。そこで映司君とE国の戦力合同で叩く、そんな感じの作戦で行くって説明しとくから」


「……それじゃダメなの?」


俺が一度鹵獲する必要無いよね?


「大罪スキル〈怠惰〉……もう隠す必要ないか〈怠惰の王〉を僕が持っている以上。僕が直接動くより、他人に任せて自分は裏で手伝いをする。って感じの方がいい感じに事が進むだよね」


〈怠惰〉について説明してた時にそんなこと言ってたね。

別に自分が動いたからって、状況が悪くなる訳じゃないけど。

他人に任せた方がいい結果を呼び寄せることができるって。


だから今回も俺をメインにした方が、いい結果を呼び寄せるって訳か。


「分かりました。けど、手伝いはちゃんとしてくださいよ?」


「それは当然。それじゃ、話はこれで終わり。映司君が泊まっている客室に転移させるから」


そう言って強制的に転移させられてしまった。


「取り敢えず。電話をするのは日本が昼間の間にしよう」


こちらら電話をするんだし、そのぐらいは配慮しなくちゃいけない。

気持ちとしては今すぐ声が聞きたいって気持ちもあるけど。

ソフィアを深夜に叩き起す訳にはいかないと思えば我慢出来る。


この時間で、グラハムさんとアイリーンさんに昨日の夕食を一緒に食べる約束をすっぽかして申し訳御座いませんでした。って意味で渡す物の用意をしておくか。


因みにグラハムさんとアイリーンさんはソフィアのご両親。つまり王と王妃だ。


俺からしたら王、王妃だからって言うより、ソフィアのご両親ってのが重要な訳で、嫌われる訳にはいかないし、しっかり謝罪の気持ちを伝えとかないとって思ったけど。俺は昨日、この宮殿から出ていないって事になってるんだよな?


そう思わせる為に隠れてアトランティスまで行ったわけだし。

なのに、昨日夕食を御一緒する約束すっぽかして申し訳御座いませんでしたって、お詫びの品を渡すのは少し不味い可能性も?


そもそも、マーリンがいる以上。俺の幻影を作り出して。俺がいないとバレないようにしていた可能性もある。


その場合、予定通り俺と王、王妃3人で一緒に夕食をとったって事になっている可能性が高い。


先ずはしっかり、どうなってるのか事実を確認しておかないと。


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読んでいただきありがとうございます。


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