第156話

「取り敢えず。俺は異常種のトレントの生死を確認してきます。死亡が確認できたら、けが人の治療の為にポーションをばら撒きにいきます」


「有難うございます。こちらから連絡をしておきます」


突然行ったら驚かれるだろうし、事前に連絡しておいて貰えるのは有難い。

取り敢えず、異常種への警戒が要らないと言う確証が必要だろうから確認しに行こう。


「真上にいても、特に攻撃はしてこないか」


異常種のトレントの真上を浮遊しても攻撃してくる様子は無い。

今更だけど、鑑定モノクルLv2で調べてみると異常種の名前はエルダートレント。

トレント系の正統進化だな。

必ずしも異常種専用の進化先が存在するわけじゃないらしい。

と言っても殺した生物を養分にして、無限に強くなれるみたいだから。数で圧倒しようとか考えると、滅茶苦茶強化されてしまう感じだな。

そうじゃなくても、今回みたいに人が沢山いる場所に現れてしまうと、どんどん強くなってしまう面倒なやつだな。


それと、コアの魔石を破壊しないとトレント系は死なないらしい。コアさえ残っていれば、時間をかけて再生して元通りになることも可能なようだ。

って事はあれも、まだ生きてるってことだよね?


警戒しつつエルダートレントの切り株の上に乗ると、切り株から新芽が凄まじい速度で生えて俺を拘束しようとしてくる。

不意打ちで攻撃してくる事は想定内だったので、新芽を残らず燃やす。

問題は例のコアの魔石が何処に有るかなんだけど。


切り株から新芽が生えてきたって事は切り株側にあるって事だろう。

取り敢えず、縦に半分にしてみよう。


理外を使ってエルダートレントの切り株だけを縦に真っ二つにする。


「魔石が真っ二つになってるし。これで死んだでしょう」


新芽が生えてきて攻撃してくることもないし。今度こそ討伐完了だ。

それにしても、外に出てきた魔物は丸々素材としてゲットできるんだな。

今度からダンジョンの外で戦う時は素材が沢山取れるように考えて倒すか。


それにしてもエルダートレントの木材少しぐらいなら貰えるかな?理外の柄と鞘の素材として良さそうなんだけど。


そのぐらいの量だったらケチケチせずにくれるとは思うけど。

後は、復興の為の材料に使ったり、どこかに売って復興のための財源にしてくれてもいい。


「クラリスさん、トレントの異常種の討伐確認しました。俺はこれから一般人が避難している所に向かいます。それとどうやらダンジョンの外で倒した魔物は丸々素材として使える見たいですよ」


「報告ありがとうございます。避難所に対して映司様がポーションを持っていく事について連絡も終了しています。映司様頼りなのが申し訳ないのですが、よろしくお願いします」


「まぁ、働いた分報酬は貰いますから気にしないでください」


俺はお人好しでも、ヒーローでも無いからな。

タダで働くつもりは毛頭ない。

一度タダでこう言う事したら、あの時はタダでやってくれたとか 、あの国ではタダだったのに、なんでうちの国ではお金を取るんだとか難癖つけてくる連中がわんさか湧いて来るからな。


「映司様をタダ働きさせる訳には行かないので、交渉は既に進めています」


「大変かもしれないですが。お願いします」



のんびり話をしている時間は無いので、話はここまでにして、避難所巡りを始める。

3級回復ポーションを渡して、次の避難所に行ってを繰り返した。


おかげで、闘技場で大量に手に入る3級回復ポーションが底を尽きた。

まぁ、中に入れた液体を回復ポーションに変えてくれる水差しが有るから3級回復ポーションが無くなった訳じゃ無いんだけどね。


「お疲れ様でした映司様。E国の人間の1人として感謝を伝えさせてください。国を救っていただきありがとうございます」


「まぁ、ソフィアに嫌われたくないって言う下心ありでやってますから」


正直、それがこんな事してる一番の理由だし。

まぁ、俺と敵対もしてないし悪い事もしていない一般人に被害が出てるのを助けないで無視する程クズになったつもりも無いけど。


「流石に疲れたから、今日はもう寝ようと思うんだけど……」


「映司様には充分助けていただきました。後始末は私が担当しますので、気にせずお休みください」


それじゃクラリスさんにお任せして寝させて貰おう。


服は魔力を物質化して作っているので、一度物質化を解除して寝巻きに作り直す。


寝ようと思ったけど最低限シャワーを浴びて歯磨きしないとダメか。

クラリスさんに風呂場の場所を教えて貰おうと思ったら。

ドアがノックされる。



「映司さん、風魔です。例の旧C国の連中の件で至急報告したいことが」


今日を終える事はまだ出来ないらしい。

流石にその話を無視する事は出来ないからな。


「風魔さん入ってください。その話は早く聞いた方が良さそうですし」


「ありがとうございます。異常種の討伐、その後も怪我人の治療の為に避難所を巡ってお疲れのところでしょうに、また厄介事を持ってきてしまい申し訳ございません。異常種が現れた混乱に乗じて旧C国の残党含め複数のテロリスト集団が動き出す情報を入手しました」


まぁ、混乱に乗じて動き出す。理にかなってはいるけど……

大人しくしてて欲しいもんだ。



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読んでいただきありがとうございます。



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