第143話

「僕を待たせるなんてなんのつもり?忙しい中、何とかスケジュールを組んで来てるって言うのに」


河村さんと俺、ウィーの力を借りて透明化しているソフィア三人で駆け足でダンジョンの入口に向かうとイライラした様子の男性アイドルにそう言われる。


確かに遅れたのはこっちだけど、やっぱりムカつく。


「本来予定になかった、映司くんに頼み込んで、今回の件了承したのに約束を破った方がいたせいで、映司くんに謝罪をしていたためこの時間になってい待ったんですよ」


それに加えて、いやーほんと大変だった。と小声で河村さんがつぶやくと撮影班が男性アイドルを直ぐに宥めに入った。


まぁ、そちらさんとしてはそこつつかれたくないわな。

後でしっかり代償は払ってもらうけど。


「そちらの件に関してなんですけど、こちらにも謝罪の場を用意していた━━」


「謝罪を受け取るつもりは一切ないと伝えてくれと映司くんから伝言を預かってるから無理だね。そんなことより時間が押してるんだろうさっさと中に入ろう」


上手い感じに河村さんがこの場の指揮を取れる形になったな。

撮影班が自分勝手にこういう絵が撮りたいみたいに暴走することも少しは減らせるだろう。


「そうそう、ダンジョンの中に入る前にひとつ。ダンジョンの中では実際に魔物という生き物を殺すことになりますし。魔物も必死にこちらを殺そうと襲いかかってきます。それをしっかり理解しておいてください」


そう言い残して、河村さんはダンジョンに入って行った。

ポカーンとした顔をしていた男性アイドルや撮影スタッフが慌ててダンジョンの中に入っていく。

あれはなんで、河村さんがあんなことを言ったのか理解出来てないな。


最後に俺とソフィアがダンジョンの中に入る。


ただでさえ撮影スタッフの数が多いのにSCSFの隊員を護衛にために複数連れていくとか邪魔でしかない。


河村さんが罠を感知するスキルを持ってるみたいなので、河村さんが先導、俺が後ろから全体の護衛で充分だし。


俺だとバレないように炎を操ったりありえない身体能力を発揮して戦えないから、さっきまでだったらちょっと厳しかったけど。

ウィーがいるからね。

俺がアイスランスとか氷魔法で使えそうな技名に合わせて攻撃してくれる手筈になっている。

その分 、後で魔力を上げなきゃなんないけど。


おかげで氷魔法使いと勘違いさせられるだろうし、そのぐらい安いもんだけどさ。


ダンジョンの中に入ってすぐ、何時もだったら直ぐに先に進むけど。

男性アイドルと撮影クルーがゲロゲロしちゃってるので、入口で立ち往生中だ。




とはいえゲロゲロしている人たちと同じ空間に居たくないので、少しだけ先に進んだところで待機する。

道はまだ一直線なので、少し離れても危険はないだろう。


「凄い腐臭だからああなるのも分からなくはないですけど。こうなるって何となくわかってただろうに…無理せず今日の撮影は中止して別のダンジョンに後日挑戦ってことにすればよかったのに」


元々は一階層のスケルトンを倒す予定だったろうから、突然のダンジョンの中身の改装。

そんなの予期できることじゃないし。

中止しても文句言われなかったんじゃない?

いや…そんなことないか。

予期せぬ自体だったとしても、撮影を中止すればテレビ局や男性アイドルの所属事務所他にも色んなところからめっちゃ怒られちゃうんだろうな。

そう考えると可哀想に思えてきたな。

この後助けるどころか完全に引導を渡すことになるんだけどね。


「アンデッドドールが近づいてきましたね。まだ戦うのは無理そうだし。こっちで倒しちゃいますか〈アイスエッジ〉」


ソフィアがよく使う氷魔法の技名を詠唱すると、氷で作られた三日月上の刃がアンデッドドールに向かって飛んでいく。


うん。パッと見、俺が氷魔法を使ったようにしか見えないな。


「この調子で頼むぞウィー」


小さな声で短くにゃと返事が返ってくる。

ゲロゲロしている人達にバレたら面倒だからね。


その後も、ちょこちょこ来るアンデッドドールを倒しながらゲロゲロしている人達が復活するのを待つことになった。


念の為魔導銃も試し打ちしてみたけど。このタイプのアンデッドドールを倒すだけでも四発かかった。

一体倒すのに魔石四つ消費かぁ〜、やっぱりもったいないな。


攻撃力もウィーの方が高いし、ウィーの援護が受けられないとか言う状況にでもならない限り使うことは無いな。


「そういえば河村さん実弾一発で、倒してましたよね。なんか特別な弾丸なんですか?」



「銀で作った弾丸を使ってるんだよ。特注で作ってもらう必要があるから、どうしても、普通の銃弾よりはコストがかかるけど、アンデッド系には凄い聞くよ」


なるほど。銀ってヴァンパイアとかオオカミ人間とかそういう存在に聞くってイメージあるもんな。


銀製の武器は持ってないな…。


やっぱり。そう言う弱点武器は用意しておいた方がいいのかな。


まぁ、こんな状況じゃなきゃ炎を縛らないし、弱点武器なんていらないか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る