第142話

「どうです?別人に見えてますか?」


見た者に幻覚を見せる炎を纏って別人に変装するって作戦だけど、さすがにぶっつけ本番は不味いので、河村さんと俺しかいないここで一度試してみる。


「声も違うし、身長や体型全てが別人に変わっているよ。SCSFの隊服もバッチリ。…ここまで人を欺く方法があるとなると警備がまた大変になるけど」


犯罪者が顔を変えて逃げ回るって可能性もあるしね。


これに俺が反応するとまた話が長くなるので、俺は悪用する気はありませんよ?とだけ返事をしておいた。


それにしても炎を見た瞬間、幻覚を見始めることになるんだから、わざわざ炎を透明にする必要ないかと思って試して見たけど全然大丈夫みたいだな。


俺的には炎を纏って歩き回る超不審人物なんんだけど、河村さんにはちゃんと20代後半の美女隊員に見えてるようだ。


姿を変えるなら大胆に変えた方がバレないだろうと思って性別まで変えてみたけどやりすぎたかな。


「映司くんだとはバレないだろうけど。多分これはこれで問題になると思う。今回護衛の隊員含めて男しかいないから。それにソフィアさんにそっくりだからそっち方面でも

問題になるかも」



女性でしっかり顔を思い浮かべられたのがソフィアだけだったから、ソフィアに似せちゃったけど。

SCSFの隊員にソフィアそっくりの隊員が居るとなれば騒ぎになるか。

ソフィアは超絶美人だし。


女性に化けるのは中止して、適当に男性に化ける。


スマホで男性の写真を探して、どこにでも居そうな目立たない感じの男性に見えるように調整した。


「女性に見えるようにしておけば、俺だとバレることはなさそうだけど。言葉遣いとかも変えないといけないし、違和感が凄くて、男が変装してる?って疑われる可能性もあるもんね」


声を変えることは出来ても、喋り方は自分でどうにかする必要がある。


いきなり完璧な女性の口調を真似できるとは到底思えない。


こう言う職場にいるんだし、喋り方が男勝りって設定でいつも通りの話し方で押し通せるかもしれないけど。


ソフィアの見た目で男っぽい喋り方ってなると俺の違和感がすごい。


後、「それ今すぐ辞めないさい」ソフィアに言われた気がしたので直ぐにやめた。

正直、これが一番の理由だ。

と言うか確かにやめなさいって聞こえた気が…

恐る恐る後ろを振り返ってみると、一瞬空間が歪んだと思ったらそこからソフィアが現れる。


ソフィアの肩の上でウィーがドヤ顔をしながらニャーと鳴いている。


ウィーの仕業か…それにしても魔力すら感じなかったんだっけど。


「河村さんは気づいてました?」


「心配だから、隠れてついて行くと言われてはいたけど。どこに隠れてたかはさっぱりだった」


スキルを使って透明になったところで、魔力という痕跡が残るから、俺にはバレバレだし。


河村さんも他人の感情を読み取る?実際には感情によって色の違うオーラが見えるようになるらしい。

透明になったって、そのオーラが見えるので看破することが出来る。

無心でも、無心を示す色のオーラで示してくれるらしいから。

何も考えなければバレないって話じゃないらし。


桜島ダンジョンに魔力を隠蔽した上で気配を消して、奇襲を成功させた蛇の魔物はいたから、俺を欺くことは可能だろうけど。

河村さんの魔眼はどう回避したんだろう?


やっぱ精霊は凄いな。


猫の姿だからドヤ顔してても全くうざくない

ところもポイントが高い。


24時間365日ずっとソフィアの護衛もしてくれるし。


ソフィアが使役する精霊をもっと増やしたいけど。精霊の卵は手に入ってないんだよな。


「ウィーが言うには水の膜で私を覆って光の屈折を調整して周りから見えないようにしてるらしいわよ。二人に気づかれないようにするために他にも何かやってるみたいだけど。それについては秘密だって」


相当高度なことをしてるんだろうなってことしか分からなかったな。

秘密って部分も気になるけど。秘密にしといた方がソフィアの安全に繋がるし聞くのは許してやろう。


ただ今日は魔力すわせてやらないからな?

そう頭の中で思いながらウィーを見ると、ウィーは慌てて俺の足元まで走ってきて、足に頭でゴシゴシしてくる。


「はぁ〜、そんなことして許してもらえると思ってるのか?」


胴体を掴んで抱っこする。

ホントの猫なら嫌がるんだろうけど。

ウィーは猫の姿をしている精霊だからな。

嫌がらずにじっと抱っこされてる。

猫の形をしている水なのにしっかり触れるし毛の感触もあるんだよな。

まじで不思議生物。


されるがままのウィーを抱っこしたまま撫でて堪能する。


「仕方ない。量は減らすけど、ちゃんと魔力はあげるよ」


そう言った瞬間、ウィーが霧になって俺の腕から消える。


そうしてソフィアの肩の上に現れた。


ウィーはホントこいつチョロく助かるって顔をしている。


ソフィアも河村さんもこいつ大丈夫か…って顔してるけど。

ただのじゃれ合いだから!ほんとにダメな時はちゃんと怒るし。


「すいませーん、そろそろ撮影の方始めたいんですけど!」


そろそろダンジョン入口に行かなきゃって言ってから大分時間たってたな。


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読んで頂きありがとうございます。

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