第126話

「とりあえず説教はここまでにしといて。そろそろお兄様にかけた幻術を解除して」


ここで足が痺れてとか言ったらガチで怒られそうなので、正座した状態のまま幻術を解除する。


幻術が解除された瞬間エリックさんがキョロキョロして俺を探している。


直ぐに行った方が良いんだろうけど、足が痺れてて立てないんだよね。

1時間正座して大人しく怒られるってこんなに辛いんだね。


かと言って正座した状態で浮遊して移動したりしたらそれはそれで怒られるだろうし。


なんとか立ち上がり、エリックさんの所に向かう。


「いやー完敗だよ。完全に映司くんの手のひらの上だった」


汗ダラダラで剣を地面に刺して杖の代わりにしながら立っているエリックさんがそう言う。


〈憤怒〉の影響はちゃんと残ってなさそうだな。


今思えばE国の王族相手で実験するってかなり危なかったよね。


かと言って普通に戦ってたとしてもボコボコにしてたろうし、それはそれで問題になりそう。正直どっちでもかわらないか。


「いやいや、あの剣の切れ味も中々出した。まさかあんなにあっさり斬られるとは思っていませんでした」


「えっ!?あれも幻覚だったんじゃ?」


あ〜そう判断しちゃったか。


「いや、エリックさんに幻術をかけたのは、熱くない炎で地面を火の海にした時です。なんで真っ二つになって何事も無かったようにくっ付いたのはリアルでの出来事です」


そう言うとエリックさんに凄い顔をされてしまった。

リーリンさんにぶった斬られまくってる俺としてはあの程度なんとも思わないけど。

普通、幾ら治るからってあんな事するのは狂人って思われてもおかしくないか。


「映司ちょっと良いか」


どう返事しようかな?と考えているとリーリンさんから声をかけられる。


エリックさんにごめんなさいしてから

リーリンさんに連れられて人がいない場所に移動する。


「例のヴァンパイアっ娘が目を覚ましたぞ」


そう言えばすっかり忘れてた。保護してたねそういえば。

目を覚ましたのは良いけど、このタイミングか…


E国の人達と遭遇させるのはあまり良くない気がするんだよな。

どうしよっか。

だから誰にも聞かれないように離れた場所まで来たわけか。


「すっかり忘れてたな?まぁ、それはいい。で、どうする?」


正直、もう一度寝てもらうのがいい気がするけど。そんなこと言えないしな。


「とりあえず。一回会って話してみるしかないな」


起きてしまった以上無視することは出来ないからな。


リーリンさんと一緒にヴァンパイアっ娘がいる家に向かう。


「入るぞ〜」


リーリンさんがノックもせずに入るぞと言いながらドアを開ける。


全く着替え中とかだったらどうするつもりなの?

千里眼を持ってるリーリンさんなら中の状況が確認できてるから躊躇なく開けたって可能性もあるけど。

リーリンさんだとあえて着替え中にドアを全開で開けてくるような人だからな。


念の為ドアの横にズレて中が見えないようにしておく。


なんでノックもせずに開けるんですか!!って真っ赤な槍が飛んで来たのでドアからズレていて正解だったようだ。


それにしてもさっきの槍は血で作られたものっぽいな。


血を操る能力って凄いヴァンパイアっぽい。


「攻撃してくるとは最初に比べたら元気になったようだな。だが、あの程度では私はかすり傷すらつかないぞ」


槍がクリティカルヒットしたリーリンさんはそんなこと気にせず。ズカズカと家の中に入っていく。


「おい 、何時まで外に居るんだ。映司が入って来ないと話が始まらないだろう」


リーリンさんが家の中に入って行って、どうしよう?俺も入っていいの?と考えているとリーリンさんが家から出てきた。


確かに話に来たんだし、いつまでも外にいたらいつまでも話が始まらないか。


「なんでヴァンパイアっ娘は土下座してるの?」


おそらく中学生の女の子を土下座させてるとかマジで事案発生してる気がする。


「なんで土下座してるの?」


「ものすごい迷惑をかけちゃったので」


「俺はそこまで迷惑かけられてないけど。まぁ、分かったから顔をあげて」


正直、起きるまでのめんどうはリーリンさんに丸投げだし。


起きたあと捕まったる死刑にならないように法整備を河村さん経由でお願いしただけだし。


そう考えると俺、本当に何もしてないな。


「映司がどうにかしろって言ったから私も政府も動いたんだ。ヴァンパイアっ娘が生きてるのも映司のおかげと言っていいだろう」


そう考えるとかなり滅茶苦茶なことしてるんだよな俺。


圧かけて法整備させるとか…

まぁ、あれは早めに決めとかないとスキルに振り回されそうな人がヴァンパイアっ娘以外にも出て来そうだったし後悔はしてないけど。


と言っても、そう言うことが出来てしまうって事はしっかり覚えといて、調子に乗らないようにしないと。


とは言え、もし俺が調子に乗り出したら周りの化け物達がリアルに拳を使って目を覚まさせてくれるだろう。


そんなことよりまだ1番重要なこと聞いてなかったな。


「とりあえず。ヴァンパイアっ娘の名前聞いていい?」


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読んで頂きありがとうございます。

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