第125話
〜エリック視点〜
「それじゃあ、先行はエリックさんにお譲りしますので、自分のタイミングで始めてください」
断られるかもとは思ったけど。戦ってみたいと言う提案はあっさりOKされて今、向かい合っている訳だが……
彼は子供のごっこ遊びに付き合う父親のような雰囲気をしている。
実力差が有るのは分かっているつもりだったが、流石にあんな態度を取られると腕の1本ぐらい切り落として後悔させてやりたくなる。
相手はこっちに好きなだけ事前に準備をしていいと言ってくれているんだ。
有難く準備させてもらおう。
「〈竜装〉〈聖剣召喚〉」
魔力で作られた鎧を装備して聖剣アロンダイトを召喚する。
竜装で作り出し装備した鎧はただ防御力が高いだけでなく、身体能力を上昇してくれる効果もある。
更にアロンダイトに魔力を込めていくとアロンダイトの刀身が青く発光し始める。
アロンダイトは空間ごと切り裂く聖剣。
幾ら防御力が高くてもアロンダイトを防ぐことはできない。
声をかけずにアロンダイトを構えて接近して袈裟斬りにする。
相手は何もせずに斬られてあっさりと真っ二つになった。
こっちが接近しているのを目で追ってきていたので、反応出来なかったという訳ではないはずだ。
となると、自分の防御力を過信していた結果か?
それなら滑稽だな。こちらを舐めきって結果真っ二つになったんだから。
「いや〜素晴らしい剣ですね。綺麗に真っ二つにされてしまった。まぁ、その程度じゃ死なないんですけどね」
切り口から炎が溢れ出てきたと思ったら切り口から出ている炎同士が合体して真っ二つになった体が元通りになる。
「化け物が…」
「お褒めに預かり光栄です。じゃあ、そろそろこっちから攻撃しますよ?」
そう言った瞬間、辺りが突然火の海に変わる。
「熱く…ない?」
「驚きました?ちょっとしたドッキリみたいなものです。触れても熱くない炎です」
この後に及んで……
「ふざけやがって!!後悔させてやる!!」
再生出来なくなるまで切り刻むために再び、アロンダイトに魔力を込める。
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〜映司視点〜
「幻術も上手くいったみたいだね」
マーリンに幻術で一杯食わされてから俺も幻術使ってみたいなって思ってたけど。
試してみる機会がなかったから、今回は丁度いい機会だった。
因みに俺がドッキリと評して熱くない炎で火の海を作ったところまでは幻術ではなく実際に起きていたことだ。
熱くなくて一見無害そうだけど、あの炎は触れている者に幻覚を見せる効果がある。
今、エリックさんは幻覚の中で想像の俺と試合をしているだろう。
殺す気満々で。
まぁ、これも俺が〈憤怒〉を使ったからなんだけどね。
〈憤怒〉はバーニングソウルの上位互換スキルという訳ではない。
勿論、バーニングソウルの能力を強化した能力も使えるけど。
ただそれだけのスキルではなかった。
任意の存在の怒りの感情を植え付け増幅させることができる。
怒りの対象もこちらの思うがままだ。
このスキル1つで人を扇動してクーデターを起こさせたり、仲間割れさせたりやりたい放題だぞ?
正直、想像以上の効果だ。
〈怠惰〉強くね?とか言ってたけど〈憤怒〉も充分やばかった。
この事に気づいてエリックさんには実験台になって貰ったんだけど。
効果があり過ぎてちょっと引くレベルだ。
憤怒の表情を浮かべて想像の俺を切り刻んでいる。
もう〈憤怒〉は使ってないんだけど、何時になったら感情が落ち着いて来るんだろう?
とりあえずこのまま少し放置して様子を見てみよう。
エリックさんより先に怒りを鎮めないといけない相手もいることだし。
〈憤怒〉を使って感情を制御したわけじゃないのに、エリックさんより憤怒の表情を浮かべているソフィアの元に向かった。
「なんで躱せる攻撃を躱さなかったの?大丈夫だとしても見てる方としては心臓に悪い所の話じゃないのよ?シア姉様もなんでお兄様があんな事をって動揺して倒れちゃったのよ?」
しまったな。周りには見えないようにしておくべきだった。
今度からはそう言うところまでしっかり考えておこう。
「全然反省してないでしょ?そもそもお兄様に何をしたの?ああなってるのは映司のスキルだってリーリンが言ってたけど」
リーリンさんにはそりゃバレるか。
「スキルを使ってちょっと怒りの感情を暴走させて幻術にかかりやすくしたんだけど」
「なんでそんな戦い方したのよ。普通に戦えば良かったじゃない」
「この戦法を思いついたから、試したくなっちゃって…」
後は今後、俺の能力を把握する為に何度も試合を頼まれるの防止かな。
いくらE国とは言えホイホイ教えて上げるつもりは無いし、能力の一部を教えつつ俺と試合したらあんな目にあいますよ?と言うデモンストレーションのつもりだったんだけど。
やりすぎだったかな?
相手にダメージを与えないであいつはやばいって思わせるには丁度良いかなって思ったんだけど。
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