第80話
「この羊皮紙に書かれた本を探せって時間がかかるってレベルじゃないんだけど」
3階に進む方法とはデュラハンがドロップした羊皮紙に書かれた本を探し当てることだった。
その本1冊につき4人まで3階に進めるらしい。
「床から天井までぎっしり本が詰まった本棚が沢山ある部屋が何ヶ所もあるここで1冊の本を探すって最早運が良くないと見つからないレベルよ」
しかも制限時間まであってそれを超えると羊皮紙が消えて、お目当ての本を見つけても意味がないらしい。
そうなってしまったら、またデュラハンを倒すところからやり直しだ。
しかもデュラハンの待ち構えている部屋はランダムで場所が変わるらしい。
デュラハンと戦った部屋から出た瞬間部屋に入るためのドアが消えてしまったので多分
間違いない。
「制限時間は6時間か…今日はあと2時間ぐらいで帰る予定だから実質今回の制限時間は2時間。まぁやれるだけやってみるか」
その後2時間かけて羊皮紙に書かれた本をしらみ潰しに探してみるも結局見つからなかった。
「やっぱり鑑定モノクルで本を片っ端から鑑定してみるべきだったか」
「迷路の感じからして、そう言うのは対策されてそうだったから意味ないと思うわよ」
そうなんだよね。
迷路を竜牙兵を使った人海戦術でクリアしようとしたら迷路の通路が頻繁に変わって人海戦術が使えないようにされてたし。
鑑定スキルもしっかり対策されてるだろう。
「と言っても流石にヒントが少なすぎるでしょう。これは」
「そうね。だから他にもヒントになるものが隠されてるんじゃない?1階、もしくは2階に」
2階はそれ以上、上に上がれないハズレ階層だと思ってたけど。
確かに3階に上がるヒントが隠されてる可能性は残ってるか。
「それはそれでまた探索範囲が広がる訳だけど…」
もう天井ぶち抜いて先に進みたい。
でもな〜それも対策してそうなんだよな。
わざわざ羊皮紙に書かれた本を開くと3階に転移するってのが怪しいし。
2階の天井をぶち抜いても3階はない気がするんだよね。
3階からは実はダンジョン1階の地面のした。つまり地下に存在するとか。
ダンジョンの階層を増やすと維持するリソースが増える。雷太はそれを嫌ってダンジョンの階層自体は増やしてないだろうから、ダンジョン1階層の何処かに存在するはずなんだよね。
外の天候が濃霧に変更されてたのが迷路の難易度を上げるためじゃなくてもっと別の物を隠す為に設定されてるとしたら?
極端な話3階に進む為の何かがあってもおかしくない。
俺たちは迷路を通り抜けないと城の中に入れないって思ってたけど。それは改修前の話だ。
濃霧は新しく追加されたギミックを隠す為の物だった?
確かに城の外は迷路以外の場所を一切探索してない。
今回は雷太に完全にしてやられた感じだろうな。
「今回は負けを認めて大人しく帰ろう」
転移結晶を使って桃源郷に移動する。
「また酔っ払ってんじゃん雷太…」
ダンジョンを作る才能はある気がするんだけど。こう言うところが全てを台無しにしてるよね。
「龍酒は美味いからな。つい呑みすぎて泥酔してしまう。完全に泥酔する前に『映司様は割と脳筋だから今日だけじゃ3階には進めないっす』と言っていたがどうだった」
そんなこと言うんだったら今度から脳筋らしく全て破壊して進んでやろうか?
「雷太の予想通り3階には行けなかったです。ヴァンパイアっ子は特に変化なしですか?」
「ヴァンパイアっ子なら変わらず睡眠中だ。心配せずとも放っておけばそのうち起きてくる」
そうなんだろうけど。親御さんは心配してるだろうし。
と言っても目が覚めるのを待つしかないし、考えるだけ無駄か。
「そうですか。じゃあ今日はこれで帰ります」
「気をつけて帰れよ。出たらすぐ家だが。
あぁ、そうだ。帰る前に龍酒を汲んでいくといい。火属性の龍が作った炎の結晶を使った龍酒だから飲むだけで、火に対する耐性を一定時間獲得できる」
それはまた便利なお酒だ。と言っても火耐性が得られるからって戦闘やダンジョン攻略前に酒を飲むってどうよ?
まぁ、使い道はあるかもしれないから汲んで帰るけど。
これ酒造法的にどうなるんだろうって思ったけど。
ダンジョンから湧き出てるものだからセーフってことにしておこう。
ポーションの空き瓶に龍酒を汲んでマジックバッグにしまう。
「そういえばこのマジックバッグ時間停止機能とかないけど龍酒ってダメになったりしない?」
「龍の魔力が染み込んでるから1年程度はどんな環境に放置しても劣化しない」
逆に熟成とかもしないらしいけど。お酒に興味が無い俺としてはどうでもいい話だ。
悪くならないなら深く考えずにマジックバッグに仕舞っておける。
存在を忘れて数年仕舞っぱなしとかちょっと怖いけど。
この池を見る度に思い出すだろうし、さすがに年単位で放置することはないだろう。
とは思ったけど。量は汲まず。少量だけ汲んでいくことにした。
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