地球「ファンタジーアップデートを開始します」

第68話

とりあえず噛まれてる店員を助けないといけないのでヴァンパイア(仮定)の頭と顎を掴んで強制的に口を開かせる。

無理やり開いたから顎が砕ける音がしたけど店員を助けるためだから仕方ない。

とりあえず。店員に3級の回復ポーションと状態異常回復ポーションを飲ませる。

コレが本当にヴァンパイアなら噛まれたことで店員もヴァンパイアになってしまうかもしれない。

状態異常回復ポーションで防げないかなと思って飲ませたけど。ヴァンパイアになっちゃった後だと意味が無いけど。

なる前だったら効果あると思うんだけどな。

ダメだったらヴァンパイアとして生きて貰うしかない。

「なんと言うかこの人はテロを起こしたくて噛み付いたんじゃなくて、ヴァンパイアになってしまったせいで暴走しちゃってる感じがするんだよな」

ヴァンパイアだとしたら。俺が龍化でドラゴニアンになってしまったようにヴァンパイアになってしまうようなスキルを手に入れちゃったんじゃないだろうか？

ヴァンパイアは一定期間血を摂取しないと禁断症状がでて暴走しちゃうみたいな感じで今の事件が起きちゃったみたいな。

俺のアイアンクローから逃げ出そうと暴れてるのに泣いてるのを見るとそう考えてしまう。

俺がちょろいだけかな？

流石に噛まれるのは嫌なので、アイスコーヒーが入っていたコップに手のひら切って血を貯めてヴァンパイアに飲ます。

勢いよくごくごく飲んでいる姿を若干引きながら見ていると、ヴァンパイアの青白い肌が人間味のある肌色に戻っていく。

コップに入った血を飲み干すとヴァンパイアはぶっ倒れた。

「とりあえずSCSFを呼ぶか」

俺だけじゃ対応できないし。

と思ってたらSCSFの隊員が突入してくる。

そりゃこんな騒ぎになってたら誰かしらが通報するか。

とりあえず。事情を説明してSCSFの建物にヴァンパイアを連行する。

「望んで手に入れたスキルじゃないのにデメリットでこんなことになってるんなら流石に可哀想だし」

と言うか最初に手に入れたスキルはみんなランダムだし。一般人はダンジョンに入れないんだからスキルの書は手に入らないだろうし。十中八九ランダムに入手した初期スキルのせいでこんなことになってしまったんだろう。

この人以外にもそう言う人は居そうだ。

スキルを消去できるアイテムとかあれば良いのに。

「こういう時こそリーリンさんに聞いてみよう」

リーリンさんはスマホを持ってないけど家の家電にかければリーリンさんに連絡できるはずだ。

「ってわけで、スキルを消去するアイテムとかありません？」

「〈空白の書〉と言うスキルを犠牲にそのスキルのスキルの書を作れるアイテムは存在するが。今回の場合意味ないぞ」

おい待て。なんで説明してないのに現状を把握してる。電話かかってくるのずっと待ってたの？電話かけた瞬間出たし。

なにエスパーなの？

「千里眼を持っているからな。家からでもそなたらのデートは覗き放題だ」

実際に見てたから説明が必要ないってことか。

くっそこのクソ仙人いつか絶対泣かす。

それはそうと今は説明する必要がないのは好都合だ。

「でスキルを消去するのが意味ないってのはどう言うことです？」

「簡単だその女がヴァンパイアになった原因のスキルを消去したところで人間に戻ることはない。種族が変わる系のスキルは変わった時点で役目は終わってる。むしろスキルの書を作ってしまうとヴァンパイアを増やす結果に繋がるぞ」

つまり龍化で例えると。

龍化スキルで龍の姿に変わってるんじゃなくて、ドラゴニアンの能力で龍に変身していて。

龍化は種族を人間をドラゴニアンに変えるだけのスキル。

もし今後失うことがあってもドラゴニアンのままだし、普通に龍に変身できて火を吹いたりもできると。

と言うか空白の書があればドラゴニアンが無限に量産できる？

「なに考えているか、何となくわかるがそれは無理だぞ。種族が変わる系のスキルは適正を持った人間以外は爆散して死ぬ。ドラゴニアンになる適正を持ってる人間など世界中探しても数人しかいないはずだ」

流石にそれは確率が低すぎるか。

まぁ、ドラゴニアン量産できても困るんだけど。

「それにしても〈龍化〉なんて初めて知った。〈竜化〉持ちなら数人遭遇したことがあったが。ほんと人間から龍のドラゴニアンになるとかとんでもない確率だぞ。よく爆散しなかったな」

〈竜化〉は文字通り竜のドラゴニアンになるスキルだ。

と言うかリーリンさんがそこまで言うとかよく俺爆散しなかったな。

「案外大昔の祖先に龍がいたとか？」

「むしろそれぐらいしか説明がつかない。と言ってもドラゴニアンになる前の映司を見たことがないから本当に龍の祖先がいるのか分からないが」

逆に俺がドラゴニアンになる前だったら確認できたのかよ。

「俺のことは今はどうでも良いや。問題はこの子がヴァンパイアのまま普通の生活を送ることはできるの？」

重要なのはそこだよな。スキルを消去したも意味が無いって言うんだから。

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