第56話

「ただいまー」


「おかえりなさい映司」


家に帰るとソフィアが玄関まで迎えに来てくれた。


「銀行強盗から人質助けて後処理手伝ってたらこの時間になっちゃった」


「ニュースになってたわよ?」


そりゃニュースになるか。


「いくら犯罪者と言っても躊躇なく殺すなんてヤバいやつだ的なこと言われてなかった?」


「そう言うのは言われてなかったわね。まぁ毎日のように被害が出てるし、犯罪を起こすような奴らに同情するような意見出て来ないわよ。映司が人質無視で犯人を攻撃したりしたら言われるだろうけど。今回人質は全員無傷だったでしょ?スキルを使う犯罪者相手に人質を全員無傷で助けるってのは正直すごく難しいし。寧ろ賞賛されてたわよ」


犯罪者とはいえ人を殺して賞賛されるか……

日本でもそんなことになるとは、本当に変わっちゃったな世界が……


何度もそう実感している気がするけど。

その度になんとも言えない気持ちになって

ファンタジー要素にワクワクする気分とファンタジー要素なんて必要なかったって気持ちが頭の中をグルグルしだす。


そんな事言ったって過去に戻れるわけでもないし。

スキルすげぇこれを使って便利に暮らすぞ!ぐらいの気持ちで生きてくのがいいのかもしれない。

まぁ魔導具を使ったりしてるしそのうちこんなことも考えなくなるかもしれない。


「そういえば今日の晩御飯はなにか知ってる?もう皆は食べちゃった?」


「映司が帰ってくるの待ってたからまだ食べてないわ。因みに今日はすき焼きって言ってたわよ」



すき焼き!ほんとにたまにしか母が作らないすき焼き!今日はソフィアとクラリスさんの歓迎会でもあるってことだろう。


手を洗ってリビングに向かう。


俺が帰ってきた段階ですき焼きを作り始めていたらしく、すぐに食べ始めることができた。


「買ってきたゲーム機の設置、設定はこれで終わりだね。俺は今日はもう寝ようと思うけど。ソフィアはどうする?」


このままゲームを始めると二徹することになりそうだし。今日は早めの寝る。


「私は昼寝しちゃって眠くないから少し遊んでから寝ることにするわ」


昼夜逆転生活し始めそうだなと思ったけど。

流石にそうはならないだろう。ダメそうだったらクラリスさんと2人がかりでどうにかしよう。


おやすみと言って布団に入るとすぐに眠ってしまった。



〜次の日〜


スマホの着信音で目を覚ます。


「おはようございます。河村さん面倒事ですか?」


朝から河村さんから電話がかかってくるとか厄介事の臭いしかしない。


「申し訳ないけど、最大級の厄介事だよ。C国を筆頭にC国に地続きで隣接した国から異常種討伐を日本が要請された」


思わず舌打ちをしてしまう。

まじでどう言う神経をしてたら日本に助けてって言えるんだろうね?C国の連中は


「C国政府に恨みがあったとしても、これを無視するとあの件に関係の無いC国の国民や周辺国まで被害が出てしまう。それにここぞとばかりに各国からのバッシングまで受けることになる」


はぁ〜つまり断れないってことね。

まじでふざけてんな。


「ちなみに今回その要請をした国々からちゃんと報酬は払われるんですか?」


そう聞くと河村さんからの返事が返ってこない。


つまりタダで自分たちを助けろって言ってるわけだな。

クソ共が…


「すまない。日本政府から海外派遣費として映司くんへの報酬を払う用意はできているから。タダでと言うことにはならない」



それはお優しいことで。


「そこまでして日本が異常種を討伐する必要ってあります?」


「C国の異常種が日本に来る可能性もゼロではないと言う意見もあってね。ぶっちゃけた話。もし異常種が日本に上陸して映司くんと戦うことになったら戦闘場所の地形が変わる可能性もあるでしょ?それにホントにタダで映司くんを派遣する訳じゃない。日本政府だって最高戦力を日本から離れさせるなんてこと出来ればしたくない訳だし。そこら辺は政治家の仕事だね」


日本の政治家が協力的でホント助かる。

まぁ、時間が経って自分の身の安全が確保でき始めたらどうなるか分からないけど。


それにわざわざC国を助けに行くなんてふざけんなと思ってたけど。

見方をかければ合法的にC国で暴れて良いってことだよね?


「そう言えば河村さん。C国に派遣するのは俺だけですか?前に言ってた諜報部隊的な人たちも一緒に派遣して合法的に入国させませんか?手に入れた黒い情報は政府とは関係ない一般人が手に入れて世界中に公表するみたいな感じで」


折角あっちから来てくれって言ってるんだし、有効活用できるならしていきたい。


「出来なくはないだろう。C国語の通訳係とか現地での交渉班とか。ただし、派遣する人員の安全を確保する必要が出てくるけど」


たしかに異常種が出現している国に連れてくんだから安全の確保ぐらいしなきゃ駄目だよな。

まぁ、C国に仕返しするためならそれぐらい安いものだな。

理不尽にC国を火の海にするんじゃなくて悪事を暴いて仕返しする方がC国政府は酷いことになるだろうし。


「そのぐらいお易い御用です。そのためなら異常種を軽く捻ってC国を救ってやりますよ」




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読んで頂きありがとうございます。

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