第36話

「〈羊飼い〉のスキルの書か」


羊飼いは羊系の魔物専用のテイムスキルだそうだ。

範囲狭すぎるでしょう。せめて偶蹄目モチーフ専用のテイムスキルとか…

それでも範囲狭いと思うけど。

とは言えテイムスキルはテイムスキル。

かなり貴重なスキルの書なのは間違いない。


と言っても今欲しいのは魔法のスキルの書なんだよね。


「まぁ一回目からちゃんとスキルの書が出たし。何回か繰り返せば魔法系のスキルの書も手に入るでしょう」


そんな軽い気持ちだったけど、思ったより魔法系のスキルの書はレアだったらしい。

もしくは羊飼いのスキルの書で運を使ってしまったか。


開けた宝箱の90%は魔道具だったし、5%は大きな宝石、3%は3級ポーション20本セット

1.5%が2級ポーション 、0.5%がスキルの書という内訳だった。


スキルの書が簡単に手に入ったらそれはそれで問題だけど。途中でトートバッグ型で10トンまで入るマジックバッグが出なかったら全部持って帰れなかったところだ。

このトートバッグ型は入口より大きいものでも入口に近づければしゅるしゅる入って行く機能もついていたので魔石で動く冷蔵庫もバッチリ持って帰れる。


家の家電の魔導具化が進む。そのうち電気に頼らなくても生活できるようになるんじゃないかな?


ダンジョンの外で魔道具を使うことで世界に魔力が充満してスタンピード関係なしに魔物がポップするようになる。そんな展開ありそうな気もするけど。

魔力は既に空気中に混ざってるし、そうなるならもう止めようはないと思う。

だって人間が呼吸するだけで人体から魔力が排出されてるし。

あれって余剰分が体外に放出されてるってイメージでいいのかな?


ちなみに魔力は体外から吸収して使うんじゃなくて、人体で生成されている。

魔力を視認している俺が言うんだから間違いない。

一応、雷太にも聞いてみたら間違いないって言われたし。

いつの間にか魔力を生成する新しい臓器が増えているという訳ではなく。

血液と一緒に骨髄で生成されている。


「ほんとに長かったようやく魔法系のスキルの書が手に入ったよ」


試行回数100回越えでようやく魔法系のスキルの書を手に入れることができた。


「確実に物欲センサーが発動してたっす魔法系のスキルの書よりレアな物いっぱい出てたっすから」


やっぱ物欲センサーって怖い。


「とにかくこれでミッションコンプリートだ。帰ろう」


魔力で作ってるから実際はかなり防御力が高いんだけど、一見普通の服にワンショルダーバッグとトートバッグを持ってダンジョンから出てくる俺。


確実にダンジョンに入っていた人の装備じゃないよな。


変な人に話しかけられる前にホテルに帰る。



「ただいま帰りました」


「おかえりなさい映司。なんでトートバッグ持って帰って来たの?実はダンジョンじゃなくてショッピングに言ってたの?」


「このダンジョンのトートバッグも宝箱から出たものです。とりあえずリビングに座って話をしましょう」


リビングに向かってテーブルの上に3冊のスキルの書をおく。


「右から〈羊飼い〉〈虫使い〉〈氷魔法〉のスキルの書です。好きなの1冊選んでください」


右からふたつは魔法系のスキルじゃないけど。テイム系だし欲しかもと思って選択肢としてだしてみた。

羊系の魔物しかテイム出来ない羊飼いと虫系の魔物しかテイム出来ない虫使いだけど。


「普通に氷魔法にするわ」


流石にテイマースキルでもこのふたつはお気に召さなかったようだ。

羊系で強いのがいれば羊飼いは強いかもしれないけど、どうなんだろう?

虫使いは女性には厳しいだろう。

やっぱり苦手な人多いだろうし。


「羊飼いにテイムされてないと進化できない特殊進化とかもあるっすから羊飼いも強いっすよ」


それはまた随分特殊な進化条件だな。テイムされた状態じゃないと出来ない進化か。

誰か羊飼いになりたいって人いるかな?

この情報があれば割と居そうだな。


まぁ、この人ならって人が現れるまで俺が持っておこう。


「それにしてもテイム系のスキルの書ってそんなに手に入るものなの?」


それは俺も思った。答えを聞くため雷太の方を見る。


「そんな訳ないっす。スキルの書の中でかなりレアな部類っす」


まぁかなり運が良かったわけだな。今回に限っては運が良いと言っていいのか微妙だけど。


「まぁ、これでダンジョンに行ける準備が整ったわけだ。クラリスさんは戦えますよね?」


ソフィア様の護衛もしてるんだし戦えるメイドさんなのは確定している。

長いスカートの中に暗器を隠しているかは分からないけど。


「当然問題ありません」


後は日本政府の許可次第な訳だけど。

そう考えているとタイミングよく河村さんから電話がかかってくる。


「映司君なんとか許可が降りたよ」


「それは良かった。じゃあ早速明日から行ってきますね」


「それは問題ないんだけど。今からポーションを取りに行って大丈夫かな。多分到着は2時間後になると思うんだけど」


トートバッグ以外にもマジックバッグが手に入ったのでそれごと渡してしまおう。

マジックバッグの方はただじゃなくてお金取るけど。


「問題ないですよ。ポーションの用意して待ってますね」



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読んで頂きありがとうございます。






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