第15話

「お待ちしておりましたミスター龍王」


E国のお姫様がいる都内の最高級ホテルのスイートルームに向かうと入口の前でロングスカートのメイド服を着たメイドさんが待ち構えていた。

あれだなこの人はスカートの中に暗器を隠し持っているタイプのメイドさんだ。

っていうかミスター龍王ってなんだよ!


そういえばネットで龍王龍王言われてるって河村さんが言ってたな。


なんか勝手に2つ名的なものになってる訳か。というか下位龍如きが龍王名乗るなんて滑稽すぎる気がして嫌だ。


2つ名なんて自分がつけるものじゃないしこれから龍王って呼ばれることは確定なんだろうか?

それにしても龍の王か……実際にそこまで上り詰めることが出来るだろうか。


そういえばメイドさんを放置してしまった。


「申し訳ございませんでした。初めて面と向かって龍王と言われたので誰のこと言ってるの?と思い思考が停止してしまいました」


「そうでしたか。部屋の中で姫様がお待ちです。どうぞお入りください」


初っ端からやらかしたけど、暗器が飛んでくることはなかった。

良かったと思いつつ部屋の中に入る。


「エルフ……」


部屋の中にいたお姫様は金髪碧眼で尖った耳をしていてエルフとしか言いようのない風貌をしていた。俺みたいに種族が人から変わってしまったのか。

俺以外にも種族が変わってしまった人はいるらしいとは聞いていたけど初めて見た。

固まっている場合じゃないか。


「護衛をさせていただきます。新藤映司です」


お姫様がE国語で話しかけてくる。自己紹介を返してくれてるな〜ぐらいしか分からない。


「お会いできて光栄です。映司様

私はソフィア・パターソンどうかソフィアとお呼びください」


メイドさんがなんて言ったのか日本語で教えてくれる。


「後は良ければ目を見せて欲しいと言っています」


人と目を合わせるのは正直苦手なんだよな。

それでよく目を見て話せって注意されるし。

サングラスをかけれるなら目を見てなくてもバレないってちょっと喜んでたのに…

拒否権はないよな。

諦めてサングラスを外す。


お互いにじっと目を合わせることになるわけだけど耐えられなくて先に視線を逸らしてしまう。


「そういえば護衛の件で確認なんですけど。ソフィア様がこの部屋にいる場合はドアの外で外から近づく人を警戒すれば良いんでしょうか?」


サングラスをつけ直して護衛についての説明をさせてもらう。


「正直に申し上げますと。護衛というよりお嬢様の話相手になって差し上げて欲しいのです」


「話し相手ですか?」


そんなん俺の精神が死ぬので絶対に回避したい。


「というのも、おふたりとも突然種族が変わってしまった者にしか理解できない話とかあると思うんですよ」


確かに…


「だとしても私はE国語を喋れませんよ」


「それに関してはお嬢様は【他言語理解】というスキルのおかげで日本語も喋れますので」


はぁ?


「ごめんなさい。日本語が喋れないってことにしといた方が楽だったから。護衛にナンパされても日本語が理解できないから何言ってるか分からないで通せるし」


ソフィア様が流暢な日本語で謝罪する。

言語系のスキルか…そういうスキルがあっても可笑しくないよな。


「そんなことする護衛いるんですか?仕事で来てるんですよね?」


「映司の前任者達がまさにそれよ?」



「やらかして俺と交代になったって言われたけど。そんなことしたんですね」


なんというか1部の隊員のせいで俺の中の自衛隊の株が右肩下がりで下降中だ。

真面目に国を守るため働いてる人の方が多いとは思うんだけど…


「という訳でお嬢様も日本語を喋れますのでおふたりでおしゃべりもできるわけです。私は映司様が帰られた後夜の護衛をさせていただくために部屋に戻って眠りますので失礼致します」


そういってメイドさんが他の部屋に行ってしまった。


「初対面の人間に護衛を任せて寝るってどうなんですか?」


「映司は大丈夫な人って信用してるのよ。後はクラリスは変な護衛が来たせいで、1人でずっと私の護衛をすることになって徹夜してるからここで休ませないと二徹になっちゃうし」


メイドさんマジで可哀想。


「と言うわけでお話しましょう。昨日から1歩もここから出てないから暇なのよね」


こうなったら話し相手になるしかないか。

他の男からしたら目から涙じゃなくて血が流れるほど羨ましいシュチュエーションなんだろうな。


ーーー


「ねぇ。聞いた私が言うのもなんだけど。こんな簡単にスキルについて教えてくれていいの?」


今のところ俺のスキルは隠していざという時に使うって感じの物じゃないし。

と言うか龍化に関してはもう広まりまくってるし。

じゃなきゃ龍王なんて言われてない。

むしろ今、取得しているスキルを目立たせることで後にスキルの書を手に入れて取得したスキルに目が行かないようにする作戦だ。

まぁ、上手くいくかは知らんけど。

バーニングソウルに関しては次取得する機会があれば絶対に取得したいと思ってる。

前回は鎮圧部隊の戦力底上げのために桜さんに譲ったけど。

あのスキルに魅力を感じなかった訳じゃないからね。


「だって派手だし隠せるもんじゃないから」


その後もソフィア様の質問して俺が答えると言う感じで話しが続いた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る