第2話


「と言うか今更だけど。嫌悪感はあるけど。よくこの状態で冷静に動けてるな俺」


目の前の男のせいで周りは正に阿鼻叫喚の地獄絵図。

血や焼けた肉の臭いが充満してるし、悲鳴や呻き声しか聞こえない。

普通の人間だったらこんな場所で正常な精神状態を保つことなんてできない。


あれかドラゴニアンになって精神構造が変わった?

まぁどちらにせよ俺も目の前の男と同じように精神ぶっ壊れちゃってるんだろうな。


「ヒヒ、お前も僕を否定するのか!」


そう言って手のひらの上の火の玉を投げつけてくる。


避けたら周りに被害が出ちゃうし…


しゃあない龍化して受けるか。

正直どんな龍になるのか気になる。


「【龍化】」


なるほどF〇のバハムート系みたいな2足歩行できるドラゴンか。

身長は5mぐらいで翼を広げると端から端まで合計で10mぐらい。

龍の中では小型なのかな?

手で武器を持つこともできるし。人間の時と体を動かす感覚も近い。

四足の西洋龍やそもそも足なし、短い腕が2本の東洋龍だと人間と体格が違いすぎて上手く体を動かすことはできなかったろう。


そう言えば火の玉投げられてたな。

いつになったらぶつかるのかな相当ゆっくりなのかな?って思って周りを見るけど火の玉が見当たらない。

火の玉を投げた男は腰を抜かして失禁しながら命乞いを繰り返してる。

たぶんだけど。火の玉は既に俺に当たってたんじゃないかな?俺がノーダメージだっただけで。


龍の状態でのスペックを試してみたい気もあるけど。この状態でいるだけで捕まりそうだし人間に戻ろう。


「あらま。全裸になっちゃったどうしよう」


龍化した時に服は全部破れたみたいだ。良く考えれば当然か。

このままじゃ公然わいせつ罪で現行犯逮捕だ。


「動くな!」


タイミング悪く警官がなだれ込んでくる。


「動くつもりはないんですけど、なにか羽織る物を貰えませんか?サイコパスを止めるためにスキル使って龍になったら服なくなっちゃって……」


信じて貰えるかわからんけど。


「彼から敵意は感じられない。嘘はついてない筈だ。ただ詳しい話が聞きたい署までついて来てくれるかな?」


あの人の感と言うか他人の感情を読めるスキルか?とにかく助かったと思っていいのだろうか。


「凄い今更な話になるけど到着する前に目視できていたドラゴンは君ということでいいんだね?」


「【龍化】って言うそのまんまのスキルですね変身して見せましょうか?」


龍の状態の方が全裸でも俺に精神的ダメージがないし。


「出来れば見せて欲しい。スキルに関して分からないことしかないからね」


許可が出たのでもう一度龍化を使う。変身するのに魔力とかは使わないらしい。

特に制限時間とかも無さそうだし。


狭いところじゃ龍化すると埋まっちゃうぐらいしかデメリットなさそう?


「瓦礫の撤去とか手伝います?」


力加減をミスらないかが少し心配だけど気をつければ大丈夫だろう。


「確かに今の君なら重機と変わらない活躍ができるだろうけど。ここにいる警官も役立つスキルを持っているから大丈夫だ。あんな感じにね」


俺の対応をしてくれている警官が指を指した方を見ると瓦礫が中に浮いて何もない場所に移動している光景だった。

重力を操るスキル?もしくはサイコキネシス的な?

確かにわざわざ俺が出しゃばる必要もなさそう。


「それにしても、なんと言うか警察の方たちは冷静ですね。予め世界がこんなことになると知っていて準備していたみたいだ」


確証がある訳じゃないけど、何となくそんな気がする。服装的に特殊部隊とかじゃなさそうなのに動きに無駄がないと言うか……



「それについてはこの場で詳しく話すことは出来ないが君には署についてから説明しよう。結論から言ってしまえば君の言うとうり一部の人間は人間がスキルを手に入れると言う未来を知っていた」


なんで俺には詳しい説明をしてくれるのか?とかどんな手段で知ったのかとか聞きたいけど。署について行けば詳しく話してくれると信じるしかないか。


「隊長。監視カメラでこの惨状を引き起こしたのはそこで失禁している男だと確認出来ました。龍の彼も龍に変身したのみで一切攻撃していないことも確認出来ました」


生きてる監視カメラがあったか。俺の無実の確認もできたみたいで一安心。

と言っても話を聞くために警察署には行くんだけどね。


パトカーに乗せてもらい警察署に向かっていると大きく揺れる。地震か?


「ダンジョンの出現が始まったか……」


他の警官から隊長と呼ばれていて俺の対応をしてくれている警官がそう小声でつぶやく。


「今のはダンジョンが出現したことで発生した揺れなんですか?」


「聞こえていたのか?かなり小声で呟いたつもりだったんだが。ひとまず安心して欲しい。今はダンジョンから魔物が出てきたりはしない。それに入口を封鎖するために自衛隊が動き出した筈だ」


ダンジョンが出現することも事前に知っていた。それに今はダンジョンから魔物は出てこないって言ったな。ってことは時間が経てば分からないってことか。もしくはダンジョンから魔物が出てくると知っているか。


「これについても警察署についたら説明してくれるんんですか?」


「もちろん」


そう言うことなら警察署まで大人しくしていよう。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


読んで頂きありがとうございます。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る