第56話 ヒーローインタビュー

 試合後のインタビュー。今大会初出場ながら、決勝という大舞台で二得点という活躍を見せた僕に、夕方の情報番組でたまに見るアナウンサーの方が、

「今のお気持ち、どなたに伝えたいですか?」

そんな質問をしてきた。愚問だ。答えは一つしかない。

「葵に……。大好きな葵に伝えたいです」

僕はただ真っすぐな声で、青々と輝く空を見上げてそう言った。

「葵さん。それは、橋本選手とどういったご関係で」

ずけずけとまぁ、と少しイラっと来たが、そこは何とか踏みとどまって

「そうですね。僕と葵は……」

と冷静になって正確に、僕と葵の関係を答えようとしたけど、どうしても言葉に詰まってしまう。僕と葵との関係。友達とか親友なんて括りではもうない。だけど、本当にいいのだろうか。そんな風に悩んでいる時、

『彼女、でしょ?』

葵の明るい声が耳元でそっと聞こえてきた。

「そうだね……。葵は、僕の大好きな彼女です」

はっきり、とても清々しい気持ちでそう言うと、

「そ、そうですか」

と、質問してきた本人は少し歯切れの悪い返事をして、強引にインタビューを終わらせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る