第43話 弱いボク

「宮坂! 起きろ! おい! 誰か、早く救急車を!」

「わ、わかった」

気が動転していた。だけど、なによりも宮坂を助けたくて、僕は声を張り上げた。

 数分後。けたたましいサイレンの音がこちらに近づいてきた。

「ストレッチャー乗せます。1・2・3」

救急救命士の方が倒れた宮坂を簡易ベッドのようなものにのせて、こちらに歩いてきた。

「お連れの方か、連絡をくださった方は」

宮坂を囲んでいた僕たちに問いかけてくる。こういうのは大人の人に任せるのが良いのかもしれない。けど、宮坂を離れるのが怖くて、俺は震える声で

「彼女の友人です」

と名乗りを上げて、宮坂が寝ている救急車に乗り込んだ。

「えっと、いくつか質問いいかな?」

「はい」

会話の内容は、いまいち覚えていない。頭がグワングワンと揺れていて、心がザワザワと騒いでいて、身体の震えが収まらなくて。

 思考は、頑張ってもいい方に向いてくれない。ずっと最悪の事態を考えてしまう。もしそうなったら。そう思うと怖くて仕方がなくて。必死に宮坂なら助かると、僕の杞憂だと言い聞かせたけど、宮坂の苦しそうな顔を見てしまうと、どうしてもそんな自信を持てなくて。

 俺は心身ともにボロボロの状態で宮坂と一緒に、市内の大学病院に入った。

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