第33話 非情

「あ、学校着いたぁ! 早くクラス表見に行こう!」

ザワザワを掻き消すくらいの大声で宮坂がそう言う。と同時に、僕の手をしっかり掴んで人混みを掻き分けてクラス表も目の前へと割って入る。

「マジか……」

クラス表を見て、僕は愕然とした。理由は――。もう察しがつくだろう。


「橋本君! 同じクラスだね!」

そう。隣にいる宮坂と同じクラスになってしまったのだ……。


 神様はなんて非情なのだろう……。

 こいつがクラスにいたら、サッカーを忘れられないじゃないか……。


 でも――。


胸の奥がじんわりと温かくなる。心地よい温もり。僕がまだ小さかった時、試合に負けた僕を姉貴がぎゅってしてくれた時の温もりに少し似ている。


 僕のこころの中に、小さな小さな喜びと言う名のが生まれた。


「おっはよ~!」

宮坂は進級初日だというのに、元気な笑顔で、明るく元気に、クラス中に響き渡る声で挨拶をした。クラスからの返事は、当然ない。

「……」

僕はそんな宮坂を尻目に、座席表を確認して自分の席に腰を下ろした。その後すぐに、

「あ、宮坂君! お隣みたいだね!」

「まじ……」

すぐ隣から注がれる眩しい笑顔。もう、ため息すら出てこない。

 僕はこのとき悟った。この世に神様なんて崇高なものは存在し得ないのだということを。

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