第30話 根拠のない自信

「おはようございま~す!」

いつも通りを意識して、明るい声で挨拶をする。

「おはよう! 朝から元気だな、宮坂」

三好先生がいつもの怖い顔を和らげて、優しい笑顔でそう言ってくる。

「はい! 元気だけが私の取り柄ですから!」

そう言って自信満々に胸を張ってみせる。だけど三好先生の顔からは、どんどん力が無くなっていく。

「それで、今日もダメだったか……」

苦しそうな三好先生の声に、私は俯いて小さく謝ることしかできない。そんな私を見て三好先生は、

「いや。宮坂のせいじゃない」

と、優しい声をかけてくれた。でも、三好先生の浮かない表情に変わりはなくて、私はもう一度、

「すみません」

と小さく言って頭を下げた。

「謝らなくていい。部活始まるから、いつもの笑顔で頼むぞ」

表情を和らげた三好先生の期待にちょっとでも応えれるように、

「はい!」

と大きく笑顔を作って、元気いっぱいに返事をした。


 ――橋本君、いつ戻ってきてくれるかなぁ……。

 ――橋本君がサッカーを嫌いになるわけないもん!

 ――きっと……。いや、絶対に! 橋本君はサッカー部に戻ってくる。


私は、根拠のない自信を胸に秘めて、それからもめげずに橋本君の家に通い続けた。

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