第24話 幻覚

「あ~、それとね? これはサッカー関係ないんだけど……。昨日のテレビ見た? なんかさぁ――」

宮坂は、僕の気持ちに気づいていないのだろうか。迷惑そうに振舞う僕の隣で、ずっと楽しそうに口を動かしている。

「でねでね? お母さんが」

こんな調子で、一方通行の会話が教室の前まで続いた。

「あ、橋本君D組だったよね? じゃあまた明日ね!」

そう言って右手を挙げる宮坂に無言という返事をして教室に入る。

 自分の席までの5メートルもない道。さっきのそっけない態度が気に入らなかった奴らが、僕に冷ややかな視線を向ける。もうこんなのにも慣れたもんだ……。

 僕は席に着いた流れで、いつも通り机に突っ伏す。

 ――まだ一限も始まってないのに『また明日ね』って

「調子狂うよな……」

顔を上げて窓の外を見る。窓の外には季節にそぐわない暖かそうな青空が広がっている。そんな空に顔を覗かせている太陽に、どういうわけか宮坂の笑顔が重なって見えた。

「なぁ千冬」

窓外を見ていると、チームメイト。現在ただのクラスメイトに声をかけられたけど、返事をすることなく、僕はただ流れる白い雲を目で追っていた。

 そうして昨日同様に授業を受けて、適当に独りで昼飯を済ませて。そんなこんなで、あっという間に一日の授業が終わった。

「一日って案外早いもんだな……」

そう零しながらカバンにペンケースを放り込み、サッと席を立った。

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