第18話 自慢の弟
「千冬、なに考えてるの……」
学校からの帰り道、真っ暗な空にポツンと呟く。
千冬は昔からサッカーが大好きだった。おもちゃが壊れた時も、ゲームで負けた時も、ケンカをした時も、
「サッカーしよ?」
そう言うと表情をコロッと変えて、楽しそうに肩を弾ませながら模様の剥げたサッカーボールを持ってくる。すっごく単純で、純粋で、バカみたいに幼稚な姿。なのに、私の目には千冬のその姿がとても愛おしく映っていた。
「お姉ちゃん。ぼく大人になったらサッカー選手になる!」
幼かった千冬は、毎晩のように色あせたサッカーボールを小さな体でぎゅっと抱えながら楽しそうにそう言っていた。そんな千冬に私は、
「がんばってね」
半分は冗談、でも半分は本気でそうやって応援していた。
千冬は小学校に上がってすぐ、その小学校のサッカースポーツ少年団なるものに入団した。初めのうちは、慣れない競技としてのサッカーにあたふたした様子だったけど、それでも誰よりもサッカーを心から楽しんでいるように見えた。チームが勝ったら誰よりも喜んで、負ければ自分が出てない試合でも大声を上げて泣く。そうやって千冬は、どんどん上達していった。
そして中学校に入学した千冬。小学校ではベンチメンバーだった千冬も、入部して数か月で県内トップと言っても過言ではないくらいに成長した。
チームもそんな千冬に呼応するように強くなっていって、中学最後の夏。全国中体連サッカー大会で、チームは全国制覇という輝かしい成績を残した。その優勝に大きく貢献した千冬には、大会最優秀選手賞という誇れる賞が与えられた。
こうして無名校を全国優勝にまでのし上げた千冬は、全国的にも有名な選手になった。
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