第7話 責任感

「千冬。相当、気にしてるみたいね……」

母が慣れた手つきで食器を洗いながら、ダイニングチェアに座る私にそう言う。

「まぁ……。あんな幕切れだったら仕方ないよ……」

頭の中に、またあのシーンが浮かぶ。あまりにも劇的で、悲劇的な失点のシーン。誰が悪いとか、そういう話じゃない。結果的に千冬の頭にボールが当たって、そのボールがたまたま自陣ゴールの方に飛んでいってしまっただけ。ただ、それだけ……。

 だけど、それだけのことがとても重たくのしかかってきてしまう。それは分かる。でも、その重さはピッチに立っていない私には分からないし、ピッチに立っているみんなですら、千冬の気持ちは分からない。それでも、昔から誰の責任でもないものに人一倍、責任を感じてしまう千冬だから、今日のあの失点を自分独りのせいだと背負いこんでしまっているのは、姉の私だからこそ分かってあげられる。

「変な方に走らなきゃいいんだけど……」

テレビでまた再生されている失点シーンを見て、母がボソッと呟く。

「美波、お風呂行く?」

さっきの声とは正反対の明るい声で母に聞かれたけど、「まだいい」と短く返事をしてスマホを手に取って"オウンゴール 慰め方"とネットで検索をかけた。

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