みっじか!

いえいえ、これは賞賛です。(長けりゃいいってもんじゃないとアノコも言っていたし)
冗談はさておき、本当に素晴らしく、短い。
と言うのも、“強姦”という重いテーマにも関わらず、ふとした時に読み返そうかな、と小生に思わせた何かは偏に、究極まで書き手のエゴを取り除いた、この洗練された4チャプター…“短さ”にあると思うからです。
先ず、このテーマで、被害者、被害者知人、刑事側の心理描写を、たったの4話に纏めているということ。
こういったテーマになるとありがちなのが、被害者のトラウマ、PTSD描写が過剰になってしまって、エンタメ性が欠落してしまうということです。
その欠落をどうにか補ってエンタメ作品を作ろうすると、ダラダラとした漫才や冗談の会話劇を足した、ただ無駄に長いだけのバディ物が出来上がってしまう。
一方この作品は、バディ物ではありません。むしろ煙草や香水のニオイが漂う修羅の道を、主人公が孤独に歩む、ノワール的な、ハードボイルド的なイメージです。(小生、ノワール、ハードボイルドなどは読まないので定義はよく解らないのだけど)
ノワールやハードボイルドなどと宣伝してしまうと、なんか“詰まんなそー”ですね。
それがどうだろう、読んでみれば、飽きてる暇なんかありせん。起承転結がテンポ良く進みます。それだけでもあっぱれのところ、さすが諸星モヨヨさん、そこには年間の事件件数、警察の捜査、実は一般企業の会社員でも共感できる警察官のキャリア事情など、しっかり下調べを忘れていないんですね。かと言って、知識をただひけらかすだけの、長ったるいウンチク大会が開催されるわけでもありません。こちらが飽きない、怠くない絶妙な塩梅。
そして、それら絶妙な下調べ描写が作り上げた説得力をもって挑む、第3話の信憑性には圧巻です。主人公の描写も絶妙。そんなモノを目の当たりにした事などないのに、或いは本当にそうなっているのかも、と揺さぶられます。
まだまだ書き足らないのですが、小生もこの作品に習って、端的に。ここで筆を止める事にいたしましょう。
著者による飽きさせない配慮、読み切らせる心意気が伝わってくる、実にエンターテイんメントな一本でした。ありがとうございます。