第3話凸待ち配信二日目

『さぁ、今日は城塞都市を作るために整地をしていこうと思います』


今は、深夜3時。

昨日からずっとみなクラで天空トラップタワーを作っていた。

わからない人のために説明しておくとモンスターを湧かせて一気に殺すやつだ。

10時間以上かけたこともあるからか効率は最大。

時間が余ったため、ついでに蜘蛛トラップも作っていたりする。


整地は周りが森で凸凹した地形なので真っ平らにしないと建築したくないから。


視聴者は脅威の0人。

アンチさんですら作業配信はつまらないのでしょうね。

まともで優しい視聴者さんも今は寝てるみたい。


取り敢えず、数時間かけて数千マスは整地したかな。

誰もいない画面に向けて数時間も話し続けるとか苦行かよ。


『整地もできたことだし、ようやく建築に移れます』


まず建てるのはこの都市のシンボルになるであろう塔にしよう。


『えっと、石も沢山あるしそれで作ってみようかな』


やべぇ、虚無に向かって話すとか拷問の類かよ。

いや、アンチがいないだけマシだよな。

などと考えているうちにだんだんと出来てきた。


『コンセプトは異世界ものの街にある塔、って感じだな』

と、初めは1階層から。出来たら同じものを上に積み上げていく。

それを繰り返して塔を高くしていく。


部屋の構想は後回しだな。


考えながら作っていくと2時間3時間はすぐに溶けた。

そうこうしているうちに完成した。


『よしっ、これで塔は完成ですね!』


一度、遠くから見ることにした。

天に届くほどの高さで最上階が見えない。


『よしっ!いい出来栄え』


するとお腹から音がなった。


『ああ、昨日から何も食ってなかった』


今更だが空腹だと気づいた。

ずっと塔製作に夢中になっていたらしい。


『ちょっと、メシ作ってきますね』


視聴者0人に向かって宣言した。

普通飯を作りに行くことはないが、過疎っているので気にせずにやった。

そのまま、台所へ向かい冷蔵庫を漁る。


ガゴッ


『んー、食材がないな。カップ麺でいいかな。てか、もう8時か』


カップ麺置き場から1つ取って戻ってくる。

これはこういった耐久配信の時用で置いている。

いつもだったら冷蔵庫に何かしらが入っているんだが、生憎今日は何もなかった(調味料が少々ある)ためカップ麺置き場を使うことにした。


『お湯が沸くまでちょっと続きやります』


そう言って塔の内装部分に取り掛かった。


『何層あるんだっけ?あぁ、そうそう30階層あるんだよな、これ』


1階層はプレイヤーが縦に10人並べるサイズが30個。めっちゃ大変だし、階層ごとのネタが尽きる。


つまり、ヤバい。


『じゃあ、まず1階層目から。ここはもし、ほんっとうにもしも人が来たときに見えを張れるようにエントランスにする』


『んーと、入り口の正面に何置こう?塔自体が円形でめっちゃ大きいからな…』


シューシュー


『んあ?あぁ、お湯沸かしてましたね』


一旦、建築は止めてカップ麺にお湯を注ぐ。

そして、タイマーを3分セットする。


『3分か、何もできませんね』


ゲーム内でその辺を歩き回り3分間待つ。

全体的に土地をどう使うかが構想できてきた。


ピピピピ

タイマーがなった。

もう3分経ったらしい。

タイマーを止め蓋を開ける。

湯気が立ち上り久々にお腹が空いた気がした。


ズズズズズ

ラーメンをすする音が部屋に響く。

誰もいないから何も言われることなく飯を食べられる。


『美味いな』


そんな感想が口から出た。

やはり、空腹は最高の調味料なのかもしれない。

昨日の夜から何も食べていないからな。

その後は無言でカップ麺を食べ進めた。

どうせ誰も見ていないから配信を気にしなくて済む。

ただ今はこの後のエネルギー補給のために食べるのみだった。


『…美味かったな。…さぁ、片付けしますか』


飯を食ってエネルギー補給もできた事だしさっさと片付けて作業に戻りたい。

幸い、今は誰も視聴していないためそれが可能だ。

配信を回しながら食べ終わったカップ麺の容器を持ち台所へ行く。カップ麺の容器は中をすすいでプラスチックゴミに捨てる。使った箸は洗剤を使って洗う。


戻ってくる頃には視聴者が数人いた。

コメ欄が荒れていないことからアンチでは無いことを理解する。

パソコンの前にあるゲーミングチェアに座り、配信を再開する。


『塔の内部の続きを作っていきます。一階層はエントランス兼倉庫って感じかな。部屋を半分に分けて半分をエントランス、もう半分をチェストを置いて倉庫にしますか』


構想通りにキャラクターを操作して着々と建築していく。

一階層の内装を一通り完成させるので一時間ほどかかった。

さらに外に置いておいた建築素材などを一階層の倉庫に移すだけでも30分かかってしまった。


その間に少しづつ流れているコメ欄に目を向ける。


:凸待ち配信ってなんでしたっけ?


『そうですよね。凸待ちのくせにいまだに誰もきてないのは問題だよね』


:凸が来なかったらどうするの?


『一週間くらい耐久してこなかったら諦めるかな』


:待って待って、死ぬよ?

:それって一週間寝ないってこと?


『そうだよ?そこまでしないと来ないと思うし…あぁ、でも鳩コメはしないでね。迷惑だし』


:それは分かるけど、それでもやばくない?


『大丈夫、凸が来れば終わるから』


俺に凸なんて来ることはないと思うが……


『んじゃ、二層目にも手をつけますか』


荷物が一層目に集まったことで効率が少し上がり、二層目三層目と製作していった。






『これで、全層作ったかな?』


ようやく全ての層を装飾することができた。

が、それだけで1日が潰れてしまった。


『階層が多くてもいいことないですね。無駄に装飾するの大変だったし』


最終的には何層かは家畜を育てるとこや、村人を収y……監禁するところになってしまった。

これは次回の時に生かすことにしよう。

無駄に広くしても持て余すぞってことで。


『結局2日目も誰も来なかったですね』


アンチは微妙に湧いたけど。

蛆虫かな?

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