第6話 高速演算戦士

第6話 高速演算戦士 Part1

その男は開闢ドーンの団員だった。


"モンスターは利用するもの"


それが彼の信条だった。

いや、他の団員もそうなのだろう。

そうでなければ、開闢ドーンに身を置くものなどいない。

"人とモンスターが仲良く"などと馬鹿げた発想は持ち合わせていない。


男は七掌陣を探すため、この地に足を踏み入れていた。

気は乗らなかったが、命令だから仕方ない。


**********


<洞窟>


強い日差しを避けるため、この洞窟を休憩場所に選べたことは幸運だった。


「?」


洞窟の中に何かがいる。

機械のような体に、同じ素材でできた剣を持っている。


「お前は!」


そのモンスターには見覚えがあった。

間違いなく七掌陣の一体だ。

資料は読み込んでいたので間違いはない。


「七掌陣!」


「どうやら私は七掌陣と呼ばれているようだな」


「これは出世のチャンス。

お前を捕らえて持ち帰れば…」


「その様子からすると、君は開闢ドーンの一員か?」


「俺達のこと、知ってるみたいだな。

さぁ、五仕旗で勝負してもらおうか」


「まぁ、待て」


「何だ?」


「勝負する必要はない」


機械戦士はカードに戻る。


開闢ドーンに恐れをなし、あっさり降参か。

七掌陣ってのも案外情けないな」


男はそのカードを手に取る。


「これで…」


その時七掌陣が話しかけてきた。


「このまま帰るつもりか?」


「そうだが」


「君はそれでいいのか?」


「何?」


「私は記憶を失っている。

数年前、目を覚ますと私は一人だった。

自分に何があったのか全く思い出せない。

ただ、何故か私はカードに封じられていた」


「お前の昔話に興味はない」


七掌陣は構わず続ける。


「ここ数年でいくつかの村や町を襲ったが、まるで面白みがない」


「(人やモンスターを襲うのが面白い。

七掌陣が危ない考えの持ち主ってのは本当のようだな)」


「その過程で開闢ドーンの存在も知った。

私以外に六体の七掌陣がいることも。

見たところ君に大した力量はなさそうだ」


頭に血が上ったが堪えた。


「今も命令され、こうして各地を巡って七掌陣を探している。

私を持ち帰ることで、君は本当に上に立てるのか?

私を差し出した後で、手柄を取り上げられる可能性はゼロだと言えるのか?」


男の頭に、ある男の顔が浮かんだ。

日頃抱えていた不満が口から出る。


「確かにこんな遠方まで飛ばされて。いつもあの人は、人使いが荒いんだ」


「いいのか、ここで黙っていれば、君はこのままそいつに利用されるだけだぞ」


男の中の不満はどんどん高まっていく。


「ここで引き返すよりも、私とともに戦う方が賢明ではないだろうか?

私を使えば他の七掌陣も手に入れることも難しくはないだろう。

開闢ドーンはおそらく、七掌陣の力を欲している。

それならば君が私と手を組むことに何の矛盾がある?」


男は考え込んでいるようだったが、機械戦士は手応えを感じた。


「…その通りだな」


男の心は決まった。


「それで具体的にどうする?」


「まずは手始めに、七掌陣を倒そうと動いている人間を倒す。

邪魔者は居ない方が動きやすい。

どうやらこの辺りに近づいてきているようだ。

その者達は、既に二人合わせて三体もの七掌陣に勝利していると噂されている」


「二人合わせて三体も!?

大丈夫なのか、そんな奴ら相手にして!?」


「私の言う通りにすれば問題ない。

心配せずともお前達開闢ドーンが選び抜いた七掌陣の一体として、十二分なはたらきはしてやる…」


**********


三人は次の町に到着した。

緑の多い綺麗な町だった。


「平和そうな町だね」


「ああ。

何もないってのは幸せなことなのかもしれないな」


「兄ちゃん、俺、ご飯食べに行きたい!」


「分かったよ。

疲れたし、食べに行こうか」


三人はランチを食べるため、店を探す。

人が集まる町だったので、店も多くあった。


その様子を男と機械戦士は見ていた。


「(せいぜい楽しむがいいさ。

今に笑えなくなる…)」


**********


「おいしかった」


「さて、七掌陣について、何か知っている人がいないか…」


その時、物音がした。


「何だ!?」


どこからか町に電撃が向かう。

町中が混乱する。


「果地繁風、ヴォーテ・ライニング」


「!?」


男が三人の前に姿を現す。


「わざわざこちらから出向いてやったのだ。

我々の相手をしてもらうぞ」


今度は頭上から声が聞こえる。

電撃を放っていたのはそのモンスターだった。


「誰だお前達は?」


「俺は開闢ドーン

七掌陣を集めている。

ここまで言えば分かるよな?」


「こいつ、開闢ドーンか!」


「あのモンスターから強い悪意を感じる。

まさか…」


「そう。私は七掌陣のうちの一体だ」


「!?」


「お前達が七掌陣を所有していることは知っている。

我々に渡してもらおうか」


「勝負を断る理由はないだろう。

さぁ、どちらが出る?」


「俺がいく」


繁風が前に出る。


「兄ちゃん!」


「ここは俺に任せろ」


「ならば果地繁風。

お前から先に倒させてもらおう」


「五仕旗…」


「Primal Generation!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る