第2話 砦の七掌陣

第2話 砦の七掌陣 Part1

「寒い…」


風瓜が両手で体をさする。


「寒いな…」


新たにやってきた村を肌が警戒している。

涼しく過ごしやすい村だと聞いていたが話と違うようだ。


見渡すと畑がある。

これだけの数があるのに、どれも持て余しているような様子だった。


「すみません」


繁風が近くの村人に声をかける。


「はい?」


「この村の畑は使われていないのですか?

これだけの数があるのに」


「使えるなら使いたいさ。

実は最近、村に大きな体のモンスターが現れて、畑も作物も凍らされちまった。

皆が五仕旗で戦ったんだけどな。

相手にならなくて…」


「もしかして…」


繁風が資料を取り出して、その男に見せる。


「この中に…」


「こいつ、こいつだ!」


彼は吸い込まれるように指を差した。


そのモンスターは、巨大な岩のような形をしていて、山のようにも砦のようにも見えた。


「あんた、これは…」


「俺は旅をしながら、このモンスター達を倒しているんです。

以前に戦ったこのモンスターも悪さをしていた」


巨闘羆きょとうひ-アングリズリ】を指差しながら説明をする。


「そうか。それは頼もしい。

でも、十分に注意しろよ。

村の実力者も次々にこいつにやられた。

それでも行くというなら、向こうに見える山の中を探すといい」


「ありがとうございます。

風瓜、行こう」


「うん」


**********


「五仕旗っていろんなカードがあるけどさ…」


道中。


飽きたのか風瓜が口を開いた。


「カードの効果とかルールって誰が決めてるの?」


舵掛かじか博士。

知ってるだろ?」


「ああ。あの人か」


舵掛かじか博士。


モンスターにとってより住みやすい空間、すなわちカードを開発し、五仕旗を生み出した人物として広く知られる。

人とモンスターの生活を快適にすることに大きく貢献した。


そしてカードを使い勝敗を競う五仕旗は人々の娯楽として定着していた。

また、五仕旗のシステムを起動するための起動スターターには、(ゲーム中でない場合)モンスターの攻撃による衝撃を大幅に削減できる機能があった。

一部のモンスターは人間との協調を嫌い、襲撃してくるものもあったが、この機能によりモンスターの攻撃を防ぐことができるため、五仕旗をプレイしない場合でも、護身として起動スターターを手に入れる者がいるくらいだった。

モンスターよりはるかに力が劣る人間にとって、この技術は重宝したのである。


反面、五仕旗のゲームの最中には、モンスターの能力や攻撃力に応じ、適度に体感ダメージが調節されることで、スリルを生み出し、それが一層、人やモンスターを虜にした。

(技術的な理由で、ゲーム中は威力調整機能が弱まってしまう。

五仕旗のゲーム中における、上記の体感ダメージ調節は、この欠点を逆手にとったアイデアともいえる)

故に五仕旗は世に浸透し、舵掛かじか博士は人とモンスターが共に生きていくことに大いに貢献した人物として人々から賞賛されたのである。


モンスターはカードに入り、人間は起動スターターを身につける。

それがこの時代の主なスタイルだった。


「モンスターをカードにした時、そのモンスターの能力に応じて効果やステータスが自動で決まるようになっている。

そのシステムを開発したのが舵掛博士だ」


「へぇ」


「五仕旗のルールを考えたのも、起動スターターを生み出したのも全部その人だ。

天才っていうのは、ああいう人のことをいうんだろうな」


「すごい人だね。舵掛博士って」


**********


<山の中>


砦が二人に向かって攻撃してくる。

起動スターターがそれを弾いた。

バリア越しにも関わらず、冷気が伝わってくる。


「(間違いない。

こいつが二体目の七掌陣!)」


「その腕にはめた起動スターター

そいつが作られてから攻撃がまるで通らない。

いい迷惑だ」


「ならばもう、悪事はやめたらどうだ?」


「仕方ない。

お前達人間が大好きな、五仕旗で決着をつけてやるよ」


砦は繁風の話を聞いていない。


「五仕旗…」


「Primal Generation!」

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