第1話 乱気走砕 Part3

「くそっ…」


ヒグマがその場に倒れる。


「これでお前の悪事も終わりだ」


「やったね」


「ああ。これで村の人達も元の暮らしを取り戻せるだろう」


**********


<村>


「本当に助かりました」


繁風と風瓜は村人に囲まれている。


「いえ、村に平和が戻ってよかったです」


「しばらくの間、ここでゆっくりなさってください」


**********


<宿>


夜。


風瓜は疲れて寝てしまった。


繁風の部屋にノック音が響く。


「はい」


ドアを開けると村人だろうか、若い男が立っていた。


「夜分遅く申し訳ありません。

明朝には出発されると聞きまして。

旅立たれる前にお伝えしておこうと思い、うかがいました」


「何でしょうか?」


**********


風瓜を起こさぬよう、ロビー近くの一室を借り、話をする。


「実は思い出したことがありまして。

開闢ドーンをご存じですか?」


「ええ」


開闢ドーンはモンスターを捕獲し、悪事に利用する集団だった。


開闢ドーン七掌陣しちしょうじんと呼ばれる悪意あるモンスターの中でも、とりわけ強力な力を持つモンスターを集めているという噂があります」


七掌陣しちしょうじん?」


「ええ。

全部で7体いるようなのですが…。

今回、果地さんに倒していただいたモンスターもその内の一体で間違えないと思います。

こちらをご覧ください」


男は紙を差し出した。

そこには彼の言うように、【巨闘羆きょとうひ-アングリズリ】の姿が描かれていた。


「あのヒグマが現れるよりも随分前に、開闢ドーンがこの村に訪れたことがありました。

その時にこちらの資料を渡され、七掌陣の居場所を知らないか尋ねられました。

誰も知る者はおりませんでしたので、それと分かると彼らは不満そうに村を出ていきました。

村の者も、その態度は面白くありませんでしたので、すっかり皆の記憶から消えていましたが、部屋の整理をしていたところ、偶然こちらの紙を見つけまして」


「そこに描かれた一体が、村を襲ったモンスターにそっくりだった」


「ええ。

これからお二人が、悪意あるモンスター達と戦っていかれるなら、七掌陣と対峙する可能性もあります。

開闢ドーンが置いていった資料は他にもありますのでお持ちください」


「ありがとうございます」


**********


部屋に戻り、資料を読む繁風。

資料は何枚かあり、七掌陣の特徴が記載されていた。


「(開闢ドーンめ。

こんなものを配って。

奴らに協力する人間がいるとでも思っているのか…)」


繁風は資料を読み込んでいく。


「!?

(これは…)」


"起きられないのは、夜しっかり眠っていないからではないか"


そんな風に風瓜を注意したこともあったが、その夜、繁風の眠りは浅かった。


続く…

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